Ghoomketu

4.0

 2020年5月22日からZee5で配信開始されたヒンディー語映画「Ghoomketu」は、低予算映画の作りで監督が新人ながら、キャストが非常にユニークで目を引く。

 まず、主演はナワーズッディーン・スィッディーキーだ。現在、ヒンディー語映画界で最も注目される演技派男優であり、彼の主演作なら間違いはないと確信できる。さらに、ヒンディー語映画界の風雲児アヌラーグ・カシヤプ監督が俳優として出演している。

 また、特別出演陣も低予算映画の域を超えている。ランヴィール・スィン、ソーナークシー・スィナー、チトラーンガダー・スィン、ニキル・アードヴァーニー(監督)、ローレン・ゴットリーブ、アンヴィター・ダット(監督)、そしてアミターブ・バッチャンが特別出演している。

 他に、ラーギニー・カンナー、ラザーク・カーン、ブリジェーンドラ・カーラー、ラグヴィール・ヤーダヴ、イラー・アルン、スワーナンド・キルキレー(作詞家)などが出演している。

 総じて、スター俳優、演技派俳優、そして普段は裏方の監督や作詞家など、様々な顔ぶれが俳優としてスクリーンに登場している。監督はプシュペーンドラ・ナート・ミシュラー。過去にTVドラマを撮ったことがあるが、映画を撮るのは初めてである。アヌラーグ・カシヤプとヴィカース・ベヘルがプロデューサーである。

 ウッタル・プラデーシュ州マホーナーで生まれ育ったグームケートゥ(ナワーズッディーン・スィッディーキー)は、ムンバイーでストーリーライターになるのが夢だった。集団結婚にて太った女性ジャーンキー・デーヴィー(ラーギニー・カンナー)と結婚させられたことで実家に嫌気が指したグームケートゥは、父親(ラグヴィール・ヤーダヴ)に黙って家出し、ムンバイーへ向かう。

 政治家の叔父(スワーナンド・キルキレー)は警察に圧力を掛け、ムンバイー警察にグームケートゥを探させる。その仕事は、バドラーニー警部補(アヌラーグ・カシヤプ)に任された。バドラーニー警部補は上司から、1ヶ月以内にグームケートゥを見つけられなかった転勤させられると告げられる。だが、捜索願にはグームケートゥの写真すらなく、手掛かりはほとんどなかった。

 一方、グームケートゥは実はバドラーニーの家に居候していた。グームケートゥは映画監督に映画のストーリーを持って行ったり、シャールク・カーンに会いに行ったりするが、まともに取り合ってもらえなかった。彼の手元には1ヶ月分の家賃しかなく、タイムリミットが迫っていた。

 1ヶ月が過ぎたとき、グームケートゥは今まで書き上げた3つのストーリーを閉じたファイルを何者かに盗まれてしまう。失意のグームケートゥは警察署に被害届を出しに行き、たまたまバドラーニー警部補が対応するが、彼はすぐに席を立ち、故郷に戻ることにする。目の前に座っていたのが、探していたグームケートゥであると気付いたバドラーニー警部補が彼を追うが、既にいなくなっていた。

 盗まれたファイルの中身は流れ流れてベールプーリー(スナック菓子)の包み紙となり、アミターブ・バッチャンのところへ届く。アミターブはそこに書かれていた一節が気に入り、映画の中で使う。グームケートゥは映画を観て自分の書いたラインが使われていることに気付き、大騒ぎする。

 田舎者がライターになる夢を抱いてムンバイーにやって来るという、いかにもありふれたストーリーであったが、演出がスタイリッシュで、展開が小気味よく、ナワーズッディーン・スィッディーキーなど俳優たちの演技も絶妙かつ意外にスターパワーがあり、退屈しない映画だった。プシュペーンドラ・ナート・ミシュラー監督の功績と言うよりも、プロデューサーのアヌラーグ・カシヤプの手がかなり入った映画だと感じた。

 時間軸が現代と過去を行ったり来たりするため、ボーッと観ていると分からなくなるが、基本的にはムンバイーのシーンは現代だ。マホーナーの実家のシーンは、現在進行形のこともあれば、過去の出来事の回想であることもある。現代のシーンが進行する中で、ふとした拍子に関連する過去の出来事が語られるという手法である。登場人物の設定を説明するために、祖父の代まで遡って語られることもある。そしてそれらがそれぞれちょっとしたジョークになっている。

 さらに、ストーリーライター志望の青年が主人公であり、彼が思い描くストーリーが映像化されて随所に登場する。ジャンルも、コメディー、SF、ホラー、ロマンスなど多岐に渡る。「スタートレック」や「Dilwale Dulhania Le Jayenge」(1995年/邦題:DDLJシャー・ルク・カーンのラブゲット大作戦)などのパロディーもあった。それらひとつひとつがまた面白おかしく、全体としてバラエティーショーのようなコメディー映画に仕上がっていた。

 ナワーズッディーン・スィッディーキー、アヌラーグ・カシヤプ、ラグヴィール・ヤーダヴなどの演技も、そういう雰囲気の映画であることを踏まえて、確信犯的に大げさな演技をしており、存分に楽しんでいた印象である。

 「Ghoomketu」は、新人監督の映画ながら、アヌラーグ・カシヤプやナワーズッディーン・スィッディーキーなど、パワフルな才人たちが支えており、しかもアミターブ・バッチャンをはじめとした大物スターたちもカメオ出演し、賑やかしている。メインストーリーは陳腐ながらも、味付けがスタイリッシュかつバラエティーに富んでおり、お腹いっぱいになれる映画だ。