Bhuj: The Pride of India

3.0

 近年、ヒンディー語映画界で作られる戦争関連映画の着想源において、1971年の第3次印パ戦争が人気となっている。この戦争はインドの完勝に終わったため、戦勝の高揚感冷めやらない1970年代から80年代に掛けて、「Hindustan Ki Kasam」(1973年)、「Aakraman」(1975年)、「Vijeta」(1982年)など、複数の第3次印パ戦争を主題とした映画が作られた。その後、「Border」(1997年)などがあったものの、1999年にカールギル紛争があったことで、映画メーカーの関心はこの最新の出来事に移っていた。ところが、ここに来て、「The Ghazi Attack」(2017年)、「Raazi」(2018年)と、立て続けに第3次印パ戦争を時代背景とした映画が続いた。2021年8月13日からDisney+ Hotstarで配信開始された「Bhuj: The Pride of India」も、第3次印パ戦争モノの映画である。

 監督は新人のアビシェーク・ドゥーダイヤー。主演はアジャイ・デーヴガン。他に、サンジャイ・ダット、ソーナークシー・スィナー、ノラ・ファテーヒー、シャラド・ケールカル、アミー・ヴィルク、プラニター・スバーシュなどが出演している。

 第3次印パ戦争中の1971年12月8日、パーキスターン空軍の爆撃機がグジャラート州カッチ地方の主都ブジのインド空軍基地を爆撃し、滑走路を破壊した。パーキスターンはカッチ地方をインドから寸断し占領する戦略を採っていた。100台の戦車と1800人の兵士がカッチ地方に進軍して来た。一刻も早く滑走路を修理し、ジャームナガル空軍基地からの援軍が着陸できるようにしないと、カッチ地方はパーキスターン軍に占領される恐れがあった。

 ブジの空軍基地を指揮していたヴィジャイ・カールニク中隊長(アジャイ・デーヴガン)は、この困難なミッションを成功させようとする。近隣の村には、勇猛さで知られる女性スンダルベーン(ソーナークシー・スィナー)がいた。ヴィジャイはスンダルベーンに支援を要請する。スンダルベーンは村に残っていた女性や老人を組織し、ブジ空軍基地の滑走路修理に協力する。

 一方、パーキスターンでは、潜入していた女スパイ、ヒーナー・レヘマーン(ノラ・ファテーヒー)が諜報活動を行っていたが、正体がばれ、処刑された。

 ヴィジャイやスンダルベーンの活躍により、ブジ空軍基地の滑走路は修復される。ジャームナガル空軍基地からヴィクラム空軍大尉(アミー・ヴィルク)の操縦する輸送機が飛び立つが、兵隊を積み過ぎていたために離陸時に前輪を破損してしまう。ブジ空軍基地ではヴィジャイがトラックを用意して待っており、輸送機の前輪を時速120kmで走るトラックの荷台に乗せ、着陸を成功させる。

 国境地帯ではRKナーイル(シャラド・ケールカル)率いる120人の兵士たちと、諜報機関RAWのランチョールダース・パーギー(サンジャイ・ダット)がパーキスターン軍の進軍を必死で阻止していた。そこへブジ空軍基地に着陸した兵士たちが援軍に駆けつけ、パーキスターン軍を追い返す。

 こうして第3次印パ戦争においてインドはカッチ地方を死守したのだった。

 カッチ地方は、グジャラート州西部の位置し、パーキスターンのスィンド州と接している。この地域は周囲を海で囲まれており、交通が遮断されやすい。第3次印パ戦争時、パーキスターンの思惑は正にこの地域をインドから孤立させ占領し、休戦の交渉を有利に運ぶことであった。また、カッチ地方には独自の服飾文化が色づいていることでも知られる。男性たちは短いワンピースのような上着の白い衣服を着用し、女性たちは美しい刺繍の入った服を身に付けている。

 前半は展開が早い上に回想シーンが唐突かつ頻繁に挿入されて置いて行かれる場面が所々あったのだが、後半はカッチ地方をパーキスターン軍から死守するというミッションが明白になり、語り口が安定した。他のインドの戦争映画と同じく、愛国主義を喚起する映画である。また、パーキスターンを完全なる悪役として描いており、反パーキスターン映画でもある。

 第3次印パ戦争時にカッチ地方を守り抜いた功労者がそれぞれ映画の中に登場していたが、中でも中心となっていたのは、ブジ空軍基地の破壊された滑走路を修復したヴィジャイであった。空軍の軍人の割には彼が飛行機に乗るシーンはなかったのだが、滑走路の修復にインドの存亡が掛かる中、リーダーシップを発揮し、困難なミッションを成し遂げていた。アジャイ・デーヴガンらしい、実直な役柄であった。

 また、近隣の村に住む女丈夫スンダルベーンの活躍にも焦点が当てられていた。カッチ空軍基地の滑走路修復に女性たちが協力したのは史実のようである。「Bhuj」は第一に有能なリーダーを演じるアジャイの映画であるのだが、近年のヒンディー語映画において女性主体の映画が増えているトレンドに乗るように、第3次印パ戦争の勝利において女性たちの知られざる活躍があったことが賞賛をもって取り上げられていた。スンダルベーンを演じていたのはソーナークシー・スィナーであったが、力強い演技を見せていた。

 映画の舞台は主にグジャラート州なのだが、パーキスターン領土内でもインド人による活躍があった。ノラ・ファテーヒー演じる女スパイ、ヒーナー・レヘマーンである。パーキスターン軍の高官の妻となって情報収集し、インドに有益な情報をもたらした。彼女のキャラは、「Raazi」でアーリヤー・バットが演じたセヘマトとほぼ同じである。

 サンジャイ・ダットが演じたランチョールダース・パーギーは、カッチ地方出身のRAWエージェントという設定だが、彼も実在の人物のようである。クライマックスでは一人で何十人もの敵兵をなぎ倒し、生き残った。さすがにこの部分はフィクションであろう。

 パイロットのヴィクラムを演じたアミー・ヴィルクはパンジャービー語映画俳優かつ歌手であり、ヒンディー語映画への出演は初である。RKナーイルを演じたシャラド・ケールカルは最近ヒンディー語映画に出演が増えている俳優で、成長株だ。また、ヴィジャイの妻ウシャーを演じたプラニター・スバーシュは、南インド映画界でキャリアを築いて来た女優で、つい最近「Hungama 2」(2021年)でヒンディー語映画デビューをした。残念ながら「Bhuj」ではほとんど見せ場がなかった。

 「The Ghazi Attack」はインド初の潜水艦映画との触れ込みだったが、この「Bhuj」は今まででもっとも空中戦に力を入れたインド製戦争映画と評価できるかもしれない。CGが多用されているとは思うが、序盤のドッグファイトはスリルがあった。

 「Bhuj: The Pride of India」は、第3次印パ戦争時、カッチ地方であまり知られていない攻防戦があったことを世に知らしめる、愛国主義的な戦争映画である。特に女性たちが勝利に貢献したことが声高らかに讃えられており、近年のヒンディー語映画のトレンドを反映している。前半は作りが粗いが、後半はグリップ力がある。インド映画史上最高レベルのドッグファイトシーンも見所である。