Ajab Prem Ki Ghazab Kahani

3.5

 若手男優の中で急速に頭角を現して来ているのがランビール・カプールである。往年の名優リシ・カプールの息子として「Saawariya」(2007年)で鳴り物入りデビューを果たしたランビールには、当初から親の七光りと言う言葉では覆いきれないスター特有のオーラがあった。その後、「Bachna Ae Haseeno」(2008年)や「Wake Up Sid」(2009年)で主演をこなす中で、キュートさが前面に押し出されて来て、早くも独自の芸風を持つ男優に成長している。また、ランビールは運良く同世代の人気若手女優との共演もこなして来ている。「Saawariya」ではソーナム・カプール、「Bachna Ae Haseeno」ではディーピカー・パードゥコーンと共演した。そして本日(2009年11月6日)より公開の「Ajab Prem Ki Ghazab Kahani」でのお相手はカトリーナ・カイフ。今もっとも勢いのある若手俳優の共演は、それだけで胸が躍る。

 「Ajab Prem Ki Ghazab Kahani」の監督はラージクマール・サントーシー。基本的には「Khakee」(2004年)などのハードボイルドな映画を好む監督であるが、過去に「Andaz Apna Apna」(1994年)と言うコメディー映画も撮っている。新作「Ajab Prem Ki Ghazab Kahani」のジャンルはラブコメ。今年の期待作の一本である。

監督:ラージクマール・サントーシー
制作:クマール・S・タウラーニー
音楽:プリータム
歌詞:イルシャード・カーミル、アーシーシュ・パンディト、ハード・カウル
振付:アハマド・カーン
出演:ランビール・カプール、カトリーナ・カイフ、ウペーン・パテール、ダルシャン・ジャリーワーラー、ゴーヴィンド・ナームデーオ、スミター・ジャイカル、ナヴニート・ニシャーン、ミティレーシュ・チャトゥルヴェーディー、ザーキル・フサイン、サルマーン・カーン(特別出演)
備考:サティヤム・シネプレックス・ネループレイスで鑑賞、満席。

 落ちこぼれの無職プレーム(ランビール・カプール)は、同じく落伍者の友人たちとハッピークラブを創設し、そのプレジデントとして、人々をハッピーにする手助けをしていた。しかし実際はプレームのいるところにトラブルが起こっていた。

 ある日プレームはジェニー(カトリーナ・カイフ)という司書の女の子と出会い、恋に落ちる。ジェニーは実は孤児であり、ピントー家の養女として暮らしていた。プレームは最初誘拐犯と間違われるが、やがて2人の間には友情が芽生える。だが、プレームはジェニーに思いを伝えられずにいた。

 ジェニーはトニーといういけ好かない男と無理矢理結婚させられそうになっていた。そこでプレームはハッピークラブのメンバーたちとジェニーを結婚式から連れ去る。だが、ジェニーには実はラーフル(ウペーン・パテール)というボーイフレンドがいた。お人好しのプレームはジェニーをラーフルのところに連れて行く。

 ところがラーフルにも事情があった。ラーフルは地元の有力政治家ピーターンバル(ゴーヴィンド・ナームデーオ)の息子であった。折りしも選挙が近付いていた。ヒンドゥー教徒のピーターンバルは、息子がキリスト教徒のジェニーと結婚することでヒンドゥー教徒の票を失うことを何より恐れていた。だからジェニーとの結婚にも反対していた。プレームはラーフルとジェニーを送り出すが、ラーフルは父親の部下に見つかって連れ戻されてしまう。仕方なくジェニーはプレームのところに戻って来る。

 そこでプレームはジェニーがラーフルと結婚できるように作戦を考える。まずは父親に監禁されているラーフルを誘拐する。そしてラーフルが手首を切ったと言ってピーターンバルを呼び出し、ラーフルとジェニーの結婚を認めさせる。こうしてラーフルとジェニーの結婚が執り行われることになった。

 ところがピーターンバルから金を巻き上げようと躍起になっているマフィア、サージド(ザーキル・フサイン)がジェニーを誘拐し、身代金として1億ルピーを要求する。プレームは1,000ルピー札をカラーコピーして持って行き、マフィアたちと乱闘を繰り広げながらジェニーを救出する。

