The President Is Coming

2.0

 現在インドの映画界では、昨年末公開された「Rab Ne Bana Di Jodi」(2008年)と「Ghajini」(2008年)の旋風がまだ続いている。この間いくつか映画が公開されたが、ほとんど巷の話題にも上らない小品ばかりである。その中で、2009年1月9日に公開されたインド製英語映画「The President Is Coming」だけはそこそこの評価を得ていたので、これだけは観ておこうと思い、映画館に足を運んだ。2006年のブッシュ大統領訪印を題材にしたドキュメンタリー風フィクションである。米国で大統領が交代する節目の時期に公開となったのは、きっと前からの計画なのであろう。

監督:クナール・ロイ・カプール(新人)
制作:ローハン・スィッピー
音楽:ゴールド・スポット
出演:コーンコナー・セーンシャルマー、ナミト・ダース、イラー・ドゥベー、ヴィヴェーク・ゴンベール、シェールナーズ・パテール、サトチト・プラーニク、イムラーン・ラシード、シヴァーニー・タンクセール、アーナンド・ティワーリー、ポール・ノックス
備考:サティヤム・シネプレックス・ネループレイスで鑑賞。

 2006年、米国のジョージ・ブッシュ大統領が訪印することになった。ブッシュ大統領は、訪印中にインドの若者と握手をしたいと提案して来た。そこで在ムンバイー米国総領事のマイケル・フライン(ポール・ノックス)は、大統領と握手をする若者を公募することにした。その責任者に選ばれたのが、総領事館に勤務するサーマンター・パテール(シェールナーズ・パテール)とリトゥ・ジョンソン(シヴァーニー・タンクセール)であった。

 公募により、6人のインド人が選ばれた。ベンガル人女流小説家のマーヤー・ロイ(コーンコナー・セーンシャルマー)、アメリカ英語教師のローヒト・セート(ヴィヴェーク・ゴンベール)、投資家のカピル・デーヴ(アーナンド・ティワーリー)、バンガロールのIT企業勤務ラメーシュS(ナミト・ダース)、社会活動家のアジャイ・カールレーカル(サトチト・プラーニク)、化粧品会社を経営する女社長アルチャナー・カプール(イラー・ドゥベー)であった。

 サーマンターとリトゥは、ムンバイーの総領事館に集った6人の若者をテストする。その中で、ローヒトとアルチャナーが実は恋人で、過去に2人のセックスビデオが流出していたことが分かったり、ラメーシュが実は同性愛者であることが発覚したりと、いろいろな事件が起こる。もっとも賢明に立ち回っていたのはマーヤーで、アジャイを色仕掛けで失格にさせたり、ラメーシュの同性愛趣味を暴露して失格にさせたりした。また、ローヒトとアルチャナーはよりを戻して2人で揃って失格になる。

 残ったのはマーヤーとカピルであった。カピルはリトゥを買収して何とか勝ち残ろうとするが、それがサーマンターにばれ、カピルも失格になる。こうしてマーヤーが大統領と握手することになったのだが、実は彼女は大統領暗殺をもくろむテロリストであった。サーマンターは彼女も失格にせざるをえなくなる。

 そうこうしている内に大統領が来てしまった。そこでリトゥは機転を利かし、総領事館に勤務する警備員ムハンマド・アスラム(イムラーン・ラシード)を抜擢する。

 後日談。アジャイは多国籍企業に勤務し、マーヤーは相変わらず反政府運動を続けていた。ローヒトとアルチャナーは結婚してヒンディー語の学校を運営していた。カピルは株式取引での不正がばれて服役中、ラメーシュはカモフラージュのために女性と結婚しながらも、本命の男性の恋人と緊密な関係にあった。サーマンターはPR会社を立ち上げ、リトゥはブータンでオーガニック野菜を栽培していた。ムハンマド・アスラムは大統領と握手をしたことで人生が変わり、現在モテモテの生活を送っていた。

 基本的にはコメディー映画で、所々面白いシーンもあったが、ストーリーは非常に下らなく、特別なメッセージが込められている訳でもない。通常、英語の映画はある程度の質が保証されているものであるが、このような駄作を観てしまうと、英語映画だからと言って無条件で観るという態度は改めざるをえなくなる。

 大統領と握手をするインドの若者代表を選考する過程を描いた物語であるが、選考する責任者も、候補に選ばれた人々も、まともな人間が一人もいない。それが大衆娯楽映画のように開き直った馬鹿馬鹿しさならまだ許せるが、なまじっか英語を言語とし、コジャレた雰囲気を出そうとしているため、かえって脚本の粗が目立ってしまう。結局最後に選ばれたのは警備員だったというオチだけは意外性があってよかったが、そこまでのドタバタ劇は、ヒンディー語B級コメディー映画にも劣る。

 キャストの中ではコーンコナー・セーンシャルマーがトップの知名度であろう。イラー・ドゥベーは女優リレット・ドゥベーの娘で、ネーハー・ドゥベーの妹である。シェールナーズ・パテールも主に舞台での活躍で有名な女優で、映画では神経質なおばさん役を演じることが多い。だが、他の俳優は見覚えがなかった。

 映画では、ブッシュ大統領訪印時の実際の映像が使われており、マンモーハン・スィン首相、アブドゥル・カラーム大統領(当時)などが映っていた。

 言語は完全に英語である。ヒンディー語などの現地語も所々に入っていたが、全て英語字幕が付いていたので、英語映画と言って差し支えがないだろう。

 「The President Is Coming」は、一見都市部のマルチプレックス観客層向けのコジャレた映画に見えるが、実際はほとんど見所のない駄作である。観ても時間と金の無駄になるだけだと忠告しておきたい。