インド映画

多言語国家インド

 インドは多言語国家であり、インド各地で様々な言語が話されている。インド憲法で「公用語」扱いされている言語は、下記のインド土着の22言語に英語を加えた23言語であり、これらの言語はインド全体に満遍なく分布しているというよりも、地域ごとに偏りを持って分布している。

  1. Assamese(アッサム語/アッサミー語)
  2. Bengali(ベンガル語/ベンガリー語)
  3. Bodo(ボド語)
  4. Dogri(ドーグリー語)
  5. Gujarati(グジャラーティー語)
  6. Hindi(ヒンディー語)
  7. Kannada(カンナダ語)
  8. Kashmiri(カシュミーリー語)
  9. Konkani(コーンカニー語)
  10. Maithili(マイティリー語)
  11. Malayalam(マラヤーラム語)
  12. Manipuri(マニプリー語)
  13. Marathi(マラーティー語)
  14. Nepali(ネパール語/ネパーリー語)
  15. Odia(オリヤー語)
  16. Punjabi(パンジャービー語)
  17. Sanskrit(サンスクリット語)
  18. Santali(サンターリー語)
  19. Sindhi(スィンディー語)
  20. Tamil(タミル語)
  21. Telugu(テルグ語)
  22. Urdu(ウルドゥー語)

 もっとも、「語族」という言語学の観点からインドの言語を分類すると4つにまとまる。その中でも映画が盛んに作られているのは、インド=ヨーロッパ語族とドラヴィダ語族の2種類に限られる。インド=ヨーロッパ語族の言語は主に北インドで話されており、英語、フランス語、ドイツ語などのヨーロッパ諸語と親縁関係にある。ヒンディー語、ベンガリー語、パンジャービー語、グジャラーティー語などが代表例である。一方のドラヴィダ語族の言語はインド=ヨーロッパ語族とは全く系統が異なり、主に南インドで話されている。タミル語、テルグ語、カンナダ語、マラヤーラム語の4言語が代表例である。

「インド映画」の実体と特徴

 映画が言語に依存するメディアである以上、インドで作られる映画は言語ごとに作られ、インド各地に映画産業が存在する。各地に映画産業が存在すると言うことは、各地にスターがおり、プロダクションや監督その他のスタッフがおり、地域ごとに観客層も分散している。「インド映画」と呼ばれる単一の産業や業界は存在せず、インド各地に分布する各言語による映画産業の集合体が「インド映画」の実体である。注意すべきは、必ずしもその言語が主に話されている地域にその言語の映画産業のベースが位置するわけではないことだ。例えば、ヒンディー語映画の本拠地はムンバイー(旧名ボンベイ)であるが、この商都が位置するのはマラーティー語の地域であるマハーラーシュトラ州である。また、かつては南インド諸語の本拠地はタミル・ナードゥ州の州都チェンナイ(旧名マドラス)に集積されていた。と言うことはつまり、タミル語の話されている地域で、タミル語映画に加えて、テルグ語、カンナダ語、マラヤーラム語の映画も作られていたということである。

 各映画産業はそれぞれに特徴を持った映画作りを行っているため、「インド映画」の特徴を一言で言い表すのは本当なら困難である。ただ、各映画産業が全くバラバラかと言うとそう言う訳でもなく、「インド映画」としての統一感を見出すことも不可能ではない。「多様性の中の統一性」ということがインドのあらゆる事象に対して言われるが、映画についても例外ではない。例えば、他国の映画よりも、歌と踊りに比重を置いた映画作りをしているのは、「インド映画」全体の特徴と言っていいだろう。

 また、各映画産業が完全に独立して点在している訳でもない。各映画界の間で人材交流が盛んで、お互いに影響を及ぼし合っている。特定の言語でヒットした作品を別の言語でリメイクする流れは昔から続いている。「インド映画」の最大の特徴は、各言語、各地域の映画産業が互いに切磋琢磨し合いながら映画作りを行うダイナミズムにあると言ってよい。