 こうしてやっとめでたくラーフルとジェニーの結婚式が行われようとしていた。しかし、ジェニーの心には疑問が沸き起こっていた。本当に自分を愛しているのは、ラーフルではなくプレームなのではないか。過去にプレームが見せた無私の愛情の姿が思い浮かんで来る。ジェニーは結婚式から逃げ出す。だが、プレームの行方は分からなかった。教会で祈るジェニー。そこへ、イエス・キリストに導かれてプレームがやって来る。二人はそのまま結婚することになった。

 ポスターやオープニングはコミック風の味付けがなされており、ストーリーもどことなくギャグマンガっぽい展開であった。見た目は決して派手ではなかったが、ギャグが気持ちいいほど徹底的に馬鹿を貫いており、大笑いできた。ランビール・カプールとカトリーナ・カイフのケミストリーも絶妙であった。ヒロインが鈍感過ぎたし、終わり方がパンチ力不足ではあったが、全体的にはとてもよく出来たロマンティック・コメディーだと言える。

 映画の核は無私無欲の愛情の勝利である。落ちこぼれだが他人の幸せを自分の幸せと感じることのできる心優しい主人公が、自分の愛する女性の幸せのために、他の男との結婚をひたすら支援し、それが結果的にその女性の愛を勝ち取るという筋になっている。「Singh Is Kinng」(2008年)も似た筋のコメディー映画であった。

 多少変わったギミックとなっていたのは、主人公プレームとヒロインのジェニーの両者が、動揺するとどもるという共通点を持っているという設定である。このどもりがきっかけで二人は心を通い合わせるようになり、その後もストーリーの中で動揺することがあると二人はどもっていた。こちらは「Kaminey」(2009年)に少し似た設定である。だが、どもりがその後のストーリーの重要な伏線になってはおらず、多少蛇足な設定にも思えた。

 映画の成功は、ひとつひとつのギャグとそれをスムーズにつなぐ構成能力もあるが、それらと同じくらい大きく貢献しているのが主演の二人のフレッシュな演技である。ランビール・カプールもカトリーナ・カイフも本当に楽しそうで、何にも増して映画を明るくしていた。ランビールは今までで一番弾けていたし、カトリーナも正統派ヒロインとしての貫禄を存分に発揮していた。おそらく今回カトリーナは自分の声でヒンディー語の台詞をしゃべっている。海外生活の長いカトリーナは元々ヒンディー語が得意ではなかったのだが、この映画を観る限り、かなり進歩したと言える。

 他にはダルシャン・ジャリーワーラーの演技のうまさが目立った。プレームの厳格な父親役であるが、その厳格さを笑いに変換する演技力が彼にはあった。グジャラート演劇界で活躍して来たダルシャンは、「Gandhi, My Father」(2007年)でマハートマー・ガーンディー役を演じたことがきっかけで、ヒンディー語映画への出演機会が増えた。ボーマン・イーラーニーに比肩する広い芸幅を持っているが、今回は彼のコメディアンとしての才能がいかんなく発揮されていた。

 サプライズはサルマーン・カーンの特別出演である。本人役で出演する。劇中でジェニーはサルマーンの大ファンと言う設定になっており、サルマーンに対面して大喜びするというシーンがある。そのシーンにサルマーンが実際に登場する。とてもいい奴として描写されており、興味深い。周知の通り、サルマーン・カーンはカトリーナ・カイフの実生活でのボーイフレンドであり、彼の特別出演はカトリーナの存在があったからこそ実現したのだと容易に想像できる。

 音楽はプリータム。ハッピーな映画の雰囲気に合わせ、アップテンポで明るい曲が多い。豪華な群舞「Main Tera Dhadkan Teri」、方言を効果的に使ったラブソング「Prem Ki Naiyya」など、思わず身体を動かしたくなる。他に、失恋ソング「Tu Jaane Na」が、愛の告白ができなくてもどかしい気持ちを切なく歌っていて秀逸である。

 ロケはタミル・ナードゥ州のウータカマンド(通称ウーティー)やゴアで行われたようだ。主な舞台となった町はおそらくセットであろう。トルコでのロケもあった。

 「Ajab Prem Ki Ghazab Kahani」は、多少荒削りながらポップなラブコメに仕上がっており、一級品の娯楽映画となっている。何も考えずに2時間半とにかく笑って楽しみたかったら、この映画はとてもオススメである。


https://www.youtube.com/watch?v=dbTkItiju1w