Kyaa Kool Hain Hum 3

1.5
Kyaa Kool Hain Hum 3
「Kyaa Kool Hain Hum 3」

 ヒンディー語映画界には、シリーズ化されているコメディー映画がいくつかある。「Golmaal」シリーズ、「Housefull」シリーズ、「Masti」シリーズなどなどである。その中でも、もっともお下劣なコメディー映画シリーズが「Kyaa Kool Hain Hum」シリーズである。第1作「Kyaa Kool Hai Hum」(2005年)、第2作「Kyaa Super Kool Hain Hum」(2012年)と作られ、第3作「Kyaa Kool Hain Hum 3」は2016年1月22日に公開された。題名は「僕たちはクールじゃないか」という意味である。

 「Kyaa Kool Hain Hum」シリーズは、作品ごとに監督が異なっており、第3作の監督はウメーシュ・ガードゲーとなっている。「Main Tera Hero」(2014年)などで助監督を務めて来た人物だが、監督としてのキャリアはまだあまりない。一方、プロデューサーは一貫してエークター・カプールとその母親ショーバー・カプールである。ショーバーの息子でエークターの弟であるトゥシャール・カプールのために作られているシリーズのようなものだ。

 前2作の主演はトゥシャール・カプールとリテーシュ・デーシュムクだったのだが、本作ではトゥシャール・カプールとアーフターブ・シヴダーサーニーになっている。とは言え、リテーシュも特別出演しており、なぜ彼が外れたのかはよく分からない。ヒロイン扱いはマンダナー・カリーミー。イラン人女優であり、ヒンディー語の台詞は吹き替えられていた。他ジゼル・タクラール、メーグナー・ナーイドゥ、ポーランドとドイツの国籍を持つクラウディア・シエスラなどの女優が登場するが、ほとんど無名である。つまり、女優のキャスティングに予算はつぎ込まれていない。

 他に、クルシュナ、ダルシャン・ジャリーワーラー、シャクティ・カプール、スシュミター・ムカルジー、ラザーク・カーンなどが出演している。また、ガウハル・カーンがアイテムナンバー「Jawaani Le Doobi」でアイテムガール出演している。

 大企業の社長PKレーレー(シャクティ・カプール)の御曹司で純朴な青年カナイヤー(トゥシャール・カプール)は、仕事上の失敗により父親から勘当され、プレイボーイのロッキー(アーフターブ・シヴダーサーニー)と共に、共通の友人ミッキー(クルシュナ)の誘いでバンコクに降り立つ。ミッキーは、インド映画をパロディーしたポルノビデオを作っており、カナイヤーとロッキーにその仕事をさせる。

 カナイヤーはバンコクでシャールー(マンダナー・カリーミー)という美女と出会い、恋に落ちる。もちろんシャールーには仕事のことは伏せていた。いよいよ結婚となり、シャールーは父親を家族と会わせるように言ってくる。慌てたカナイヤーは、ロッキー、ミッキー、ポルノ俳優たちを家族に仕立てあげる。

 シャールーが父親スーリヤ・カールジャティヤー(ダルシャン・ジャリーワーラー)と共にカナイヤーを訪ねてやって来る。ところが手違いからミッキーとロッキーが二人ともカナイヤーの父親として登場してしまった。しかも、ロッキーが余計なことをしたために、インドからカナイヤーの実の父親PKと継母(メーグナー・ナーイドゥ)までやって来てしまう。また、スーリヤの妹で唖のスィンドゥール(スシュミター・ムカルジー)もやって来る。カナイヤーは何とか取り繕う。

 翌日、両家のメンバーでビーチにピクニックに行く。そこでカナイヤーが女装し、ロッキー扮する第二の父親の恋人として皆の前に現れるが、それがさらにピンチを招く。また、カナイヤーとロッキーがポルノビデオに出演していることがPKやスーリヤにばれてしまい、大混乱となるが、最後は丸く収まり、めでたくカナイヤーとシャールーは結婚することになる。

 「Kyaa Kool Hain Hum」シリーズは、「Masti」シリーズと並び、ヒンディー語映画界の下ネタ満載コメディー映画群を形成している。元来、インドでは下品な笑いは男性を中心に好まれるものだが、単に下ネタを連発していれば映画はヒットするかと言えばそういう訳でもなく、やはり成功には優れた脚本と演技が必要となる。

 「Kyaa Kool Hain Hum」の第1作と第2作はヒットとなり、それ故に第3作が作られたのだと思われるが、残念ながらこの「Kyaa Kool Hain Hum 3」は前2作と比較しても質の低い映画に留まっていた。脚本がお粗末だった上に、お笑いシーンにも斬新さは皆無だった。過去のヒンディー語映画のパロディーが多用されていたが、むしろパロディーに頼るより他にネタがなくなったと感じられるほど、苦し紛れのギャグになっていた。ヒロインにスターパワーがない上に、取って付けたようなセクシーさしかなく、この点でも観客を引きつけることに失敗していた。

 「Masti」シリーズにも言えることだが、第1作が作られた頃とスターの勢力図が変わっているため、第1作の主演をそのまま使い続けることで、現代の観客にアピール力がなくなることがある。「Kyaa Kool Hain Hum」シリーズは、リテーシュ・デーシュムクとトゥシャール・カプールの映画だった。確かに第1作が公開された2005年頃には、二人とも若手男優として注目を浴びていた。だが、あれから10年以上が過ぎ去った今、二人ともトップスターにはなれないことが確定してしまっている。リテーシュの方は、まだ「Ek Villain」(2014年)で悪役として新たな可能性を切り拓いたが、トゥシャールは誰がどう見ても落ち目のスターであり、彼を「スター」と呼ぶことすら憚られる。姉のエークター・カプールがプロデューサーであるため、彼を切れなかったのは分かるのだが、リテーシュの代わりに起用したアーフターブ・シヴダーサーニーにしても、既にピークを過ぎた男優であり、この二人が主演のコメディー映画ではあまりに魅力に欠けた。

 「Kyaa Kool Hain Hum」シリーズは下品なコメディー映画という評判が既に立ってしまっているため、ヒロイン選びにも難航したと思われる。名前のあるヒロイン女優は絶対に出演したがらないだろう。セクシーな演技ができるというだけで選ばれた、ほとんど無名の女優たちが多数出演しているだけで、そこに何の集客力も感じられなかった。一人、気を吐いていたのは、唖の叔母を演じていたスシュミター・ムカルジーである。彼女とパグ犬のコンビは独創性があった。

 これでダンスシーンが良ければ救われていたのだが、そこまで大したものでもなかった。曲数は少ないが、ひとつひとつのダンスシーンが長めで、逆に冗長な印象を与えてしまっていた。

 「Kyaa Kool Hain Hum 3」は、お下劣なギャグで人気を博した「Kyaa Kool Hain Hum」シリーズの第3作である。だが、主演の交替がある上に、ギャグの切れが悪く、スターパワーもヒロインのアピールもない。全くクールではない映画に成り下がってしまっており、続編モノのジンクスに着実にはまってしまった映画の一本である。下ネタ好きな人にすら勧められない映画と言わざるを得ない。