De Dana Dan

3.5

 プリヤダルシャン監督と言えば、「コメディーの帝王」と称されるほどコメディー映画を得意とする映画監督である。特に彼が監督した「Hera Pheri」(2000年)は、その後もシリーズ化されるほどの大ヒットとなった。「Hera Pheri」で主演を務めたアクシャイ・クマール、スニール・シェッティー、パレーシュ・ラーワルの三人は、続編の「Phir Hera Pheri」(2006年)でもトリオで出演し、大騒動を巻き起こした。ただし、「Phir Hera Pheri」の監督はプリヤダルシャンではなく、ニーラジ・ヴォーラーである。

 本日(2009年11月27日)より公開の「De Dana Dan」は、プリヤダルシャン監督、アクシャイ・クマール、スニール・シェッティー、パレーシュ・ラーワル主演のコメディー映画だ。「Hera Pheri」のチームが揃っており、一応「Hera Pheri 3」の扱いのようである。それだけでも期待が持てる。それに加えてヒロインはカトリーナ・カイフ。アクシャイ・クマールとカトリーナ・カイフは、ヒンディー語映画界でも有数のスクリーンカップルとなっており、「Namastey London」(2007年)、「Welcome」(2007年)、「Singh Is Kinng」(2008年)など、今まで二人で数々のヒット作を送り出して来た。つまり、「De Dana Dan」は、最高の役者が揃ったコメディー映画なのである。

監督:プリヤダルシャン
制作:ガネーシュ・ジャイン、ギリーシュ・ジャイン
音楽:プリータム
歌詞:サイード・カードリー、イルシャード・カーミル、サミール、アーシーシュ・パンディト
振付:ガネーシュ・アーチャーリヤ、ポニー・ヴァルマー、プラサンナ
出演:アクシャイ・クマール、スニール・シェッティー、パレーシュ・ラーワル、カトリーナ・カイフ、サミーラー・レッディー、ネーハー・ドゥーピヤー、アルチャナー・プーラン・スィン、チャンキー・パーンデーイ、アスラーニー、ジョニー・リーヴァル、シャラト・サクセーナー、ヴィクラム・ゴーカレー、アディティー・ゴーヴィトリーカル、シャクティ・カプール、ラージパール・ヤーダヴ、マノージ・ジョーシー、スプリヤー・カールニク、ティーヌー・アーナンド、ヒマーニー・シヴプリー、ラタン・ジャイン
備考:サティヤム・シネプレックス・ネループレイスで鑑賞、満席。

 舞台はシンガポール。ニティン(アクシャイ・クマール)は、父親の代からマダム(アルチャナー・プーラン・スィン)に仕える使用人であった。父親の死後、ニティンは、父親がマダムから借りた借金のせいで、奴隷同然の生活を送っていた。ニティンにはラーム(スニール・シェッティー)という親友がいた。中国映画の俳優になるためにシンガポールにやって来たが、今では借金を背負ってクーリエ会社で働いていた。ニティンにはアンジャリー(カトリーナ・カイフ)、ラームにはマンプリート(サミーラー・レッディー)というガールフレンドがいたが、二人とも金持ちの娘で、結婚は難しかった。

 ハルバンス・チャッダー(パレーシュ・ラーワル)は、見た目は立派な実業家であったが、実は詐欺に詐欺を重ねて金を稼いで来た大詐欺師であった。チャッダーは息子のノーリー(チャンキー・パーンデーイ)を大富豪の娘と結婚させて一獲千金を狙う。最初はアンジャリーの父親カッカル(ティーヌー・アーナンド)と縁談を進めるが、さらに大富豪のオベロイ(マノージ・ジョーシー)と知り合い、その一人娘マンプリートとノーリーを結婚させようとする。

 アンジャリーもマンプリートも他の男と結婚させられそうになり、ニティンとラームは何とか結婚できるだけの資金を手っ取り早く稼ぐことを考える。2人は、ニティンのマダムが大事にしている犬を誘拐し、身代金を巻き上げることを思い付く。ところが犬の誘拐に失敗し、勘違いからニティンが誘拐されたことになってしまう。ニティンとラームはとりあえずパンパシフィック・ホテルに宿泊し、対策を練る。アンジャリーもてっきりニティンが遂に結婚する気になったと思って、家出してホテルにやって来てしまう。

  ちょうどそのとき、パンパシフィック・ホテルには様々な人が様々な思惑と共にやって来ていた。同ホテルではノーリーとマンプリートの結婚式が行われようとしていた。結婚式には、チャッダー、ノーリー、オーベローイ、マンプリートなどの他、オーベローイの姉婿でインド大使ラーンバー(ヴィクラム・ゴーカレー)などが出席していた。チャッダーの妻(アディティー・ゴーヴィトリーカル)は、オーベローイ家からの持参金をかっさらって愛人と逃亡しようとしていた。ムーサー(シャクティ・カプール)は既婚だったが大の女好きで、何度も若い女性と結婚を繰り返していた。今日も彼は女性とホテルで待ち合わせしていた。ムーサーと待ち合わせていたのは商売女(ネーハー・ドゥーピヤー)であったが、彼はチャッダーの妻にアプローチする。だが、ムーサーの妻は度重なる夫の浮気に絶えかね、夫を暗殺することを決意する。殺しの依頼を受けた中国人マフィア(アスラーニー)は、部下の殺し屋カーラー(ジョニー・リーヴァル)をホテルに送り込む。だが、カーラーは勘違いからオーベローイを標的だと思い込み、彼を付け狙う。ウィルソン警部(シャラト・サクセーナー)は詐欺師チャッダーの逮捕に執念を燃やしていた。チャッダーの息子の結婚式がパンパシフィック・ホテルで開催されるとの情報をキャッチし、ホテルにやって来ていた。カッカルは家出したアンジャリーを探していたが、彼女がパンパシフィック・ホテルにいることを突き止め、やって来る。だが、そこで誤ってラーンバー大使を襲撃してテロリストと勘違いされてしまい、こそこそ隠れながらアンジャリーを探す。ウェイター(ラージパール・ヤーダヴ)はルームサービスの過程で以上の訳ありの宿泊客を観察する。

