Shaadi Mein Zaroor Aana

3.0

 インド映画の最大の関心事と言えば結婚であり、男女の結婚を巡るインド映画はこれまで数え切れないほど作られて来た。未だに結婚を主題とした映画が作られ続けること自体に驚きを禁じ得ないが、まだ新たな視点で結婚が語られることにも大いに驚かされる。

 2017年11月10日公開の「Shaadi Mein Zaroor Aana(結婚式に是非来てください)」は、その題名が示すとおり、結婚を巡る映画である。監督はラトナー・スィナー。主演はラージクマール・ラーオとクリティ・カルバンダー。他に、ゴーヴィンド・ナームデーヴ、マノージ・パーワー、ナヤニー・ディークシトなどが出演している。

 カーンプル在住の役人サティエーンドラ・ミシュラー、通称サットゥー(ラージクマール・ラーオ)はお見合いした相手アールティ・シュクラー(クリティ・カルバンダー)と結婚することを決める。修士号を取ったアールティは、結婚後働くことを希望しており、サットゥーもそれを了承した。

 ところが結婚式当日、アールティが州公務員の試験に合格したことが分かる。アールティの姉は、ミシュラー家が嫁に仕事をさせない方針であることを知っており、アールティや父親(ゴーヴィンド・ナームデーヴ)に、この結婚をキャンセルするように訴える。父親はもちろん聞き入れなかった。どうしたらいいか分からなくなったアールティは式場を逃げ出してしまう。アールティの叔父(マノージ・パーワー)は、ミシュラー家が持参金を要求したことを持ち出し、結婚を破談にする。

 5年後。アールティは州の官僚として活躍していた。だが、サットゥーは国家公務員となっており、復讐のため、アールティに3000万ルピー収賄の罪をなすりつけて逮捕する。アールティはサットゥーに謝るが、サットゥーは聞こうとしなかった。だが、捜査を進める中で、アールティの部下がアールティの名前を使って収賄をしていることが分かり、アールティは無罪放免となる。

 アールティは今でもサットゥーのことを愛しており、彼にアプローチする。だが、サットゥーは5年前の一件があったことで結婚すら毛嫌いするようになっていた。そこでアールティは別の男性と結婚することを決める。それを知ったサットゥーは焦り始め、二人の結婚式に来てアールティを連れて逃げようとする。だが、全てはミシュラー家とシュクラー家が仕組んだことだった。こうしてめでたくサットゥーとアールティの結婚式が行われる。

 前半は、インド映画史上最高と言ってもいいほどのラブラブ振りが描かれる。主人公のサットゥーとアールティは、親から押しつけられたお見合いということで、渋々顔を合わせたのだが、思いのほか馬が合い、トントン拍子に結婚を決める。それからは見ていてむずがゆくなるほどの相思相愛振りだった。だが、このまま幸せな結婚となってしまっては何のドラマもない。いつこの仲睦まじい二人の間に試練が立ちはだかるのかと、ゾクゾクしながら見守っていた。そういう意味で、前半は非常にグリップ力があった。

 前半において、伏線となっていたのが持参金であった。インドでは、花嫁側から花婿側に多額の持参金を払う習慣がある。1961年に持参金のやり取りは禁止されたが、今でも裏では公然と花婿側から持参金が要求され、花嫁側はその要求に従わざるを得ない状況が続いている。「Shaadi Mein Zaroor Aana」では、双方の相談の結果、持参金の額は250万ルピーに決まった。これは、インドの大卒初任給の100倍の額である。

 確かに持参金は、ミシュラー家とシュクラー家の間の結婚が破談となる口実となった。だが、実際の理由は異なった。第一には、結婚後、嫁に仕事をさせないというミシュラー家のしきたりが原因だった。アールティは高学歴の女性で、成績も良く、才能を活かして仕事をしたいと考えていた。サットゥーとの結婚を承諾したのも、サットゥーが結婚後に働くことを許してくれたからだった。だが、ミシュラー家ではサットゥーは「子供」扱いで、彼が何と言おうと、嫁の仕事は許されそうになかった。結婚前にそれを知ったアールティは結婚に躊躇したのである。

 だが、もう一つ重要なのは、アールティが受かった試験がPCSだったことだ。これは、ウッタル・プラデーシュ州の州政府官僚の登用試験であり、州政府内の役人のランクの中では最高位となる。一方、サットゥーはこのとき単なる事務官で、PCSの手足となって働く下級役人であった。つまり、アールティが就職することになれば、妻の方が地位が上になってしまう。インドにおいて、夫よりも妻の方が収入が多かったり社会的地位が高かったりすると、トラブルになる。これが二重でアールティのキャリアを阻害する可能性があった。

 前半あれほど仲睦まじかった二人が、こういう不釣り合いな結婚をした後に、どういう関係性を持つようになるのか、見てみたかった気もするが、映画はその方向には進まなかった。アールティは式場を逃げ出し、そのまま結婚は破談となる。

 後半は、前半から5年の歳月が流れた後のこととなる。アールティはPCSとしてバリバリ働いていたが、驚くべきことに、サットゥーも出生しており、ISになっていた。ISとは国家公務員のことで、PCSよりもさらにランクが上の官僚となる。この5年間、サットゥーは猛勉強をしてUPSCという国家公務員試験を受験し、合格したのだろう。絶大な権力を手にしたサットゥーは、アールティに対する復讐を開始する。彼女に収賄の容疑を掛け、逮捕するのである。

 ただ、サットゥーがISになったことで、アールティと釣り合いの取れたカップルとなった。紆余曲折を経て二人はよりを戻し、最後には結ばれる。なかなか結婚に踏み切らないサットゥーに対し、偽のフィアンセを紹介して嫉妬心を刺激し、結婚する気にさせるという仕掛けは、インド映画によくある手段である。

 ラージクマール・ラーオとクリティ・カルバンダーは好演と言っていいだろう。ゴーヴィンド・ナームデーヴやマノージ・パーワーなど、周囲のサポートキャストもいい仕事をしていた。特にインパクトがあったのは、アールティの姉を演じたナヤニー・ディークシトだ。二人の間の会話などは、まるで本当の姉妹のように息が合っていた。

 「Shaadi Mein Zaroor Aana」は、インド映画が今まで散々扱って来た結婚を主題にした映画である。最後はお約束だが、そこに至るまでの過程に、また新しい視点が盛り込まれていた。前半と後半の雰囲気が違いすぎ、特に後半があまりにヘビーになるので、軽妙さが失われていたのが残念だった。また、後半は違う方向にストーリーを発展させることもできたと感じる。悪い映画ではないが、もっと面白くもできたのではないかと勝手なことを考えてしまう、もどかしさの残る映画であった。