Force 2

3.0

 20世紀のヒンディー語映画には題名に「~2」と付く続編映画が存在しなかったのだが、21世紀に入り、ハリウッド映画の強い影響を受けるようになって、その慣行が定着した。ただ、インドならではの現象と言っていいだろうが、「~2」と付いても、それが前作とつながりのある映画だとは限らない。むしろ、つながりのある映画の方が少ないのである。その点、2016年11月18日公開の「Force 2」は、前作「Force」(2011年)の正統な続編映画であり、稀な例だ。ただ、前作のジャンルは警察映画だったが、今回はスパイ映画に変わっている。

 プロデューサーはヴィプル・アムルトラール・シャーで変わっていないが、監督はニシカーント・カーマトからアビナイ・デーオにバトンタッチした。主演はジョン・アブラハムが続投しているが、前作でジェネリア・デスーザ演じるヒロイン、マーヤーが死んでいるため、ヒロインはソーナークシー・スィナーに交替している。悪役は、前作ではヴィデュト・ジャームワールが担当していたが、本作では「Mardaani」(2014年)の悪役としてインパクトを残したターヒル・ラージ・バスィーンが演じている。

 他に、ナレーンドラ・ジャー、アーディル・フサインなどが出演している。また、前作のヒロイン、ジェネリア・デスーザをはじめ、ラージ・バッバル、ボーマン・イーラーニー、フレディー・ダールーワーラーが特別出演している。

 時は2016年。中国に潜伏していた、インドの対外諜報機関RAWのエージェントが次々に殺される事件が起きた。エージェントの一人、ハリーシュ(フレディー・ダールーワーラー)が死の直前に、インドに住む親友の警察官ヤシュワルダン警視監、通称ヤシュ(ジョン・アブラハム)に送った情報から、ブダペストのインド大使館内に内通者がいることが分かる。ヤシュは、RAWの東欧担当カマルジート・カウル、通称KK(ソーナークシー・スィナー)と共にハンガリーに飛ぶ。

 ところが、到着早々、二人は暗殺されそうになる。ヤシュとKKは別々の手法で内通者を探し、シヴ・シャルマー(ターヒル・ラージ・バスィーン)と特定する。シヴは一度捕まり、インドに送還されそうになるが、死を偽装して逃亡する。

 ヤシュとKKは、情報提供者のマルティネスからシヴの居場所を聞き、ブダペスト郊外の村に向かうが、シヴを取り逃がす。さらに二人はマルティネスから、シヴがベルリンへ向かうとの情報を入手する。だが、ヤシュの直感ではそれは嘘の情報だった。ヤシュは独自の情報網から、シヴが偽のIDを使っていることを突き止める。彼の本名はルドラ・プラタープ・スィン。中国に潜伏していたRAWエージェント、カラン・プラタープ(ボーマン・イーラーニー)の息子だった。カランは中国政府に身元がばれたために殺され、インドは彼をRAWエージェントとは認めず、売国奴の汚名を着せた。それを苦にルドラの母親は自殺してしまい、ルドラは復讐を誓ったのだった。

 ルドラのターゲットは、4年前に報道陣の前でカランを売国奴と宣言した政治家で、現在は人材開発省の大臣をするブリジェーシュ・ヴァルマー(アーディル・フサイン)であった。ブリジェーシュはブダペストを訪問していた。ヤシュは演説の会場に駆けつけ、ルドラを見つけ出し、彼を殺す。その代わり、ヴァルマー大臣には、今までインド政府が見捨てたRAWエージェントたちの名誉を回復する役目を果たした。

 ヒンディー語映画にRAWのエージェントが登場すると、工作の対象はパーキスターンであることが多い。だが、「Force 2」では珍しく、中国との水面下でのスパイ合戦が描かれていた。映画によると、インドは中国に20人のスパイを送り込んでいる。中国は、インド内部の内通者からスパイの情報を聞き出し、一人一人抹殺し始めた。それに危機感を強めたRAWが、内通者のあぶり出しに乗り出したというのが、「Force 2」の導入部となっている。

 とは言え、RAWのエージェントを救うために八面六臂の活躍をするのはRAWエージェントではない。一介の警察官、ヤシュワルダン警視監である。もちろん、彼が主人公である。一応、その理由付けとして、中国で殺されたRAWエージェントの一人が彼の親友だったとなっていたが、だからと言ってスパイとしての訓練を受けていない人物がこのような任務を担うのは強引過ぎる筋書きであった。

 また、ヤシュの上司として、RAWエージェントのカマルジート・カウルが同行するが、彼女は過去のトラウマから人に向けて銃を発砲できないという、困ったエージェントだった。さらに、内通者シヴ・シャルマーの元婚約者である。これも強引な設定であった。

 アクションシーンがメインの映画であり、ストーリーは強引ながら単純明快で分かりやすい。とにかくジョン・アブラハム演じるヤシュが無敵の強さを誇る上に頭が切れて直感が過度に鋭く、彼に任せておけば何でも解決してしまう。一方、ソーナークシー・スィナー演じるKKは単なる噛ませ犬だった。

 序盤の、ブダペスト市街地の屋上を走り回るチェイスシーンも良かったが、終盤、ブリジェーシュ・ヴァルマー大臣が狙撃された後の乱闘シーンからは映像に工夫を感じた。多くのシーンがヤシュの1人称視点で映し出され、あたかも3Dゲームのようだった。

 エンドクレジットで流れる曲「Rang Laal」では、ジョン・アブラハムが語りを担当している。映像の中ではジョンとソーナークシーが歌っているように見えたが、実際に歌ってはいないようだ。映像の中に、2016年9月29日にインド軍がパーキスターン領内のテロ拠点に対して行ったサージカル・ストライクについての言及があった。「Uri: The Surgical Strike」(2019年)で映画化もされているが、2016年11月18日公開の「Force 2」で既に言及が見られるのは驚きだ。もちろん、映画の仕上げをしている段階で起こった出来事であろうから、サージカル・ストライクを受けて急遽それに触れることにしたのだろう。前述の通り、「Force 2」は対中国の諜報活動の映画であったが、エンディングでパーキスターンに対して、「インドはもう黙っていない」という勇ましいメッセージが込められていた。

 とは言え、映画の主要なメッセージは、今までインドの国益のために諜報活動に従事する中で殉職した名もなきRAWエージェントたちの名誉を回復するべきだというものだった。RAW映画としては変わったメッセージを発信する作品と言える。

 「Force 2」は、2011年に公開された警官アクション映画「Force」の続編である。ジョン・アブラハム主演という点は変わらずだが、今回はスパイ・アクション映画に様変わりしている。とにかくジョンのアクションとヒーロー振りを楽しむ映画である。アクションシーンには光るモノがあったが、それ以外の部分は強引かつ単純明快である。興行的にも成功しなかったようである。