Kaabil

4.0

 日本に比べてインドでは街角で盲人をよく見かける。道端に座って乞食をしている盲人もいれば、電話屋などの仕事をしている盲人もいる。そういうことも関係しているのか、ヒンディー語映画でも盲人がよく登場する。「Aankhen」(2002年)、「Black」(2005年)、「Tom Dick and Harry」(2006年)、「Fanaa」(2006年)、「Golmaal」(2006年)など、時には感動作に、時にはコメディー映画に、盲人を登場させて来た。

 2017年1月25日公開の「Kaabil」も、盲人が主人公の映画である。しかも、ヒーローとヒロインの両人が盲目である。監督は、男臭い映画を得意とするサンジャイ・グプター。盲目の主演男女を演じるのは、リティク・ローシャンとヤミー・ガウタム。他に、ローニト・ロイ、ローヒト・ロイ、ナレーンドラ・ジャー、スレーシュ・メーナン、アキレーンドラ・ミシュラー、ギリーシュ・クルカルニーなどが出演している。また、ウルヴァシー・ラウテーラーがアイテムソング「Haseeno Ka Deewana」でアイテムガール出演している。音楽はリティクの叔父ラージェーシュ・ローシャンである。

 題名の「Kaabil」とは、「~にふさわしい」または「~が可能である」という意味のヒンディー語だ。映画の中ではどちらの意味でもこの言葉が使われていた。

 盲目の青年ローハン・バトナーガル(リティク・ローシャン)は、同じく盲目の女性スプリヤー(ヤミー・ガウタム)とお見合い結婚する。二人は仲睦まじく新婚生活を送っていたが、政治家マーダヴラーオ・シェーラル(ローヒト・ロイ)の弟アミト(ローヒト・ロイ)とその友人ワスィームに二度もレイプされ、自殺する。スプリヤーは盲目だったために犯人を立証できなかったのである。また、警察もマーダヴラーオと通じており、真剣に捜査しようとしなかった。

 ローハンは自らの手で犯人に復讐することを誓う。ローハンは声優をしており、他人の声を真似るのが得意だった。その得意技を使ってまずはワスィームをおびき出し、自殺に見せ掛けて殺す。次にアミトを呼び出し、マーダヴラーオの目の前で焼き殺す。チャウベー警部補(ナレーンドラ・ジャー)はローハンの関与を疑うが、盲人が殺人を犯したことを立証するのは困難だった。そうこうしている内に、マーダヴラーオも落下死して発見される。チャウベー警部補は、とうとうローハンを逮捕することを諦める。

 まずは盲目のカップル、ローハンとスプリヤーの、幸せいっぱいの新婚生活が描写される。優しい夫に美しい妻。盲目ではあるが、誰もが羨むようなカップルであった。だが、幸せな描写は長く続かない。スプリヤーに目を付けたゴロツキ、アミトが登場し、スプリヤーをレイプした上に、警察の捜査を妨害し、さらに二度目のレイプにも及ぶ。酷い展開である。スプリヤーは気丈な女性で、レイプされたからと言って酷く思い悩むような様子はなかった。だが、彼女にとって、ローハンが苦しみ続けるのは耐えられなかった。自分からいなくなればローハンの苦しみは続かないと考え、自ら命を絶つ。非常に沈鬱な前半だ。

 だが、ローハンは聡明かつ、自信と勇気に満ちた盲人であった。警察が頼りにならないと分かった後は、犯人への復讐を自ら行うことを決意する。目が見えない人が目の見える人と戦うため、圧倒的に不利な戦いを強いられるのだが、視覚以外の全ての感覚を駆使し、一人、また一人と、復讐を果たして行く。その戦いは、健常者同士の戦いとは一線を画しており、何倍もスリルがある。

 盲人だからと、妻をレイプした犯人に正義の裁きを受けさせることもできず、警察から馬鹿にされたローハンは、復讐をした後も、盲人であるために、まさか殺人ができるとは容易に思われない。盲人であることを逆手に取った犯罪であった。

 インド映画では、腐ったシステムを外側から直すというプロットを支持することが時々ある。「Kaabil」もその種の映画である。この映画で描かれていたシステムは、盲人のカップルに正義をもたらすことができなかった。そこでローハンはシステムの外側から正義を行うのである。映画をストレートに観ていれば、観客は自然にローハンの行為を支持するようになるだろう。

 リティク・ローシャンは今までも度々障害者役に挑戦して来た。「Koi… Mil Gaya」(2003年)や「Guzaarish」(2010年)などである。今回もそれらの映画に似た演技をしており、悪くはなかった。ただ、やはり超人的な強さが感じられるシーンがいくつかあり、インド映画のヒーロー像を抜け切れていなかった。「Mon Amour」では、目が見えないにも関わらず、同じく盲目のスプリヤーと共にキレキレのダンスを踊ってしまう!

 ヤミー・ガウタムの出番はほぼ前半のみだったが、浮世離れした清楚さやはかなさが出ていた。注目すべきはローニト・ロイとローヒト・ロイである。名前が似ていることからも察せられる通り、この二人は兄弟であり、劇中でも兄弟役を演じていた。

 「Kaabil」は、盲人が盲人の妻の仇を討ち、警察の目をごまかすために策略を巡らし復讐を実行に移すというリベンジ映画である。目の見えない人がいかに目に見える人と対等に戦うか、というスリルがあり、単なるアクション映画に終わっていない。リティク・ローシャン演じる主人公が盲人ながら強すぎるのがいかにもインド映画だが、それ以外の部分ではしっかり作り込まれた良作と評すことができる。