Dabangg 3

3.5
Dabangg 3
「Dabangg 3」

 ヒンディー語映画の人気シリーズに、サルマーン・カーン主演の「Dabangg」シリーズがある。大胆不敵で腕っ節が強く、ズルやお茶目もする警察官チュルブル・パーンデーイが主人公で、痛快なアクションとチュルブルのもったいぶった台詞回しが受けた。第1作「Dabangg」は2012年に公開され、監督はアビナヴ・カシヤプであった。第2作「Dabangg 2」は2012年に公開され、監督はアルバーズ・カーンであった。第3作の「Dabangg 3」は2019年12月20日に公開され、監督はプラブ・デーヴァとなった。ダンサー及びコレオグラファーとして有名なプラブ・デーヴァはいくつかの作品を監督しており、彼が2009年に撮ったサルマーン・カーン主演のヒンディー語映画「Wanted」は、当時低迷気味だったサルマーンの人気復活に大きく貢献した。

 第1作からのヒロイン、ラッジョーを演じるソーナークシー・スィナーも続けてヒロインを務めている。チュルブルの異母兄弟マッカンを演じるアルバーズ・カーンも同様である。アルバーズはサルマーンの実の弟である。本作では、もう1人の弟ソハイル・カーンも特別出演しており、三兄弟が揃うのは「Maine Pyaar Kyun Kiya」(2005年)以来となる。さらに付け加えれば、前作・前々作に引き続きサルマーンの妹アルヴィラー・カーンがコスチューム・デザインを担当している。

 チュルブルの母親ナイニー(ディンプル・カパーリヤー)は第1作で死んでいるのだが、今回、回想シーンがあり、そこで再登場する。チュルブルの父親プラジャーパティは、第1作と第2作ではヴィノード・カンナーが演じていた。しかしながら、彼は2017年4月27日に亡くなってしまった。そのため、ヴィノード・カンナーの弟プラモード・カンナーが代わりにプラジャーパティ役を演じている。プラモードは今まで映画界にほとんど関わっておらず、俳優をするのは初めてである。

 悪役のバーリ・スィンを演じるのはスディープ。カンナダ語映画界を本拠地として他言語の映画にも出演している。ヒンディー語映画に出演するのは10年振りぐらいとなる。「Dabangg」シリーズの悪役は、第1作のソーヌー・スード、第2作のプラカーシュ・ラージ、そして今回のスディープと変遷して来ているが、南インド映画の俳優を起用するパターンが出来ている。

 また、「Dabangg 3」にはサブヒロインとして、俳優・監督マヘーシュ・マーンジュレーカルの娘サイー・マーンジュレーカルが出演しているのも特筆すべきだ。さらに、マヘーシュとその妻メーダー・マーンジュレーカルもこの映画に出演しており、マーンジュレーカル親子が揃い踏みしている。

 以上のように、「Dabangg 3」は、サルマーン・カーンの三兄弟、カンナー兄弟、そしてマーンジュレーカル親子と、家族出演が多い。ソーナークシー・スィナーも、シャトルガン・スィナーの娘であることを忘れてはならない。2020年には、スシャーント・スィン・ラージプートの自殺をきっかけに、ヒンディー語映画界の血統主義が批判にさらされたが、「Dabangg 3」はヒンディー語映画界の血統主義そのものの映画だと言える。

 前作「Dabangg 2」は、「Dabangg」の焼き直しとの批判を受け、監督を初めて務めたアルバーズ・カーンも未熟さを指摘されたが、「Dabangg 3」は観客を過去に誘い、チュルブル・パーンデーイがチュルブル・パーンデーイとなった過程を見せてくれるので、目新しさがあった。チュルブルはラッジョーと出会う前、クシーという女性と恋に落ちた。チュルブルは元々ダーカル・チャンド・パーンデーイという名前だったが、クシーが彼に「チュルブル」という名前を与えたことも明らかになる。だが、クシーは悪党バーリ・スィンに目を付けられ、彼女とその家族は殺されてしまう。チュルブルはバーリを殺したはずだったが、実は生きており、今回、彼の敵となって現れるのである。

 現在のシーンで起こることは、前作、前々作とそう違わない。悪役がラッジョーを誘拐し、チュルブルが彼女を助ける。それだけで説明ができてしまう。チュルブルの強さやお茶目さもそのままである。

 気になったのは味付けだ。監督のプラブ・デーヴァは基本的にタミル語映画の人材であり、「Dabangg 3」にも南インド映画のテイストが入っていた。コメディーシーンがくどかったり、唐突な挿入に感じられるダンスシーンがあったりすることを「南インドのテイスト」と呼んでいる。元々、ヒンディー語映画界では「Wanted」以来、南インドのアクション映画のリメイクが続き、食傷気味になっていた時期があった。そのとき「Dabangg」は、南インドのリメイクではない、ヒンディー語映画らしいアクション映画をひっさげて登場し、大ヒットとなった。それが「Dabangg」シリーズに大切にして欲しかった部分なのだが、今回、プラブ・デーヴァが監督をしたことで、「Dabangg」が南インド寄りになってしまったことは懸念に感じた。

 それでも、娯楽の要点を押さえた作りで、チュルブルの見事なヒーロー振りを楽しめる2時間半である。豪華絢爛なダンスシーンも多く、「Hud Hud」や「Munna Badnaam Hua」など、「Dabangg」シリーズの定番も忘れていなかった。そして、エンドクレジットでは、チュルブルの政界入りが示唆されていた。「Dabangg 4」への布告であろうか?