Honeymoon Travels Pvt. Ltd.

3.0

 今日はPVRプリヤーで、2007年2月23日公開の新作ヒンディー語映画「Honeymoon Travels Pvt. Ltd.」を観た。ハネムーン・パッケージツアーに参加した6組の新婚夫婦の恋模様を描いたコメディー映画である。監督は女性で新人のリーマー・カーグティー、「Dil Chahta Hai」(2001年)のファルハーン・アクタル監督が共同プロデューサーを務めている。

監督:リーマー・カーグティー
制作:ファルハーン・アクタル、リテーシュ・スィドワーニー
音楽:ヴィシャール・シェーカル
歌詞:ジャーヴェード・アクタル
出演:ボーマン・イーラーニー、シャバーナー・アーズミー、カラン・カンナー、アミーシャー・パテール、ケー・ケー・メーナン、ラーイマー・セーン、ランヴィール・シャウリー、ディヤー・ミルザー、アバイ・デーオール、ミニーシャー・ラーンバー、ヴィクラム・チャートワール、サンディヤー・ムリドゥル、アルジュン・ラームパール(特別出演)など
備考:PVRプリヤーで鑑賞。

 ハネムーン・カップル向けのパッケージツアーを提供するハネムーン・トラベルズ。ムンバイー発ゴア行きのバス「ハイウェイ・クイーン」には6組のカップルが乗っていた。

 デリーから来たのはピンキー(アミーシャー・パテール)とヴィッキー(カラン・カンナー)夫婦。ピンキーは乙女チックな空想の世界に生きる女の子で、ハネムーン旅行も楽しみにしていた。だが、夫のヴィッキーはなぜか黙り込んでいた。コールカーターから来たのはパルトー(ケー・ケー・メーナン)とミリー(ラーイマー・セーン)夫婦。パルトーは保守的な男性だったが、ミリーは弾けたくてたまらなかった。ムンバイーから参加のヒテーシュ(ランヴィール・シャウリー)とシルパー(ディーヤー・ミルザー)夫婦はどうも問題を抱えていた。シルパーはヒテーシュに決して心を開こうとせず、始終黙っているか泣いていた。パールスィー(拝火教徒)のアスピー(アバイ・デーオール)とザーラー(ミニーシャー・ラーンバー)は、幼馴染みの仲良し夫婦。何から何まで息がピッタリだったが、2人にはそれぞれ秘密があった。マドゥ(サンディヤー・ムリドゥル)はロサンゼルス出身のNRI、バンティー(ヴィクラム・チャートワール)と結婚してこのツアーに参加していた。だが、バンティーもある秘密を抱えていた。これらの若い夫婦とは一線を画した老夫婦もツアーに参加していた。オスカー(ボーマン・イーラーニー)とナビード(シャバーナー・アーズミー)である。2人はそれぞれ人生の伴侶を亡くし、お互い支え合い、そして再婚した「新婚夫婦」であった。

 ゴアに着いた途端、まずトラブルが発生する。教会見学中に、バイクに乗り、拳銃を持った男(アルジュン・ラームパール)が現れる。それはシルパーの恋人だった。シルパーは男に連れられて去って行ってしまう。ショックを受けたヒテーシュはツアーから離脱する。

 ゴアのバンガローではそれぞれのカップルがそれぞれの物語を繰り広げる。パルトーはミリーの派手な行動に付いてけず、一人悩む。バンティーはマドゥに、自分がゲイであることを打ち明ける。そしてヴィッキーも同性愛の性向があり、バンティーに一目惚れしてピンキーを蔑ろにしていた。アスピーは実はスーパーマンだったが、それをザーラーに打ち明けていなかった。ある晩、遂にアスピーは彼女にそのことを打ち明けるが、なんとザーラーもスーパーウーマンであった。二人はやはり理想のカップルであった。オスカーはゴア生まれで、自分の実家をナビードに見せようとする。だが、既に実家はマンションに変わっており、近所もスッカリ変貌していた。しかもそこで彼は娘と出会う。娘は父親の再婚を認めておらず、不良少女となっていた。だが、ナビードは彼女を優しく受け容れ、最後に三人は一緒にムンバイーに帰ることになる。

 ゴア滞在も終了し、一行はムンバイーへ向かう。その途中、シルパーとその恋人がマフィアに追われているところに出くわす。駆け落ちしたことを怒ったシルパーの父親が送り込んだのだった。だが、アスピーの一吹きでマフィアたちは吹っ飛び、二人も一緒にムンバイーへ戻ることになった。

 若手俳優、二流俳優、脇役俳優総出演のオムニバス形式映画。複数の小話が絡み合って1つの映画になっていた。一方でスーパーマンが登場したり、一方で乙女の夢の世界が描かれたり、また一方で夫婦の現実が提示されたりと、不思議な構成になっていたが、普通に楽しめた映画であった。

