Kaali Khuhi

3.0

 結婚時に多額の持参金を花嫁側から花婿側に支払わなくてはならない習慣のあるインドでは、男児が生まれるほど経済的に潤い、女児が生まれるほど経済的に困窮するため、女児の堕胎や間引きが横行して来た。この問題を最もセンセーショナルに扱ったヒンディー語映画は「Matrubhoomi」(2003年)であるが、これは女児の間引きをし過ぎたために女性が一人もいなくなってしまった村を舞台としたディストピア映画であった。

 2020年10月30日からNetflixで配信開始された「Kaali Khuhi(黒い井戸)」は、女児の間引き問題をホラー映画仕立てで扱った映画である。監督は、主に短編映画を撮って来たテリー・サムンドラ。キャストにはほとんど無名の俳優たちが起用されているが、唯一シャバーナー・アーズミーだけは著名なベテラン女優である。主人公の少女を演じるのはリヴァ・アローラー。他に、サティヤディープ・ミシュラー、サンジーダー・シェーク、リーラー・サムソンなどが出演している。

 10歳のシヴァーンギー(リヴァ・アローラー)は、祖母が病気になったため、父親のダルシャン(サティヤディープ・ミシュラー)と母親のプリヤー(サンジーダー・シェーク)と共にパンジャーブ州の田舎にある父親の実家を訪れる。だが、シヴァーンギーは村に行く前から、見知らぬ女の子を見るようになっており、村に着いてからも引き続き女の子の姿を見掛けた。

 三人が村に着いてすぐに祖母は口から黒い液体を吐き出して怪死した。また、母親が高熱を出して寝込んでしまう。村には病気が広まり、多くの人々が死んで行った。叔母のサティヤー(シャバーナー・アーズミー)は、畑の外れにある封印された井戸が解放されているのを見つけ、村に呪いが戻って来たと直感する。

 シヴァーンギーが時々見掛けた女の子は、父親の妹となるはずだったサークシーの霊だった。サークシーは生まれて直後に間引きされ死んでいた。サークシーはシヴァーンギーの家族もろとも皆殺しにしようとしていた。しかし、シヴァーンギーがサークシーを助けたため、サークシーの魂は浮かばれることになった。

 村の古いしきたりに従って間引きされて来た女の子の霊が現代に蘇って復讐するというホラー映画であった。女児の堕胎や間引きはインド社会に根深い公然の秘密であり、これを着想源としたホラー映画は、インド人にとって非常にリアルに感じられる物語だと言える。ホラー映画というのは元来、完全なる娯楽映画であり、そこに社会的メッセージを下手に入れるのは難しいのだが、「Kaali Khuhi」についてはその点はうまくクリアしていた。

 ただ、ホラーに偏り過ぎで、論理的なストーリー展開になっておらず、冷静に物語を追っていくと説明されていない部分がいくつかある。なぜサークシーの魂が封印されていた井戸が解き放たれたのか、なぜサークシーの霊が復活したことで村中に疫病が広まったのか、なぜ生まれた直後に殺されたサークシーの霊が少女の姿をしているのか、そして最後に父親のダルシャンはどうなったのかなど、1時間半の上映時間の中で未解決の問題がいくつもあった。

 インド製ホラー映画としては怖い部類に入る。保守的な田舎の村において、男児の出産を強制するような発言があったことから、女児堕胎もしくは間引きによって殺された女児の霊が原因であることは序盤から予想できたが、それ以外の部分は何が何だか分からないまま人が病気になったり殺されたりして行くので、暗闇の中をがむしゃらに進むような怖さがあった。降り続く雨もその恐怖を上塗りしていた。

 主人公シヴァーンギーを演じたリヴァ・アローラーが、無口ながら好奇心旺盛な少女の役を真摯に演じており、好感が持てた。それにシャバーナー・アーズミーらの貫禄の演技が加わり、重厚なホラー映画に仕上がっていた。

 「Kaali Khuhi」は、インド社会に巣くう大きな問題のひとつである女児の間引きをテーマにしたホラー映画である。1時間半の短い映画ながらも怖さは一級だ。しかし、映画を最後まで観てもスッキリしない部分があり、もどかしさが残る映画でもある。