 マダムは最初、ニティンごときのために身代金を支払うことを拒否していたが、シンガポールのインド人コミュニティーの圧力から、仕方なく身代金を払うことを決める。それを聞いたニティンとラームはマダムに連絡を取り、身代金を受け取ることにする。しかしマダムは既に警察に通報していた。身代金を受け取りに来たニティンとラームは警察に追いかけられることになる。だが、二人が乗っていたトラックには偶然、気絶したカーラーが乗っていた。ニティンは誘拐被害者として警察に保護され、ラームは受け取った身代金と共に逃亡することに成功する。結局カーラーが誘拐犯として指名手配されてしまう。

 パンパシフィック・ホテルには、誘拐犯を追って警察やマダムがやって来る。また、中国人マフィアはニティンから死体の注文を受けており、それを届けにホテルに来ていた。ニティンはそれを自分に見せかけ、自分が死んだことにしようとしていたのだった。だが、既に身代金を手に入れていたため、もう死体は必要なかった。ニティンとラームは、アンジャリーやマンプリートと共に金を持って高飛びしようとしていた。しかし、ホテルで複雑に絡み合った人間関係に巻き込まれ、大脱走しなければならなくなる。ホテルに集まった人々は屋上までやって来るが、そこでカーラーが仕掛けていた爆弾が爆発し、屋上の貯水タンクが破裂して大洪水となる。

 大混乱の中、ニティンとラームは金が入ったスーツケースを見失ってしまう。やはり運のない人間はどんなに頑張っても貧乏人のままだと諦めかけたとき、ニティンは金の入ったスーツケースを発見する。

 典型的なプリヤダルシャン映画であった。大人数の登場人物が複雑に絡み合う中でノンストップの笑いを提供する他、クライマックスでは登場人物が総出演してハチャメチャ劇を繰り広げる。基本的に大馬鹿コメディー映画なので、こちらも馬鹿になって鑑賞することが楽しむコツであるが、映画の進展と共に人間関係はどんどんこんがらがって行くため、それを追うには一応知能を働かせていなければならない。その複雑な人間関係を上のあらすじで全て解説することはしなかったが、ハチャメチャながらも脚本に特に大きな矛盾や破綻がなかったように思われたことだけは特筆したい。もちろん肝心の笑いも保証書付き。最近のコメディー映画の中ではもっとも腹を抱えて笑うことができた。

 おそらく偶然であろうが、「De Dana Dan」は最近公開された2本の映画に少し似たシーンがあった。ひとつは「Do Knot Disturb」(2009年)である。「De Dana Dan」も「Do Knot Disturb」も基本的にホテルを舞台にしたコメディー映画であり、雰囲気が非常に似ていた。外から部屋に侵入しようとしていた人の頭上にガラス窓が落ちて来るシーンは全く同じであった。もうひとつは「Tum Mile」(2009年)である。「Tum Mile」は2005年7月26日のムンバイー大洪水を背景にしたロマンス映画であるが、「De Dana Dan」のクライマックスの洪水シーンを見て、「Tum Mile」の洪水シーンを思い起こさざるをえなかった。

 プリヤダルシャン映画にはありがちだが、ダンスシーンの挿入の仕方がこじつけがましく、雑な印象を受けた。ヒンディー語映画では、ストーリーシーンからダンスシーン、ミュージカルシーンへの移行がかなりスムーズになって来ているが、プリヤダルシャン監督はまずダンスシーンありきの強引な手法でダンスシーンを挿入していた。ただ、多くのダンスはとてもゴージャスで、映画の楽しい雰囲気をさらに盛り上げていた。

 今回アクシャイ・クマールとカトリーナ・カイフのケミストリーをあまり感じなかった。やはり登場人物の数が多いので、一人一人の出番は少なくなってしまう。しかもアクシャイがやたらとはしゃぎすぎで、一時期の覇気が衰えて来ているように感じた。しかし、ヒロインのカトリーナ・カイフは相変わらず魅力的で、どんどん上昇気流に乗っている様子であった。

 スニール・シェッティー、パレーシュ・ラーワル、アルチャナー・プーラン・スィン、ジョニー・リーヴァル、ラージパール・ヤーダヴなど、他にもいい働きをしていた俳優は多い。だが、サブヒロインのサミーラー・レッディーと娼婦役のネーハー・ドゥーピヤーは、カトリーナに格の違いを見せ付けられた形で、彼女たちのキャリアにプラスになっていなかった。

 音楽はプリータム。「Paisa」、「Bamulaiza」、「Hotty Naughty」など、思いっきり踊れる曲が多いが、むしろラーハト・ファテ・アリー・ハーンの歌う「Rishte Naate」が切ないバラードになっていていい。

 「De Dana Dan」は、典型的なプリヤダルシャン映画で、彼のコメディー映画が好きな人には自信を持ってオススメできる。完成度の高いコメディー映画が不足している2009年のヒンディー語映画界だが、この映画はその限られた作品群の中でなら上位に位置づけられるレベルのコメディー映画だ。カトリーナ・カイフ目的でも観て損はない。