Tuesdays and Fridays

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Tuesdays and Fridays
「Tuesdays and Fridays」

 日本のアカウントでも多数のインド映画が視聴できるNetflixは日本でのインド映画体験に革命を起こしているが、そこで配信されている作品は玉石混交である。意外にいい作品も配信されているが、映画館で公開できなかったか、あるいは公開されても鳴かず飛ばずだった作品も多くラインナップに加えられている。インドで2021年2月19日に公開され、早くも4月にはNetflixで配信が開始されたヒンディー語映画「Tuesdays and Fridays」は、完全に「石」の方の作品だ。

 「Tuesdays and Fridays」の監督・キャスト共にほぼ無名と言っていい。著名な映画監督であるサンジャイ・リーラー・バンサーリーのプロダクションで作られた映画である点のみが、一定の信頼感を喚起している。監督はタランヴィール・スィン。主演はジャターレーカーとアンモール・タケーリヤー・ディッローン。ジャターレーカーは2014年のミス・インディアかつミス・インターナショナルで、本作が映画デビュー作となる。一方のアンモールは、女優プーナム・ディッローンの息子である。彼にとってもこれがデビュー作である。

 舞台はまずはムンバイーから始まる。有能な弁護士のスィヤー(ジャターレーカー)は、スター男優ジャティンと付き合っていたが、公衆の面前で平手打ちをし、物議を醸す。スィヤーは2ヶ月間の休暇を取り、生まれ故郷のロンドンに帰る。ロンドンには母親が住んでいた。母親は父親と離婚しており、スィヤーに別の男性と再婚することを明かす。

 スィヤーはロンドンのとあるカフェで、ムンバイーで出会った作家ヴァルン(アンモール・タケーリヤー・ディッローン)と再会する。スィヤーはヴァルンを気に入るが、ヴァルンは7週間しか付き合わないと言う。そこでスィヤーは、1週間に2日、火曜日と金曜日だけデートするなど、3つの条件を出す。ヴァルンはそれに乗り、二人は週2日だけデートすることになる。

 ヴァルンは思うようにスィヤーと会えないことでスィヤーへの気持ちを募らすようになる。スィヤーもヴァルンをはっきりと愛するようになり、週2日の条件を外して、正式に彼と付き合おうと決める。だが、それを打ち明けようとしたところ、ヴァルンから、元恋人とよりを戻すことを決めたと告げられる。 

 監督や脚本は男性だが、主に女性の視点から物語が進む、最近のヒンディー語映画のトレンドに乗った作品となっている。登場人物でも女性の割合が多い。相対的に男性キャラの作り込みが甘かった。登場する母親世代の女性たちは皆、夫と離婚しており、その夫は全く登場しないかほとんど登場しないという影の薄さであった。特にアンモールが演じたヴァルンは、地に足の付いていないフワフワとしたキャラになってしまっていた。登場した当初はクールなキャラだったが、すぐに落ち着きのないキャラへと変貌し、興ざめである。下手な少女漫画を思わせる映画だった。

 ただ、着想は面白かった。2人の男女が、火曜日と金曜日だけしかデートしないと決め、それを守ろうとする。これはスィヤーの戦略でもあった。ヴァルンは特定の女性とは7週間しか付き合わないというポリシーを持っていたが、ヴァルンに自分を「最後の女」とするために、このような条件付きの交際を提案したのである。ヴァルンはまんまと引っかかって、じらされることになり、スィヤーを特別視し出す。

 低予算の作りだが、インド映画の文法に則って、歌と踊りのシーンが多数挿入されていた。上映時間が2時間に満たず、スターのキャストもない、このようなオフビートの映画で、これだけ頻繁にダンスシーンが入るのは逆に珍しい。しかし、ダンスの質も悪く、映画を盛り下げてしまっていた。

 「Tuesdays and Fridays」は、無名の監督と俳優による、少し変わったロマンス劇である。火曜日と金曜日しかデートしないと決めたカップルの関係がどのように展開するか、それだけを聞くと面白そうなのだが、いかんせん、監督が経験不足で、俳優も新人ということもあり、残念な出来になっている。無理に鑑賞する必要はない。