Return of Hanuman

1.5

 2005年に、「ラーマーヤナ」に登場する猿の将軍ハヌマーンを主人公にしたアニメーション映画「Hanuman」(2005年)が公開された。このインド初の完全国産アニメ映画は意外なヒットとなり、以降神話を題材にしたアニメ映画が作られるようになった。「My Friend Ganesha」(2007年)やインド初3Dアニメ映画「Krishna」(2007年)などがその例である。だが、「Hanuman」ほどのヒットを記録したアニメ映画はない。その「Hanuman」の続編とも言える作品が2007年12月28日に公開された。「Return of Hanuman」。だが、映画の冒頭で提示されるように、「Hanuman」の続編として作られたものではないようだ。「Hanuman」は「ラーマーヤナ」を題材にしていたが、「Return of Hanuman」のストーリーは現代を舞台にした全くのフィクションになっている。

監督:アヌラーグ・カシヤプ
制作:パーセプト・ピクチャー・カンパニー
音楽:タパス・レーリヤー
作詞:サティーシュ・ムタトカル
備考:PVRプリヤーで鑑賞。

 天界から地上の様子を眺めていたハヌマーンは、ミンクーという弱虫の男の子に注目する。ハヌマーンはブラフマー神にお願いして、地上に降臨することを許される。ただしいくつかの条件付きであった。ハヌマーンは人間の子供としてあるブラーフマンの家庭に生まれることになった。ハヌマーンの神力は封じられてしまったが、怪力だけは残されていた。また、生まれ変わったハヌマーンには尻尾が生えていた。彼はマールティーと名付けられた。

 マールティーは早速ミンクーと友達になる。ところでミンクーの村では行方不明者が多発していた。マールティーの父親も、ミンクーの父親も行方不明だった。また、村には不気味な囲い地があり、親からは絶対に向こう側に行ってはならないと注意されていた。だが、マールティーは壁を乗り越えて向こう側へ行ってしまう。そこにはマンゴー畑が広がっていたが、猛犬と悪漢たちがいた。しかし、怪力を持ったマールティーの敵ではなかった。さらに、村の近くには火山があり、今にも噴火しそうになっていた。

 ある日、ミンクーは不思議な杖を手に入れる。その杖を使うといろいろな魔法が使えるようになるのだった。ミンクーは怖くなってそれをハヌマーンに渡す。だが、その杖は悪鬼羅刹の住む星シュクラを支える重要な品物だった。シュクラ星に住むラーフとケートゥが喧嘩をしたために誤って地上に落ちてしまったのだった。ラーフとケートゥは部下をよこして杖を探させる。その過程で、地上にハヌマーンの化身がいることを発見する。

 ラーフとケートゥは地上に降り立ち、マールティーから杖を奪おうとする。だが、マールティーはハヌマーンの姿に戻って神力を取り戻し、ラーフとケートゥを撃退して杖を火山の中に放り込んでしまう。

 だが、杖を呑み込んだ火山は噴火し、怪物となって村を襲った。実はこの怪物は、人間による環境汚染が生み出したものだった。ハヌマーンは怪物の体内に入り、元の栓を抜いて、怪物を火山に吸収させる。

 ハヌマーンは、村人たちに見送られながら天界へ帰って行った。

 日本人は世界で最もアニメに対する鑑識眼の厳しい民族だと思う。大半の日本人は子供の頃からディズニー、ジブリ、TVアニメなど、いろいろな種類のアニメを見て育って来ており、自然と眼が養われている。「Return of Hanuman」のアニメのクオリティーは「Hanuman」より進歩したものの、まだまだ日本人成人の鑑賞に耐えられるような質には達していない。だが、インドを舞台にしたアニメということで、日本や欧米のアニメとは違った雰囲気があり、それは面白く映るだろう。

 弱虫の男の子をハヌマーンの化身が助けるという筋は、「ドラえもん」をはじめとした藤子不二雄アニメに影響を受けているのではないかと思えた。現在インドでは、「ドラえもん」、「パーマン」、「忍者ハットリくん」などが放映されている。また、先日公開されたばかりの「Taare Zameen Par」(2007年)とも共通点があった。

 また、悪党や悪魔たちから人間を救うという筋は、ヒーロー映画の原点である。そういう意味では、藤子不二雄アニメに「スーパーマン」、「バットマン」、「スパイダーマン」のエッセンスが混じっているように感じた。現に一瞬だけ映画中にスパイダーマンらしきものが出て来る。だが、少し考えてみればハヌマーンの方が元祖スーパーヒーローである。「Return of Hanuman」では思い切ってハヌマーンから神話の足枷を外しており、スーパーヒーローとしての性格が強くなった。新ハヌマーンを題材に、今後続編をどんどん作っていけそうだ。

 そして最後は環境保護の大切さが訴えられていた。そのため、全体的には宗教映画というよりも道徳映画としてまとめられていた。

 また、映画中には映画界やその他分野で活躍する有名人のパロディーが多数出て来た。アミターブ・バッチャンとダルメーンドラ、サンジーヴ・クマール、ラージ・カプール、ガッバル・スィン、シャールク・カーン、サチン・テーンドゥルカルなどなどである。お約束ではあるが、「マトリックス」(1999年)の有名な上体そらして弾丸避けのシーンもパロディーされていた。

 「Return of Hanuman」は完全なる子供向け映画だと言っていい。「ラーマーヤナ」から離れてしまったため、インド神話を手っ取り早く理解するツールとしては利用できない。また、インドのアニメのレベルにはまだ失望させられることだろう。