Simran

3.5

 米国で、武器を持たずに銀行強盗をし、3回成功させたインド人女性がいる。サンディープ・カウルという名前で、チャンディーガル生まれ。7歳の頃、米国に移住し、看護婦として働いていた。21歳の頃にギャンブルにはまり、闇金融から多額の借金をしてしまったために、銀行強盗に手を染めた。4つ目の銀行に強盗に入ったときに警察に逮捕され、66ヶ月の懲役刑となった。彼女の半生を、フィクションを交えて映画化したのが、2017年9月15日公開のヒンディー語映画「Simran」である。

 監督は、「Shahid」(2013年)や「Aligarh」(2015年)などで高い評価を得ているハンサル・メヘター監督。サンディープ・カウルをモデルにしたプラフル・パテール(別名スィムラン)を演じるのは、キレキレの演技に定評のあるカンガナー・ラーナーウト。カンガナーの他にスターや有名俳優のキャスティングはなく、彼女の肩に成否の全てが掛かった作品となっている。

 舞台は米国アトランタ。インド食材店を営む一家に育ったプラフル・パテール(カンガナー・ラーナーウト)は、過去7年間、ホテルでハウスキーパーとして働いていた。一度結婚して失敗し、離婚をしている30歳だ。彼女の夢はアパートを買って両親から独立することだった。ところが、親戚のアンバルに誘われてラス・ベガスへ行き、そこでギャンブルにはまってしまって、アパート購入資金を全て使い果たしてしまう。さらに、闇金融から32,000ドルを借りて、それも失ってしまう。

 アトランタに帰ったプラフルは、借金の取り立てを受けるようになった。利子を含めて50,000ドルを要求されていた。彼女は仕方なく銀行強盗を始める。何の武器も持たずに銀行強盗をしたが、意外にもうまく行った。ただ、強奪した金は50,000ドルに全然届かなかったため、何度も銀行強盗を繰り返す。

 出自がパンジャービーからグジャラーティーに変わり、職業が看護婦からハウスキーパーに変わっているが、サンディープ・カウルの人生をかなり参考にして主人公プラフルの人物設定が行われている。バツイチも同じである。ただ、サンディープは21歳で銀行強盗をしているものの、プラフルは30歳である。9/11事件後の米国において、あまりに簡単に1人の女性が銀行強盗を成功させてしまっていることに非現実性を感じてしまうのだが、実話を元にしたストーリーということで、納得せざるを得ない。最終的にプラフルは警察に自首し逮捕されるのだが、あまりバッドエンディング的な雰囲気にはなっておらず、転んでもただでは起きないプラフルの強靱な精神力が主題に置き換わる形で結末を迎えている。よって、純粋な伝記映画ではない。

 現在のヒンディー語映画界において、単身稼げる女優の筆頭はカンガナーである。そのカンガナーが一人で映画を背負って立っているところが、「Simran」の最大の見所だ。今回彼女が演じたプラフルは、カンガナーの分身のような性格で、自立心が強く、どこか達観したところがあり、どんなことが起こってもへこたれないタフな女性だ。周囲にいたら面倒なタイプの人間だが、映画で観る分には挙動が面白く、飽きない。「Simran」の国内興行成績はフロップとなっているが、海外興行成績が悪くなく、全体では製作費を回収している。

 「Simran」で興味を引かれたのは、父と娘の関係だ。プラフルは一人娘。しかも破天荒な性格のため、父親は彼女をかわいがりながらも手を焼く。プラフルに怒鳴りつけるシーンが何度もあるが、常に彼女のことを気遣う様子も見られ、しっかりとした信頼関係が築かれているのを感じた。道楽息子に悩まされる父親はヒンディー語映画に多いが、最近の傾向は、こういうハチャメチャな娘に振り回される優しい父親が増えて来ており、「Simran」はその典型例だと言える。

 「Simran」は、「単身で稼げる女優」カンガナー・ラーナーウトが一人で映画を背負って立っている映画だ。実在の女性銀行強盗の半生をモデルにした伝記映画だが、どちらかというと伝記映画という性格よりも、主人公プラフルの生き様と、それを演じるカンガナーの演技に焦点が当てられた作品になっている。全編が米国ロケであり、NRI映画でもある。カンガナーのファンなら必見の映画である。