Jannat 2

3.5

 ヒット映画の続編が作られることは日米で珍しくないが、ヒンディー語映画界では比較的最近始まったパターンである。変わっているのは、「2」「3」と付いているのに前作とストーリー上・キャラクター上のつながりがないシリーズがあること。2012年5月4日公開の「Jannat 2」も、前作「Jannat」(2008年)とは全く関係ないストーリーの映画である。共通するのはクナール・デーシュムク監督、イムラーン・ハーシュミー主演という点のみ。「Jannat」はクリケット賭博という今まであまり触れられて来なかった問題を取り上げた作品で、しかもイムラーン節が程よく利いていてヒットとなったが、「Jannat 2」は武器密売という多少陳腐なテーマだ。

監督:クナール・デーシュムク
制作:マヘーシュ・バット
音楽:プリータム
歌詞:サイード・カードリー、サンジャイ・マースーム、マーユル・プリー
振付:ラージュー・カーン
衣装:リック・ロイ
出演:イムラーン・ハーシュミー、ランディープ・フッダー、イーシャー・グプター(新人)、マニーシュ・チャウダリー、ムハンマド・ズィーシャーン・アユーブ、スミート・ニジャーワン、ローヒト・パータク、アーリフ・ザカーリヤーなど
備考:DTスター・プロミナード・ヴァサントクンジで鑑賞。

 ソーヌー・ディッリーKKC(イムラーン・ハーシュミー)はデリー在住の武器売人であった。相棒のバッリー(ムハンマド・ズィーシャーン・アユーブ)は頼りにならない奴だったが、二人は親友だった。ソーヌーは女医ジャーンヴィー(イーシャー・グプター)に一目惚れし、病院存続のために寄付金を集める彼女に言い寄っていた。

 一方、プラタープ・ラグヴァンシー警視監(ランディープ・フッダー)は、銃器を持った暴徒に襲われて妻を失った悲しい過去を持っており、武器密売を誰よりも憎んでいた。プラタープはソーヌーを捕まえ拷問し、武器の密輸を行うガッファールをおびき出させることにした。だが、ガッファールは逃亡中に車に轢かれて死んでしまう。また、ソーヌーは警察に捕まって半年ほど刑務所に入れられてしまう。

 プラタープは武器密売の大本締めを捕まえるため、刑務所から出て来たソーヌーを内偵として組織に潜り込ませることにする。ソーヌーは、ジャーンヴィーと結婚し幸せな家庭を築くため、堅気の人生を生きたがっていた。プラタープは、このミッションが終わった暁には堅気の人生を提供することを約束する。そこでソーヌーは相棒のバッリーと共に、サルファラーズ(スミート・ニジャーワン)の組織に入る。その大ボスがマンガル・スィン・トーマル(マニーシュ・チャウダリー)で、ちょうど大きな取引のためにデリーに来ることになっていた。プラタープのターゲットもこのマンガルであった。

 その間、ジャーンヴィーは果敢に自分を守ってくれるソーヌーを受け容れるようになり、遂には彼と結婚することにする。しかし、ソーヌーはジャーンヴィーに自分の本当の職業を明かさなかったし、プラタープにも口止めをしていた。ソーヌーとジャーンヴィーは裁判所に婚姻届を出す。そこへ駆けつけたのがジャーンヴィーの父親であったが、なんとそれはマンガルであった。マンガルはジャーンヴィーに内緒で武器密造・密売の仕事をしていたのだった。最初は驚いたマンガルであったが、娘婿として、また闇商売の手先として、ソーヌーを受け容れる。

 しかしながら、マンガルは組織内に警察への密告者がいることに気付き始める。サルファラーズは最初からソーヌーを疑っていたが、マンガルはソーヌーを信頼していた。また、ソーヌーも警察内にマンガルと通じている者がいると知り、プラタープに知らせる。プラタープは同僚のラージェーンドラ(ローヒト・パータク)を疑う。あるときソーヌーはプラタープと密会しているところをサルファラーズに目撃されてしまうが、プラタープはサルファラーズを捕え、連行する。また、このときたまたまバッリーが現場にいたため、マンガルはバッリーを裏切り者だと考える。バッリーはソーヌーをかばって真実を述べず、裏切り者の汚名を背負って自殺する。

 ソーヌーはプラタープとマンガルの間でいいように扱われ、親友をも失い、全てに嫌気が差していた。そこでプラタープとマンガルを放り出し、ジャーンヴィーと共に海外へ高飛びする計画を立てる。しかしそのときジャーンヴィーに武器密売をしていたことが知れてしまう。ソーヌーは、内偵としてマフィア組織に潜入していると説明し、プラタープに説明を求める。プラタープはそれを受け容れるが、その前にマンガルが行おうとしている大きな取引を急襲することにする。ソーヌーも最後の仕事としてマンガルのその取引に加わるが、警察内の密告者はプラタープが捕えていたサルファラーズからソーヌーの情報を引き出して殺していた。そしてマンガルに電話が入り、組織内の内通者はソーヌーであることを知らされてしまう。そのとき警察の急襲も入り、ソーヌーはうまく逃げ出す。ところが、マンガルと密通していたのは、他でもない、プラタープの上司(アーリフ・ザカーリヤー)であった。ソーヌーは銃弾を受け、致命傷を負う。プラタープはマンガルと上司を殺し、ソーヌーを病院に運ぶ。だが、ソーヌーは助からなかった。息を引き取る前に、ソーヌーはプラタープに、ジャーンヴィーには警察の内偵として働いていたことは言わないで欲しいと伝える。もしそれを伝えたら、ジャーンヴィーは自分の死を知ることになり、プラタープのように苦悩することになるだろうから。プラタープはそれを守り、ソーヌーの死後敢えてジャーンヴィーの家に家宅捜索に入り、ソーヌーは単なる武器密売人だと彼女に伝える。

