Kahaani 2: Durga Rani Singh

3.5

 「Kahaani」(2012年)は、良質のインド製サスペンス映画だけでなく、作品を単身背負える女優としてのヴィディヤー・バーランの地位を確立した映画でもあった。日本において「女神は二度微笑む」の邦題と共に一般公開された。

 2016年12月2日公開の「Kahaani 2: Durga Rani Singh」は、その題名の通り、「Kahaani」の続編扱いの映画である。監督は前作と同じスジョイ・ゴーシュ、主演も同じくヴィディヤー・バーランである。ただ、前作とのストーリー上またはキャラクター上のつながりはなく、インド映画によくある、題名のみ続編となる。

 他には、アルジュン・ラームパール、タニシャー・シャルマー、ジュガル・ハンスラージ、アンバー・サンニャールなどが出演している。

 西ベンガル州チャンダンナガル在住ヴィディヤー・スィナー(ヴィディヤー・バーラン)の娘ミニー(タニシャー・シャルマー)は下半身不随であった。ヴィディヤーは治療のために米国に娘を連れて行こうとしていた。ところがある日、ミニーが誘拐され、しかもヴィディヤーは交通事故に遭って昏睡状態となってしまう。

 ヴィディヤーの事故の捜査を始めたのがインダルジート・スィン副警部(アルジュン・ラームパール)であった。実はインダルジートはヴィディヤーの元夫であった。彼はヴィディヤーの家で日記を見つけ、それを読み始める。

 ヴィディヤーの本名はドゥルガー・ラーニー・スィンであった。8年前、彼女はカリンポンの学校で事務員をしていた。幼少時に性虐待を受け、トラウマを抱えていた。ドゥルガーは、学校に通う6歳のミニーが性虐待を受けていると察知し、彼女を誘拐する。その際にミニーの祖母を死なせてしまっていた。

 以来、ドゥルガーはヴィディヤーと名前を変え、ミニーと共にコルカタに暮らしていた。ミニーを誘拐したのは、彼女に性虐待をしていた叔父モーヒト(ジュガル・ハンスラージ)であった。意識を取り戻したドゥルガーは病院を抜け出しミニーを助けようとする。だが、警察も指名手配犯のドゥルガーがヴィディヤーであることに気付き、彼女を追う。

 題名の「Kahaani」とは「物語」などの意味だが、前作と併せてこの題名にふさわしい訳を与えるならば、「作り話」である。このシリーズに共通するのは、主人公が作り話をすることである。前作では、ヴィディヤー・バーラン演じる主人公は妊婦だと見せ掛けて、実は違っており、それが衝撃の結末になっていた。「Kahaani 2」のストーリーには、主に2つの作り話が組み込まれていたと言える。

 「Kahaani 2」での第一の作り話は、ドゥルガーがミニーの性虐待の実態を探るため、彼女の家に先生と身分を偽って潜入する部分である。ドゥルガーはミニーの家庭教師となり、彼女の信頼を勝ち取った上で、彼女が叔父から性虐待を受けていることを突き止める。

 第二の作り話は、インダルジートとドゥルガーが共謀して行った。ドゥルガーは発狂してミニーと共に爆死したように見せ掛けて、実は逃げ出していた。警察が、ドゥルガーの死でもって一件落着としていた頃、ドゥルガーとミニーはニューヨークに飛んでおり、治療を受けようとしていた。

 特に第二の作り話の方は、この映画の核となる部分であるが、前作ほどの衝撃はなかった。シリーズの特徴がある程度分かってしまっているので、どこかに作り話があるのではないかと身構えて観てしまっていた。しかも、自殺を偽装するというプロットは使い古されているので、目新しさもなかった。よって、「Kahaani 2」が前作以上の評価をされることは少ないだろう。

 いまいち不明のまま終わったのは、インダルジートとドゥルガーの関係である。指名手配犯となったドゥルガーがチャンダンナガルに住んでいたのは元夫を頼っていたためとされていた。果たしてインダルジートはドゥルガーを支援していたのか。もしくは交通事故をきっかけに再会したのか。また、カリンポンでの事件から8年も経った後にドゥルガーがチャンダンナガルで目撃されたと報告されるのも都合が良すぎる。細部を見て行くと粗がありそうだ。

 主演のヴィディヤー・バーランは安定の演技であった。最後、発狂した振りをするシーンが一番の見せ場だった。アルジュン・ラームパールは下っ端警官にしてはハンサム過ぎるのが玉に瑕だが、彼が庶民的な生活を送っている様子は何だかほのぼのとした。

 前作「Kahaani」では、シャーシュワタ・チャタルジー演じる殺し屋がいい味を出していた。普段はしがない保険屋をしているが、依頼があるとそつなくターゲットを殺す冷酷な殺し屋である。「Kahaani 2」では、女殺し屋が登場したが、あまり出番がなく、あっけなく殺されてしまった。

 舞台となったチャンダンナガルはコルカタの北にある町の名前である。かつてはフランス東インド会社の商館が位置するフランス領だった特別なエリアだ。なぜこの町が映画の舞台に選ばれたのかは分からないが、警察の赴任地としては左遷扱いの場所のようであった。

 「Kahaani 2: Durga Rani Singh」は、2012年の傑作「Kahaani」の続編だが、前作との共通点には乏しい。スジョイ・ゴーシュ監督、ヴィディヤー・バーラン主演という点が共通しているくらいだ。原作は衝撃のラストが話題だったが、それを越える衝撃は用意されていなかった。しかしながら、良質のサスペンス映画であることには変わりない。