Kismat Konnection

2.5

 デリーを中心に、インド中の主要都市でモダンなシネコンをチェーン展開し、インド映画の構造改革を推し進めて来たPVRグループ。だが、数年前から配給会社とのトラブルが増えて来て、期待作がPVR系列の映画館で公開されないということがしばしば起こるようになった。トラブルは興行収入のシェアを巡って起こることがほとんどだ。配給会社が映画館側に高率のシェアを要求するようになって来ており、双方の歩み寄りがうまく行かないと上映中止となってしまう。今まではインド映画界最大のコングロマリットであるヤシュラージ・フィルムスの新作がPVRで公開されないことがよくあったが、今度は同じく大手のUTVが制作・配給する「Kismat Konnection」が同じ運命を辿ることになった。UTVはPVRに対して第1週50%、第2週40%、第3週30%のシェアを要求したが、PVRはそれを拒否した。結局公開日まで妥協がなされず、当日になってPVRでの上映中止が決定された。

 というわけで、「Kismat Konnection」はサティヤム系列の映画館で観ることになった。2008年7月18日公開の映画である。

監督:アズィーズ・ミルザー
制作:ラメーシュ・タウラーニー
音楽:プリータム
歌詞:サイード・カードリー、シャッビール・アハマド
振付:アハマド・カーン
出演:シャーヒド・カプール、ヴィディヤー・バーラン、ジューヒー・チャーウラー、ヴィシャール・マロートラー、オーム・プリー、ボーマン・イーラーニー(特別出演)、シャールク・カーン(ナレーション)
備考:サティヤム・シネプレックス・ネループレイスで鑑賞。満席。

 カナダのトロント在住のラージ・マロートラー(シャーヒド・カプール)は、大学の建築学科を首席で卒業した優等生だった。卒業後、建築事務所を立ち上げるが、5年間ひとつも仕事をもらえなかった。親友で同じく建築家のヒテーン・パテール(ヴィシャール・マロートラー)と共に、仕事探しの毎日を送っていた。だが、いまいち運に恵まれなかった。

 ラージは自分の運のなさにすっかり自信を失ってしまう。だが、ある日怪しげな女占い師ハスィーナー・バノー・ジャーン(ジューヒー・チャーウラー)と出会う。ハスィーナーはラージに、彼に幸運を呼び込む1人の女性の存在を教える。

 一方、プリヤー(ヴィディヤー・バーラン)は、老人ホームで働く純粋な女の子であった。だが、老人ホームの建物がモール建設のために取り壊されることになり、プリヤーは反対運動を行っていた。ラージとプリヤーは偶然何度も出会う。最初二人は顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたが、プリヤーといるといいことが起こることに気付いたラージは、彼女こそが自分のラッキーガールだと直感する。ラージはプリヤーに対する態度を変え、二人は友人になる。

 老人ホームを取り壊してモールを建設しようとしているのは、サンジーヴ・ギル(オーム・プリー)社長の会社であった。ラージはそのモールの設計者に応募していたが、なかなか採用されそうになかった。そこで、プリヤーの幸運にあやかるため、彼女と一緒にギル社長に会いに行くことにする。プリヤーには、老人ホームとモールの両方を建設する案をギル社長に提案すると嘘を付き、実際には通常のモールのデザインを提案していた。プリヤーの存在のおかげか、ラージはギル社長に気に入られ、設計者候補リストに入れてもらえることになる。

 プリヤーにはカランというフィアンセがいた。カランはオーストラリアに転勤になった。彼はその前にプリヤーと結婚し、彼女と共にオーストラリアへ行くことを決める。プリヤーも、老人ホームはラージが何とかしてくれると信じていたので、カランのプロポーズを受け入れる。困ってしまったのはラージであった。プリヤーがいなくなったら、ツキに見放されてしまう。しかも、このときまでにラージはプリヤーに恋していた。

 ラージは再びハスィーナーに相談しに行った。ハスィーナーは、プリヤーのそばにいる一人の男がこの問題を解決すると予言した。それはカランに他ならなかった。ラージはカランが白人女性と浮気しているのを偶然目撃する。ラージは、プリヤーのことを思うと不本意ではあったが、それを使ってカランとプリヤーの結婚を破談にする。その後、ラージとプリヤーの仲は急速に接近し、二人は恋仲同然となる。また、ラージはモール設計者の最終候補に選ばれる。ライバルの設計者は、大学時代ラージに負けてばかりいたデーヴであった。

 ところが、プリヤーはラージが老人ホーム存続のためのデザインを最初から提案していなかったことに気付く。ラージはその理由を説明するが、失望したプリヤーは去って行く。老人ホームからの立ち退き命令が出され、プリヤーと住人たちは立ち退かなければならなくなる。