 イムラーン・ハーシュミーらしい、アンダーグランドの狂おしいロマンスを描いた犯罪ロマンス映画であった。題名となっている「ジャンナト(天国)」という言葉が劇中に何度も登場するが、主人公ソーヌーは妻ジャーンヴィーとこの世の天国で幸せに暮らすことを夢見ており、その関係で使われることが多い。デリー界隈で暗躍していたチンピラ上がりの武器密売人ソーヌーは、美しい女医ジャーンヴィーと出会ったことで堅気の人生を望むようになり、その実現のために警察の内偵として巨大な武器密売組織に潜入する。ジャーンヴィーとも結婚するが、彼女には自分の過去や現在は絶対に明かせなかった。しかしながら、家に隠してあった武器を彼女に見つかってしまい、内偵であることを証明して疑いを晴らそうとした。しかし、ソーヌーは銃弾を受けて瀕死となり、最期にジャーンヴィーの幸せについて考える。もしソーヌーが単なる武器密売人ということになるのなら、ジャーンヴィーはつまらない犯罪者と結婚してしまったことを後悔こそすれ、彼のことなどすぐに忘れ、自分の人生を歩むことが出来るだろう。しかし、警察の内偵として一応全うな仕事をしていることが分かったならば、彼女は一生死んだソーヌーのことを想い続けて生きることになるかもしれない。それは彼女にとって幸せではない。それなら自分は単なる犯罪者ということにしてもらって死ぬ方がいいだろう。そう考えたからこそソーヌーは死ぬ間際にプラタープに、自分の正体を明かさないように頼む。そしてプラタープはその通りにする。ソーヌーのその決断には、プラタープ自身の影響もあった。プラタープは死んだ妻を今でも愛しており、酔っ払っては彼女の声が録音された留守番電話に電話をするのである。この辺りの何とも言えない狂おしさが「Jannat 2」の非常に優れた点だった。

 主人公の名前に「ディッリー(デリーのヒンディー語名)」という言葉が入っていることからも分かるように、「Jannat 2」の舞台はデリーであった。オールドデリーを中心に、カーン・マーケット、ローディー・ガーデン、ディッリー・ハート(INAマーケット前)、クトゥブ・ミーナール、ニザームッディーン廟など、デリーの様々なロケーションが登場する。特にニザームッディーン・バスティーの狭い路地を使ったチェイスシーンは非常に迫力があり、よく撮影したものだと感心した。

 イムラーン・ハーシュミーは、自身が得意とする役柄をまたも堂々と演じた。同じような役を演じ続けるとマンネリ化して行くものだが、イムラーンは不思議な魅力を持った男優で、いつも通りのイムラーンを見ると何だか安心してしまう。寅さんシリーズのように、イムラーン節というものが既に確立しており、イムラーンはそれを忠実に守って行けば、一定の人気を維持出来る便利な立場にある。もちろん、俳優としてさらなる高みを目指したいはずで、そろそろ大きな転換期がやって来るかもしれないが、ひとまず「Jannat 2」のイムラーンも良かったと言っておきたい。

 ヒロインのジャーンヴィーを演じたイーシャー・グプターは、2007年のミス・インターナショナルのインド代表で、いわゆるミスコン出身女優ということになる。本作がデビュー作である。女優としてはオーラに欠け、今後の成長には疑問符が付くが、「連続キス魔」イムラーンとのキスも怖じ気づかずにやっており、度胸はあると思われる。

 イムラーンも良かったのだが、「Jannat 2」でもっとも強烈な存在感を放っていたのは、プラタープ・ラグヴァンシー警視監を演じたランディープ・フッダーである。登場シーンのほとんどが酔っ払っており、行動が破天荒で、呂律が回らず何を言っているのか聴き取りにくいのだが、ソーヌーとジャーンヴィーのカップルに自身と自身の妻の姿を重ね合わせ、いつしか彼らを影で支える存在になっているという役。予告編ではソーヌーを中心にストーリーが巡る映画だという印象を受けていたのだが、本編を見ると明らかにプラタープの方が強烈なキャラクターで、彼がストーリーの原動力である。この映画で助演男優賞を狙えるかもしれない。

 他に良かったのは悪役マンガル・スィン・トーマルを演じたマニーシュ・チャウダリー。最近では「Blood Money」(2012年)で圧巻の演技を見せていた。悪役俳優として今後成長株の1人だろう。

 音楽はプリータム。前作「Jannat」のメロディーを引き継ぎながら、「ジャンナト」という歌詞を中心にイメージを膨らませたような曲が並ぶ。イムラーン・ハーシュミーの映画は、カッワーリー曲とセットになるとヒットするというジンクスがあり、「Jannat 2」でも「Tu Hi Mera」や「Tera Deedar Hua」など、カッワーリー・テイストの曲がいくつかある。前作ほどのアピールはないが、それでもいい曲が揃っている。

 ちなみに「Jannat 2」は年齢認証Aで、18歳未満閲覧禁止である。しかしながらそれほど際どいシーンはなかった。序盤でソーヌーが売春婦と性交するシーンがあり、おそらくそれがもっとも年齢認証に影響したのであろう。

 「Jannat 2」は、前作「Jannat」とはストーリー上・キャラクター上全く関係ないものの、前作の世界観やイムラーン・ハーシュミー節をよく守って作られており、単品でも前作と重ね合わせても楽しい狂おし系ロマンス映画となっている。特に大きな意義はない映画だが、観て損はない映画だ。