Welcome 2 Karachi

3.5

 インドにとってパーキスターンは近くて遠い国である。元々同じ国であったし、隣接しているため、お互いによく知り尽くしている国である一方、インド人がパーキスターンへ行こうとすると、厄介な手続きを経ないとヴィザが下りない。インドにとって、パーキスターンはそんな特別な国であるため、パーキスターンがインド映画に登場することは多い。

 2015年5月28日公開のヒンディー語映画「Welcome 2 Karachi」は、題名の通り、2人の主人公が誤ってパーキスターンのカラーチーに上陸してしまうというコメディー映画である。プロデューサーはヴァース・バグナーニー。監督は「Khiladi 786」(2012年)のアーシーシュ・R・モーハン。主演は、プロデューサーの息子ジャッキー・バグナーニーと、コミックロールに定評のあるアルシャド・ワールスィー。他に、ダリープ・ターヒル、パヴァン・マロートラー、アドナーン・シャー、イムラーン・ハスニー、クブラー・カーン、アユーブ・コーソー、そして米国人女優ローレン・ゴットリーブなどが出演している。

 グジャラート州ジャームナガル在住のシャンミー(アルシャド・ワールスィー)とケーダール(ジャッキー・バグナーニー)は、ボートに乗って外洋に出たところ、嵐に遭って沈没してしまい、カラーチーの砂浜に打ち上げられる。その海岸では爆弾テロがあり、二人も被害者と間違われ、病院に担ぎ込まれる。

 目を覚ました二人は、自分たちがカラーチーにいることに気付き、驚く。インド総領事館に助けを求めようとするが、カラーチーの総領事館は閉まっていた。その内、彼らは地元のマフィア、アズハル・バローチ(アドナーン・シャー)の邸宅に連れ去られる。ケーダールの父親(ダリープ・ターヒル)が身代金を払ったため、二人は解放され、インドに送還される予定だったが、途中でトラブルに出くわし、なぜかアフガーニスターン国境のワズィーリスターンにあるターリバーンの隠れ家に辿り着いてしまう。二人はターリバーンの指導者アーガー・カーン(アユーブ・コーソー)に迎えられる。

 アーガーは携帯電話型の起爆装置を使って爆弾テロを起こそうとしていた。しかし、二人はそれを本物の携帯電話だと勘違いし、アーガーから盗んで使用する。それによって隠れ家で大爆発が起き、テロリストたちが一網打尽となる。その爆発を発見した米国軍は、爆発現場近くにいたシャンミーとケーダールを基地に連行する。だが、二人が状況をよく把握していなかったため、ターリバーンの隠れ家爆破の手柄を横取りすることにした。そして、二人をいい加減な場所に置いて来る。

 しかしながら、米国軍内に不正が許せない軍人がおり、ターリバーンの隠れ家爆破を行った真の英雄の存在を暴露する。こうしてシャンミーとケーダールはパーキスターンの英雄に祭り上げられる。また、与党政治家が二人を、秘密の作戦に従事していたパーキスターン軍人だと発表してしまった。こうして二人は軍人として記者会見に臨まされる。

 ようやくインドに帰れることになった二人だったが、空港で、かつて会ったことのあるテロリストを発見してしまう。そのテロリストはパイロットに変装して飛行機に乗り込もうとしていた。そこで二人はテロリストを飛行機まで追い掛け、乗客を救い出す。

 安っぽいコメディー映画だったが、とことん勘違いして周囲を引っかき回す主人公二人の行動があまりに面白おかしく、意外に楽しめた。本当にパーキスターンでロケが行われているのではないかと思うほど、映像にパーキスターンらしさが出ていたが、実際は、なんと英国のバーミンガムで大半のロケが行われたと言う。また、クライマックスの空港でのシーンでは、本物の飛行機も出て来ており、部分的には予算が掛けられた映画だとも感じた。

 インド人がある日突然パーキスターンに上陸してしまったらどうなるか。同じ人種で言葉も通じるため、パッと見はばれないし、日常生活でもあまり困らないだろうが、やはりインド人が何の目的もなくその辺りをふらついているという状況はあまりないと思われる。しかも、主人公のシャンミーとケーダールはパスポートもヴィザも持たずにパーキスターンに来てしまった。そんなことがばれたら、十中八九スパイと間違われるに違いない。パーキスターンの牢屋には、スパイとして逮捕されたインド人が多数いると言われている。そんなやばいシチュエーションに置かれながらも、二人が天然ボケをかまして危機をくぐり抜けて行く様が面白かった。

 インドとパーキスターンには同じ地名がいくつかあり、時々このような映画ではネタになる。よく使われるのがハイダラーバードだ。インドにもハイダラーバードという都市があり、パーキスターンにもハイダラーバードという都市がある。だが、「Welcome 2 Karachi」では、グジャラートがネタに使われていた。やはり、インドのグジャラートと言えばグジャラート州だが、パーキスターンでグジャラートと言えば、パンジャーブ州にある都市の名前である。

 アルシャド・ワールスィーは既に確立したコメディアン俳優であるため、彼のコミックロールが面白いのは当たり前となっている。今回注目したいのはジャッキー・バグナーニーの方だ。多くの映画をヒットさせて来た敏腕プロデューサー、ヴァース・バグナーニーの息子で、「Kal Kissne Dekha」(2009年)で本格的な俳優デビューしたが、ヒット作には恵まれておらず、低迷している男優である。主に父親のプロデュースする作品に出演しているだけなのは、彼の低迷振りを如実に表していると言えるだろう。だが、「Welcome 2 Karachi」では、かなり吹っ切れたコメディアン振りを発揮しており、好感が持てた。

 安っぽい映画ながら、インド映画らしく、ダンスシーンには相対的に力が込められており、冒頭の「Boat Ma Kukdookoo」から終盤のアイテムナンバー「Shakira」まで、派手で色気のあるダンスシーンが目白押しだった。

 「Welcome 2 Karachi」は、2人の天然ボケなインド人が誤ってパーキスターンのカラーチーに上陸してしまい、様々な騒動に巻き込まれる内に最後はパーキスターンの英雄になってしまうというドタバタコメディー映画である。興行的には鳴かず飛ばずだったようだが、主演二人の踏ん張りもあって、意外に面白い映画になっている。観て損はない映画である。