Paltan

2.5

 インドの戦争映画はほぼ愛国主義映画であり、主人公が戦う相手は、イスラーム教徒、英国人、パーキスターンのどれかと相場が決まっている。だが、2018年9月7日公開の「Paltan(小隊)」は、1967年に中国とスィッキムの国境地帯で勃発した、ナトゥ・ラ&チョ・ラ紛争を題材にしており、戦う相手は中華人民共和国の人民解放軍、つまり中国人となっている。

 「Paltan」の監督はJPダッター。「Border」(1997年)や「LOC Kargil」(2003年)など、戦争映画を好んで撮る監督である。キャストはジャッキー・シュロフ、アルジュン・ラームパール、ソーヌー・スード、グルミート・チョウドリー、ハルシュヴァルダン・ラーネー、ラヴ・スィナーなどである。

 映画は1967年のナトゥ・ラを舞台にしている。ナトゥ・ラとチョ・ラはスィッキムと中国の国境地帯にあり、当時スィッキムはまだ独立王国で、インド軍が国防を担当していた。1962年に中印国境紛争が起こり、インドは敗北した。その後、インドは中国との国境の防備を増強し、ナトゥ・ラでは人民解放軍と至近距離で対峙することとなった。1965年に第2次印パ戦争が起こると、それを好機とみて人民解放軍はナトゥ・ラに攻撃を加え、インド軍側に多数の死者が出た。映画は、緊張が続くナトゥ・ラに、ラーイ大佐(アルジュン・ラームパール)が前線司令官として赴任するところから始まる。

 国境と言っても、インド領と中国領の間に何かがある訳ではなく、石を並べて国境線を示してあるだけであった。簡単に国境を越えられてしまい、双方の軍の間では小競り合いが絶えなかった。だが、小競り合いがあっても銃火器が使われず、石を投げ合ったり殴り合ったりして、お互い鬱憤を晴らしていた。戦争映画と言っても、前半はいい大人が鬼ごっこをしているような展開が続き、退屈であった。

 事態が動いたのは、インド側が国境線沿いに有刺鉄線を張り始めたことだった。中国側が有刺鉄線を切り、それに対してインド側が抗議をしたことで、一気にヒートアップし、遂に銃火器による撃ち合いが開始された。最終的にはインド軍が人民解放軍を押し戻し、ナトゥ・ラを守り切ったことになっている。

 インド映画で中国が出て来る映画というと、最近では「Chandi Chowk To China」(2009年)があったが、そのときは経済関係を土台にしてインドと中国がかなり接近していた。だが、当時からだいぶ二国間関係は変化した。2020年にラダック地方のパンゴン・ツォでインド軍と人民解放軍の衝突があったのは記憶に新しいが、その前からアルナーチャル・プラデーシュ州やスィッキム州などで小競り合いは続いていた。新型コロナウイルス感染拡大により、インドの対中感情は決定的に悪化している。

 2018年に公開された「Paltan」でも、中国は決して好意的に描かれていない。口では「ヒンディー・チーニー・バーイー・バーイー(インドと中国は兄弟)」とスローガンを口にしながら、実際にはインドを何とかして騙そうとする狡猾な国として描かれている。ただ、ちゃんとした中国人俳優が出演しており、中国語の台詞は本格的だった。

 JPダッター監督の戦争映画はいつもそうなのだが、非常に大味である。兵士が雄叫びを上げて突撃し、撃たれて倒れる、その戦友がまた怒って突撃し、またも倒れる、という展開の繰り返しで、ワンパターンなのである。登場人物が話す台詞も格言めいていて回りくどい。だが、軍人たちを徹底的に持ち上げて描写しており、軍人の受けはとてもいいと言う。「Paltan」も、軍人の士気高揚のために作られた映画のように感じた。

 「Paltan」は、戦争映画の大御所であるJPダッター監督が、1967年のナトゥ・ラで起きた、あまり知られていない紛争を映画化した作品である。ダッター監督らしい大味な作りで、しかも前半は銃が一発も発砲されない奇妙な戦争映画である。中国が敵として出て来る点は、インドの戦争映画としては新しい。インドの軍人の士気高揚にはなるかもしれないが、日本の観客向けではないだろう。