 ラージは会社幹部や株主を前にした最終プレゼンにおいて、今までギル社長に見せていたデザインを説明した後、真の提案として、老人ホームとモールの共存計画を持ち出す。ギル社長は怒ってラージを設計者から外す。だが、そこにはプリヤーも駆けつけていた。プリヤーは、昔から顔を知っていた老人(ボーマン・イーラーニー)と共に会場に来ていたが、その老人こそ、ギル社長の会社の創始者であった。彼はラージの案を気に入り、創始者権限を使ってラージを設計者として任命する。

 ラッキーガールという要素はユニークだったが、それ以外は無難にまとまったロマンス映画であった。このような筋の映画はヒンディー語映画界において、時限爆弾型ロマンスとして定型化しつつある。時限爆弾型ロマンスとは、自分の勝手な命名ではあるが――主人公が、嘘を付いたり真実を隠したりして(時限爆弾セット)ヒロインを口説き、それを信じたヒロインと恋仲になるが、いつしかそれを後ろめたく感じるようになる。ある日それがひょんなことからばれてしまったり、自ら明かしたりしてしまい(時限爆弾爆発)、ヒロインに嫌われてしまう。だが、主人公の誠意を再評価したヒロインが主人公を受け入れ、ハッピーエンドを迎える――ざっとこんな流れの映画のことを指す。このような映画の一番の見所は何と行っても、いつ、どのように爆弾が爆発するか、である。自分で告白するか、それとも自然にばれてしまうかでは印象が大きく異なるが、もっとも多いのは、この「Kismat Konnection」のように、自分で告白しようと思った矢先に相手にばれてしまう、というパターンであろう。時限爆弾型ロマンスのメッセージは概して、「男女が愛を育む中でお互いに嘘偽りがあってはならない、だが、たとえ相手が嘘を付いたとしても、その嘘の裏や真実の告白の中にもし誠意が見られるならば、許すだけの度量も持ち合わさなければならない」という高尚なものになる。それは、インドという国の中にあるとどうしてもマハートマー・ガーンディーの哲学の影響と考えたくなる。最近の映画の中でもっとも典型的な時限爆弾型ロマンスは「Lage Raho Munna Bhai」(2006年)である。

 時限爆弾型ロマンスでは通常、主人公はヒロインを口説くために嘘を付くが、「Kismat Konnection」は少し違った。ヒロインが自分のラッキーガールということを知っていたため、なるべく自分と一緒にいてもらうため、主人公は嘘を付くのである。だが、その関係がいつしか恋に変わって行くのはお約束である。

 もうひとつこの映画で主張されていたのは、利益追求型経済の危険性である。会社やスポンサーの利益のために、社会的弱者や自然環境などが二の次になっている残酷な現状への改革が訴えられていた。ただ、カナダが舞台になっていたため、インドの観客への呼びかけとしては弱かった。登場人物もインド人ばかりであったし、海外ロケの映画にする必要性は微塵も感じなかった。

 「Jab We Met」(2007年)の成功によって一気に貫禄を増したシャーヒド・カプールは、「Kismat Konnection」でも順調にキャリアを重ねていた。ナーバスだが根は正直な青年の役がとても似合う。対するヴィディヤー・バーランは、「Lage Raho Munna Bhai」に続いて社会奉仕系の清純な女性を朗らかに演じていた。いくつかのエモーショナルなシーンでは、彼女の持つ高い演技力・表現力を感じさせられた。

 アズィーズ・ミルザー監督は、シャールク・カーンやジューヒー・チャーウラーと共に映画プロダクション、ドリームズ・アンリミテッド(Dreamz Unlimited)を設立しており、その関係でシャールク・カーンが冒頭でナレーションをし、ジューヒー・チャーウラーが道化的な役で出演している。

 音楽はプリータム。アップテンポのダンスナンバーが多く、サントラCDはヒットしている。しかし、映画の内容と挿入歌の歌詞の関連性が他のヒンディー語映画に比べて低かった。特に、ミュージカル「Soniye Ve (Dhak Dhak Dhak)」のシーンが残念であった。カランとプリヤーのサンギート(結婚式の儀式のひとつ)において、カランがプリヤーに陳腐な愛の詩をプレゼントする。プリヤーはその詩では満足せず、もっと凝った詩を詠むようにカランに要求する。困ったカランはラージに「お前だったら何て答える?」と振る。そこでカランが歌い出すのが上記の歌である。このような展開だったら、やはり少しは凝った歌詞の楽曲にしてもらいたかったのだが、ただのパンジャービー・ダンスナンバーで歌詞にはほとんど詩情が込められていなかった。

 「Kismat Konnection」は、可もなく不可もなくの無難な娯楽映画である。後味はとても良く、観て損はないだろうが、「必見」の評価を与えるまでは行かない。現在の必見映画は依然として「Jaane Tu… Ya Jaane Na」のみである。