Jhoom Barabar Jhoom

2.0

 ヒマーチャル・プラデーシュ州を旅行していたため、2007年6月15日から公開された期待作「Jhoom Barabar Jhoom」を観るのが遅れてしまった。だが、ヒンディー語映画界最大の映画コングロマリット、ヤシュラージ・フィルムスが制作し、ビッグスターが共演しているにも関わらず、この映画の評判は芳しくない。どのように失敗したのだろうか?

監督:シャード・アリー・セヘガル
制作:アーディティヤ・チョープラー
音楽:シャンカル・エヘサーン・ロイ
作詞:グルザール
振付:ヴァイバヴィー・マーチャント
出演:アビシェーク・バッチャン、プリーティ・ズィンター、ボビー・デーオール、ラーラー・ダッター、アミターブ・バッチャン(特別出演)
備考:PVRベンガルール・ゴールドクラスで鑑賞。

 英国ロンドン駅。2人の男女がバーミンガムから来る列車を待っていた。一人は、インドはパンジャーブ州バティンダー生まれで、現在はインド系移民街となっているロンドンのサウスオール在住のリッキー・トゥクラール(アビシェーク・バッチャン)。もう一人は、ロンドン生まれロンドン育ちのパーキスターン人、アルヴィラー・ハーン(プリーティ・ズィンター)。二人ともフィアンセが来るのを待っていた。二人は、カフェで合い席になったついでに、お互いのフィアンセとの出逢い話を披露し始める。

 リッキーがアナイダー・ラザー(ラーラー・ダッター)と出会ったのは、パリのリッツ・ホテルだった。ちょうどダイアナ元王妃が死の直前に宿泊していたときだった。アナイダーはリッツのマネージャーであった。ダイアナ元王妃の死を知って悲しむアナイダーを慰めたことがきっかけで、リッキーとアナイダーは婚約する。

 アルヴィラーがスティーヴ・スィン(ボビー・デーオール)と出会ったのは、マダム・タッソーろう人形館だった。アルヴィラーの頭上にスーパーマンの模型が落下して来たとき、助けてくれたのがスティーヴだった。実はスティーヴは大金持ちの実業家で、二人はたちまちの内に恋に落ち、婚約した。

 だが、お互いの出逢いの話をしている内に、二人は何か惹かれ合うものを感じていた。やがて列車がやって来て、二人は別れた。ところが、リッキーが待っていたのはフィアンセではなく、仕事仲間のハフィー・バーイーだった。一方、アルヴィラーが待っていたのもフィアンセではなく、家族だった。二人とも嘘のフィアンセ話を話していたのであった。

 別れ際に電話番号を交換していたため、二人は再び会うことになる。だが、嘘を隠すためにお互いにフィアンセを用意しなければならなかった。リッキーは、売春婦のライラー(ラーラー・ダッター)にアナイダーになるよう頼み込む。一方、アルヴィラーは同僚のサットゥー(ボビー・デーオール)をスティーヴに仕立て上げる。四人はジャローカーで開催されたダンスコンペティションに参加する。

 アルヴィラーはアナイダーに闘争心を剥き出しにし、リッキーはスティーヴを冷やかす。2組のカップルはコンペティションを勝ち抜き、決勝戦で直接対決することになる。結果はリッキー&アナイダー組の勝ち。だが、リッキーもアルヴィラーも気分が晴れず、パートナーを置き去りにして会場を去る。

 翌朝、リッキーの家にサットゥーとライラーがやって来る。昨晩、どういう訳か二人は出来てしまい、ライラーは自分がアナイダーでないことを証明しに、またアナイダーになり切ったことへの報酬を回収しにやって来たのだった。リッキーはサットゥーから、アルヴィラーにフィアンセはいないことを聞く。リッキーはアルヴィラーの家へ急ぐ。

 アルヴィラーの家にはちょうどお見合い相手がお見合いに来ていた。そこへリッキーは乱入し、アルヴィラーに愛の告白をする。また、サットゥーとライラーはダンスコンペティションの賞品であるハリウッドの旅へ旅立った。

 監督は、ムザッファル・アリーの息子で、映画監督デビュー以来、「Saathiya」(2002年)、「Bunty Aur Babli」(2005年)というヒット作を立て続けに送り出して来たシャード・アリー・サイガル。今をときめくアビシェーク・バッチャンと定評のあるプリーティ・ズィンターが共演し、アミターブ・バッチャンの特別出演まである豪華な作品だったが、内容に乏しく、何が言いたいのかよく分からない映画になってしまっていた。奇をてらい過ぎて失敗した作品だと言える。

 要は、素直になれない男女が見栄を張るために偽のフィアンセを作り出して空想のノロケ話をし、後でお互いに恋に落ちてしまったことに気付きながらも必死に嘘の上塗りをするが、最後には本音を出し合って見事ゴールインという、非常に単純なストーリーである。お互いの妄想部分に多大な時間が割かれており、偽のフィアンセ話と、「もしオレたちにフィアンセがいなかったら」話の妄想で前半が終了してしまっていた。

 「Jhoom Barabar Jhoom(踊れ、踊り続けろ)」という題名の通り、歌と踊りには力が込められていた。音楽は現代的楽曲を作らせたら右に出る者のいない作曲家トリオ、シャンカル・エヘサーン・ロイで、この映画のサントラCDは買いである。振付もトップコレオグラファーの一人、ヴァイバヴィー・マーチャント。主演の四人は必ずしもダンスで売っている俳優ではないが、豪華な裏方に遜色のない踊りをしていた。前半にもいくつか歌と踊りの見所があったが、一番の目玉は終盤のダンスコンペティションのシーンであろう。現在インドでは、「Nach Baliye」など一般参加者がダンスコンペティションをするTV番組が人気だが、それを思わせるダンス合戦だった。

 主演4人の中ではアビシェーク・バッチャンが最も光っていた。海賊版DVD、アンティーク家具、ワールドカップ・チケットなど、あらゆる商売をする怪しげな男を表情豊かに演じ切っていた。ファッションもファンキーでいけていた。プリーティ・ズィンターもよかった。見栄っ張りで負けず嫌いな女性を等身大で演じていた。ボビー・デーオールとラーラー・ダッターは、事実上ダブルロールであったが、スマートに演じ分けていた。他に、ロンドン駅に生息する謎のダブルギター男をアミターブ・バッチャンが演じていた。

 映画は主にロンドンとパリで撮影されていたが、一瞬だけデリーやアーグラーも出て来る。デリーでは大統領官邸、フマーユーン廟の他、メヘラウリー考古公園が出て来ていた。アーグラーはタージマハル。そういえば「Bunty Aur Babli」でもタージマハルが出ていた。シャード・アリー監督はタージマハルが好きなのだろうか?

 「Jhoom Barabar Jhoom」は、2007年上半期最後の期待作だったのだが、見事に外してしまった。結果として、今年のヒンディー語映画界は半年経った今でもまだ大きなヒット作をほとんど生み出していないことになる。下半期にもいくつか期待作が控えているが、何となく2002年のヒンディー語映画大不作時代を思い起こさせる展開になって来ており、不安である。