Dolly Ki Doli

3.0

 泥棒や詐欺師のような軽犯罪者を主人公にした、いわゆる「コン」モノの映画はインド人の大好物だ。頭脳を使って稼ぐことが褒めそやされる国民性や、騙された者をせせら笑う「他人の不幸は蜜の味」的な悦楽があるのだろう。インド人の人生の中でもっとも巨額の金が動く結婚にまつわる詐欺を描いた映画もいくつかある。「Humraaz」(2002年)や「Bachke Rehna Re Baba」(2005年)などである。

 2005年1月23日公開の「Dolly Ki Doli」も、結婚詐欺モノのコメディー映画だ。監督は新人のアビシェーク・ドーグラー。プロデューサーはアルバーズ・カーンとマライカー・アローラー・カーン。主演はソーナム・カプール。他に、ラージクマール・ラーオ、プルキト・サムラート、ムハンマド・ズィーシャーン・アユーブ、マノージ・ジョーシー、ヴァルン・シャルマー、ラージェーシュ・シャルマー、アルチャナー・プーラン・スィンなどが出演している。また、サイフ・アリー・カーンが特別出演、マライカー・アローラーがアイテムソング「Fashion Khatam Mujhpe」でアイテムガール出演している。

 題名は「ドリーの輿」という意味。「ドリー」という名前と、「輿」という意味のヒンディー語「ドーリー」を掛けた言葉遊びだ。パンジャービー語映画「R.S.V.P.: Ronde Saare Vyah Picho」(2013年)のリメイクである。

 ソーヌー(ラージクマール・ラーオ)はドリー(ソーナム・カプール)という美女と出会って恋に落ち、とんとん拍子に結婚が決まる。ところが結婚式の夜、ドリーはソーヌーや家族に睡眠薬入りの牛乳を飲ませ、一切合切を持ち去ってしまった。そう、ドリーは結婚詐欺師の一味だったのである。

 ドリーはラージュー(ムハンマド・ズィーシャーン・アユーブ)、ドゥベー(マノージ・ジョーシー)などの仲間と共に、デリー周辺で結婚詐欺を繰り返していた。また一人、マンジョート(ヴァルン・シャルマー)という若者がドリーの毒牙にかかり、家から金目の物を全て奪われてしまった。

 デリー警察のロビン・スィン警部補(プルキト・サムラート)はドリーの捜査に乗り出す。ソーヌーとマンジョートも手を組むことになった。ドリーの一団はウダイプルに逃げ、地下に潜る。だが、地元の王族アーディティヤ・スィン(サイフ・アリー・カーン)が嫁探しをしていると聞きつけ、彼の宮殿に現れる。だが、これはロビン、ソーヌー、マンジョートの罠だった。ドリーたちは逮捕されてしまう。

 ところが、実はロビンはドリーの昔の恋人だった。ロビンはドリー以外の仲間を全て釈放し、ドリーを登記所に連れて行って結婚する。しかし、その翌日、ドリーはやはり逃亡する。仲間と共にチェンナイへ向かった。

 上映時間が1時間半ほどの、インド映画としては非常に短い映画だった。なぜこんなに短く作ったのか分からないが、短い故によくまとまっていた訳でもない。むしろ、もっと時間を使ってストーリーを引き延ばした方がいい作品になった可能性はあった。終わり方があまりに尻すぼみなのである。

 ほとんどナンセンスなコメディー映画だったので、細かい部分に突っ込みを入れるのは避けるが、ひとつだけ突っ込むとすれば、こんなにうまく結婚詐欺が行くはずない、ということである。インドでは花嫁側から花婿側に持参金が渡されるため、美女を使って結婚詐欺をするのは、通常コストパフォーマンスが悪い。持参金の受け渡しは法律で禁止されているので、表向きはないことになっているのだが、裏では様々な形で多額の金品が花婿側に供与される。「Dolly Ki Doli」では、花嫁側(詐欺師の一団)が一旦持参金を渡した後、それごと花婿側の財産をかすめ取っていたため、赤字にはならないだろうが、実際にはそんなに簡単に盗めるはずはないので、「Dolly Ki Doli」の結婚詐欺を実際に真似しようと思ったら、結構ハイリスクローリターンな稼業になるのではないかと思う。

 この結婚詐欺でひとつポイントになっているのは、花嫁であるドリーが、花婿のみならず、義父母にも牛乳を飲ませることだ。その中には睡眠薬が入っている。インドでは、初夜に花嫁が花婿に牛乳を飲ませる習慣がある。精力を付けるためである。それを使った詐欺なのだが、家族全員に牛乳を飲ませるのはイレギュラーである。

 もしかしたらドリーとその一味による結婚詐欺だけにフォーカスしていれば、突き抜けたコメディー映画になったかもしれないが、ラージューがドリーに想いを寄せたり、ドリーの元恋人ロビンが登場したりと、映画の中心議題がぶれていたので、何だか雑然とした映画になってしまっていた。

 アルバーズ・カーンとマライカー・アローラー・カーンの夫妻がプロデュースした映画であるということは、「Dolly Ki Doli」は「Dabangg」(2010年)などと同様にサルマーン・カーンのグループによる映画ということだ。主演級の役を演じていたプルキト・サムラートは、この映画の公開前にサルマーンの義理の妹ローヒラーと結婚しており、サルマーンの一族に属することになった。マライカーがアイテムガール出演していたのは上述の通りである。肝心のサルマーン自身は写真のみの登場に留まっていた。

 プルキト・サムラートやラージクマール・ラーオなど、多数の男優が出演する中で、ヒロインは実質ソーナム・カプール一人で、彼女が主演と言って差し支えない映画だった。ソーナムの演技は安定性に欠くことが多く、この映画でもいいときと悪いときがはっきり分かれていた。愛想笑いをしたり、取り繕ったような演技をしたりするのはうまいが、役の中に入り込むような演技はまだ苦手と見える。

 「Dolly Ki Doli」は、ソーナム・カプールが結婚詐欺師を演じるコメディー映画である。1時間半ほどの短い上映時間の中で、思わず吹き出すようなシーンもいくつかあるのだが、終盤をもっと引き延ばして丁寧に作っても良かったのではないかと感じた。なぜこんなに短くしたのか謎である。