Mubarakan

3.5

 インド映画では伝統的にダブルロールがギミックとして好まれており、一人の俳優(多くの場合主演俳優)が二役を演じる映画は多い。一人二役のパターンは様々だ。双子であったり、単なるそっくりさんであったり、親子であったり、生まれ変わりであったりする。また、ある程度名が売れて来ると、俳優の方がダブルロールを演じたがるというのもあるのかもしれない。さらに、他のスターとの共演を嫌がる俳優は、自分で複数の役を演じる方を好むし、プロデューサー側も一人の俳優に複数の役を演じさせた方がギャラが節約できるという事情もある。これらのことから、インド映画ではダブルロール映画が量産されている。

 2017年7月28日公開の「Mubarakan」もダブルロールを中心に回るコメディー映画だ。今回ダブルロールに挑戦するのは「2 States」(2014年)や「Ki & Ka」(2016年)のアルジュン・カプール。監督は「Welcome Back」(2015年)などのコメディー映画が得意なアニース・バーズミー。ヒロインは「Barfi!」(2012年)のイリアナ・デクルーズ、スニール・シェッティーの娘アティヤー・シェッティー、「Youngistaan」(2014年)のネーハー・シャルマーの3人。他に、アニル・カプール、ラーフル・デーヴ、カラン・クンドラー、ラトナー・パータク・シャー、パヴァン・マロートラー、サンジャイ・カプールなどが出演している。題名の「Mubarakan」とは「おめでとう」という意味である。

 バージワー家のカランとチャラン(共にアルジュン・カプール)は双子の兄弟として生まれたが、両親を事故で亡くし、叔父のカルタール・スィン(アニル・カプール)に預けられた。だが、独身のカルタールに子育てはできず、双子の兄弟は、カルタールの姉ジートー(ラトナー・パータク・シャー)と兄バルデーヴ(パヴァン・マロートラー)の家族に引き取られた。カランはロンドンで育ち、チャランはインドのチャンディーガルで育った。

 バージワー家に大富豪アカルプリート・サンドゥー(ラーフル・デーヴ)から縁談が舞い込み、カランがお見合いすることになった。しかし、カランにはスウィーティー(イリアナ・デクルーズ)という恋人がいたため、チャランを推す。チャランはサンドゥー家の娘ビンクル(アティヤー・シェッティー)とお見合いするが、カルタールの余計な策略のせいで話がこじれてしまう。チャランの育ての親バルデーヴは、チャランを誰とでもいいから12月25日に結婚させると宣言する。

 チャランにも実はナフィーサー(ネーハー・シャルマー)という恋人がいた。だが、ナフィーサーはイスラーム教徒であり、簡単に結婚はできなさそうだった。カランは助け船を出そうとしたが、勘違いからナフィーサーはカランの恋人ということになってしまう。また、チャランはギル家とお見合いをし、そこの娘と結婚することになるが、その娘は厄介なことにカランの恋人スウィーティーであった。さらに、ロンドンではジートーがサンドゥー家と勝手にカランの縁談をまとめていた。

 こうして、12月25日に、カランとビンクル、チャランとスウィーティーの結婚が同時に行われることになった。カルタールの策略のおかげでどちらの結婚式もロンドンのグルドワーラーで行われることになったが、カップリングの問題が残っていた。さらに、ナフィーサーが、チャランが婚約したと聞いて怒ってロンドンに乗り込んで来たため、話がさらにややこしくなる。

 カルタールが動けば動くほど人間関係は複雑になって行くが、ナフィーサーがビンクルの兄マンプリート(カラン・クンドラー)と出会って相思相愛になり、チャランがビンクルとの結婚を望んだことで、話が解決の方向へ向かう。最後にはバージワー家、サンドゥー家、ギル家の間でも話がまとまり、カランとスウィーティー、チャランとビンクルが結婚することになる。

 アニース・バーズミー監督は過去にターバンをかぶったスィク教徒の登場人物を多数出演させたコメディー映画「Singh Is Kinng」(2008年)を作り、大ヒットさせたことがある。この「Mubarakan」も登場人物のほとんどがターバンをかぶったスィク教徒であり、「Singh is Kinng」の再来を思わせるコメディー映画だった。

 インドではスィク教徒はよくジョークの主人公として登場する。その風貌や口調が特徴的なためであろうか、インド人の間ではスィク教徒はコミカルなイメージを持たれており、「Singh Is Kinng」や「Mubarakan」のようにスィク教徒がズラリと登場する映画からは、それだけで何か面白さを感じてしまうところがある。

 そこにダブルロールのギミックが重ねられている。ただ、双子の育った環境は非常に複雑かつ、あまり映画の中で深く掘り下げられていなかった。双子なのにも関わらず、ロンドンとチャンディーガルという別々の場所で育てられたが、この二人は離れ離れに育ったことをあまり深刻に捉えておらず、しかも割と自由にロンドンとチャンディーガルを行ったり来たりする。また、顔がそっくりなことから来る混乱も、この種の映画では笑いの仕掛けとして定番のはずだが、「Mubarakan」ではほとんどそういうシーンがなかった。双子という設定を活かし切れなかったのか、それともそういうベタなギャグは敢えて外したのか、判別し切れなかった。

 結末に結婚式を持って来て、そこへ向かって紆余曲折を用意する、典型的なインド映画の作りであった。主人公の双子が、それぞれ自分の意中の人ではない女性と結婚させられそうになるというシチュエーションがこの映画の核心部分であるが、話を面白くしていたのはナフィーサーの存在であった。もし、双子の結婚相手を入れ替えるだけで解決するなら、それほど面白くはなかっただろうが、結婚相手が少しずつずれていたため、解決を難しくしていたし、話を面白くもしていた。カランはスウィーティーと付き合っていたがビンクルと結婚させられそうになり、チャランはナフィーサーと付き合っていたが、スウィーティーと結婚させられそうになる。これをどう解決するのかと興味津々で観ていたが、ビンクルの兄マンプリートの存在が急に活きて来て、一気にまとめ上げていた。

 「Mubarakan」は、一人二役を演じたアルジュン・カプールのための映画だ。ターバンをかぶらないモダンなスィク教徒若者を体現したカランと、信心深くシャイなチャランをうまく演じ分けられていた。同時に、どういう役でも演じられる芸の幅の広さを証明することができていた。

 3人のヒロインの中では、イリアナ・デクルーズがもっともシニアで、もっとも演技に安定感があった。ネーハー・シャルマーも良かったが、アティヤー・シェッティーはまだ鍛練が必要だ。

 アニル・カプールのコミカルな演技が見られるのも「Mubarakan」の魅力だ。パヴァン・マロートラーやラトナー・パータク・シャーの演技も素晴らしかった。アニルの弟サンジャイ・カプールが特別出演していたが、映画の中ではアニルの方が弟の役を演じていた。

 登場人物の多くがパンジャービーであることもあって、当然のことながら音楽もパンジャービー一色だった。ダンスシーンにも力が入っており、「The Goggle Song」や「Jatt Jaguar」など、元気の出る曲が多かった。アマール・マリク、リシ・リッチ、ゴウロヴ・ローシンなどが作曲している。

 「Mubarakan」は、コメディー映画を得意とするアニース・バーズミー監督が撮った、「Singh Is Kinng」の続編のようなスィク教徒揃い踏みの楽しい映画である。アルジュン・カプールが一人二役で双子を演じている他、3人のヒロインが登場し、ドタバタ劇を繰り広げる。興行的には成功しなかったが、心が軽くなる映画で、観て損はない。