Hungama 2

3.0

 ヒンディー語映画界において「コメディーの帝王」と称される監督は何人かいるが、プリヤダルシャンはその一人である。1980年代は専らマラヤーラム語映画を撮っていたが、1990年代になるとヒンディー語映画も撮り始め、2000年代からはヒンディー語映画を中心に各映画界を股に掛けて作品作りをする汎インド的監督となった。最大の持ち味はコメディーだが、それ以外のジャンルの映画も撮っている。彼のヒンディー語コメディー映画の中で、「Hungama」(2003年)は名作に数えられる。

 2021年7月23日からDisney+ Hotstarで配信開始されたプリヤダルシャン監督の新作ヒンディー語映画「Hungama 2」は、題名こそ「Hungama」の続編であるが、実際にはコメディー映画であることぐらいしかつながりがなく、独立した作品と考えていいだろう。題名は「騒動」を意味する。

 キャストは、シルパー・シェッティー、パレーシュ・ラーワル、ミーザーン・ジャーファリー、プラニター・スバーシュ、ラージパール・ヤーダヴ、アーシュトーシュ・ラーナー、マノージ・ジョーシー、ジョニー・リーヴァル、ティークー・タルサーニヤーなど。他に、アクシャイ・カンナーが特別出演している。

 キャストの中で何と言っても注目すべきは、シルパー・シェッティーである。彼女は1990年代から2000年代に掛けて活躍した女優で、そのスタイルの良さはずば抜けていた。「Hungama 2」では14年振りに本格的にスクリーンに返り咲いたが、まるで時が止まったかのように、ほとんど変わっていない。1975年生まれなので、既に40代半ばであるが、どんな魔法を使っているのかと思うほどだ。

 ミーザーン・ジャーファリーは俳優ジャーヴェード・ジャーファリーの息子である。また、プラニター・スバーシュは南インド映画界で活躍する女優で、本作はヒンディー語映画デビュー作となる。

 前作とはほとんどつながりがないと書いたが、キャストでは共通点も見られる。パレーシュ・ラーワル、ティークー・タルサーニヤー、マノージ・ジョーシー、そして特別出演のアクシャイ・カンナーが、前作に続き本作でも出演している俳優たちである。

 この映画は本来ならば2020年8月14日に公開される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で撮影が中止され、公開も延期となった。最終的に、2021年7月23日にOTT(配信スルー)プラットフォームでの公開に切り替えられた。プリヤダルシャン監督自身が過去に撮ったマラヤーラム語映画「Minnaram」(1994年)のリメイクとされている。

 舞台はヒマーチャル・プラデーシュ州山間の町。地元の名士ゴーヴィンド・カプール大佐(アーシュトーシュ・ラーナー)は、自分の息子アーカーシュ(ミーザーン・ジャーファリー)と、親友バジャージ(マノージ・ジョーシー)の娘スィムランを結婚させることにした。ところが、カプール家にある日突然、一人の子連れの女性がやって来る。彼女の名前はヴァーニー(プラニター・スバーシュ)と言い、アーカーシュの大学時代の恋人だった。ヴァーニーは、子供の父親はアーカーシュだと主張する。

 アーカーシュは、バジャージにこのことを隠しながら、子供の父親は自分ではないことを証明しようと奔走する。アーカーシュの同僚アンジャリ(シルパー・シェッティー)は協力するが、アンジャリの夫ティワーリー(パレーシュ・ラーワル)は、アーカーシュとアンジャリの不倫を疑い、問題を複雑にする。

 最終的にヴァーニーはアーカーシュに真実を話す。実はその子供は、アーカーシュの兄アマンと、ヴァーニーの姉との間にできた子供だった。ヴァーニーの姉は出産と同時に死亡し、子供をヴァーニーに託した。ヴァーニーは子供をアマンに渡すためにやって来たのだった。アマンは妻と共にニューヨークにいたが、アーカーシュの結婚式のためにインドに帰国した。アマンはヴァーニーの言うことを聞き、自分の行為を認める。

 アーカーシュとスィムランの縁談は破談となってしまうが、アーカーシュはヴァーニーに再び恋するようになっていた。ヴァーニーはいつの間にかいなくなるが、カプール家は彼女を追い掛け、子供を受け取ると同時に、アーカーシュとの結婚を認めさせる。

 ヴァーニーが連れて来た子供の父親は一体誰なのか、この謎が終盤までなかなか明かされず、このサスペンスで最後まで引っ張って行く一点突破の映画であった。パレーシュ・ラーワルを始めとした当代一流のコメディアン俳優たちが多数脇を固めており、彼らの馬鹿騒ぎによってプリヤダルシャン映画らしい笑いは保証されているものの、ヴァーニーの行動があまりに奇怪すぎて、笑いに集中できないところがあった。

 1990年代のマラヤーラム語映画のリメイクであるため、いくら現代的に作り替えようとも、所々に古さが感じられた。たとえば子供の父親を確かめるのに、現代ならばDNAテストをすれば済む話だが、「Hungama 2」では血液型によるマッチングをするだけで、DNAテストの結果が曖昧にされていた。

 ひとつの大きな邸宅に大家族が住み、その中でドラマが繰り広げられると言った構成の映画は、ヒンディー語映画では既に絶滅危惧種となって来ている。それに加えて「Hungama 2」では、人間関係が詳しく説明されないのでよく分からない。カプール家の中での人間関係、カプール家とティワーリー家の関係など、映画が進んで行く中で少しずつ分かって来るのだが、登場人物の導入の際にうまく説明してもらった方が明確だった。この辺りのまずさも感じた。

 ゴーヴィンドが手を焼くやんちゃな4人の子供と、彼らの家庭教師が定着しないという下りは、言うまでもなく「サウンド・オブ・ミュージック」の翻案であろう。ただ、映画の本筋とはあまり関係ない部分で、ちぐはぐな印象を受けた。原作ではもっと「サウンド・オブ・ミュージック」寄りのストーリーだったのかもしれない。

 映画の完成度としては必ずしも高い評価を与えられない「Hungama 2」だが、ミーザーン・ジャーファリーとプラニター・スバーシュのお披露目としてはどうだっただろうか。正直なところ、どちらも可もなく不可もなく、だ。この映画で大きな失敗はしていないが、強い印象を残せた訳でもない。今後の出演作に依るだろう。やはりキャリアが長い分、プラニターの方が落ち着いた演技をしていたが、ヒンディー語映画界に拠点を移すまでに成功するかは不明だ。

 若い俳優たちよりも、むしろシルパー・シェッティーの存在感が突出していた。14年のブランクを全く感じさせないオーラがあり、今後の活躍に期待したい。

 全編ヒマーチャル・プラデーシュ州で撮影されており、自然の光景がとても美しかった。ただ、舞台となっている町の名前は劇中では特定されていなかった。アーカーシュとスィムランの婚約式のロケ地は、おそらくナッガルのナッガル城であろうが、他のロケ地は不明である。

 「Hungama 2」は、「コメディーの帝王」プリヤダルシャン監督の最新コメディー映画だが、前作「Hungama」とはほとんどつながりがなく、独立した作品だ。笑えるシーンはいくつもあるのだが、プリヤダルシャン監督自身の過去の作品のリメイクで、古めかしさが残っているのは否めない。シルパー・シェッティーの14年振りのカムバックという点が最大の売りである。