 ヴィッキーとピンキー、バンティーとマドゥの小話は、ヴィッキーとバンティーの同性愛が発覚することで収拾不可能となっていたきらいがあったが、それ以外の小話は簡潔にかつ的確に収まっていた。特にパルトーとミリー、オスカーとナビードの小話が秀逸であった。アスピーとザーラーの小話は、二人ともスーパーマン/スーパーウーマンだったというかなりぶっ飛んだオチだったが、「Krrish」(2005年)など、インドにもスーパーヒーローが誕生するご時勢なので、大目に見ておくべきであろう。それらの新婚カップルの小話に加え、運転手の甥がドイツ人女性観光客と恋に落ちて逃げてしまうという小話も挿入されていた。

 「Honeymoon Travels Pvt. Ltd.」はよく見るとアクタル家のホームプロダクションのようになっている。プロデューサーはファルハーン・アクタルであるし、作詞家はその父ジャーヴェード・アクタルであるし、その妻のシャバーナー・アーズミーが出演をしている。シャバーナー・アーズミーは、若手俳優たちに囲まれながら、貫禄の演技を見せつけていた。特にオスカーのウルドゥー語彙の発音を矯正するシークエンスが憎かった。ガーリブの「ガ」、イジャーザトの「ザ」など、一般のインド人には難しい発音となっており、オスカーもなかなかうまく発音できていなかった。オスカー役のボーマン・イーラーニーもシャバーナーに負けないぐらいの老練な演技を見せていた。

 それ以外の俳優の中では、ベンガル人パルトーを演じたケー・ケー・メーナンがよかった。真面目な性格のパルトーであったが、誤って酒を飲んでしまい、ハチャメチャに踊りまくる。その弾けぶりが、それまでの抑えた演技と対照的過ぎて爆笑物であった。先日公開された「Eklavya: The Royal Guard」(2007年)ではあまり活躍の場がなかったラーイマー・セーンだが、パルトーの妻ミリーを演じた彼女はなかなかよかった。2人のセリフには頻繁にベンガリー語がミックスされていた。

 アバイ・デーオールとミニーシャー・ラーンバーは、共に2005年にデビューした若手俳優である。「Socha Na Tha」(2005年)でデビューしたアバイ・デーオールは今までパッとしなかったが、パッとしなさをうまくキャラクターに活かした今回の役ははまっていた。トゥシャール・カプールと同じ路線の「のび太君」系男優になって行きそうだ。ミニーシャー・ラーンバーは、「Yahaan」(2005年)でデビューした女優で、今まで数本の映画に出演しているが、「Yahaan」以上の存在感は示せていない。「Honeymoon Travels Pvt. Ltd.」の彼女も悪くはない程度であった。

 デビュー作と比べて最近全く印象が変わってしまっているのがアミーシャー・パテールである。「Kaho Na… Pyaar Hai」(2000年)、「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)と立て続けに大ヒット作に出演し、一時はトップ女優の仲間入りをしたアミーシャーであったが、最近の彼女の凋落振りは見るも無残である。二流女流の域を出ていないし、成長の兆しも見えない。兄のアシュミト・パテールと共に、ヒンディー語映画界のお荷物と化している。ここらで一発、思い切った変身が欲しいところだ。

 ディヤー・ミルザーもデビュー時に話題になった割にはくすぶっている女優の1人である。だが、今回は特別出演に限りなく近い役であった。ほぼ同時期にデビューしたアルジュン・ラームパールと共演という形になっていた。アルジュンの方は完全に特別出演であった。インド人に人気のスズキの大型バイクHayabusaに乗って得意気であった。

 映画中、ひとつだけ心に残るシーンがあった。それはオスカーとノービドの夫妻が、ヒンディー語をしゃべるドイツ人女性観光客と話すシーン。「インドのことが大好きだ」と語るドイツ人は、「インド人は悲しみがなくていい。私たち西洋人は孤独だ」みたいなことを語っていた。外国人のインド観、インド人観は、時として非常にいい加減なことがある。インドが嫌いな人は嫌いな人でいろいろ言うが、それはそれでいい。むしろ厄介なのは、「インドが好き」と言っている人の勝手なインド観、インド人観である。オスカーとノービドは多くの悲しみを乗り越え、孤独を克服するために再婚し、ゴアに来ていた。その二人に対して「インド人は悲しみがない」「孤独がない」と言うのは、インドを馬鹿にするよりももっと馬鹿にした発言であろう。オスカーとノービドは複雑な表情で彼女を見ていた。ふと、ドイツ人女性はオスカーに問う。「ところで結婚して何年になりますか?」オスカーはすかさず「22年」と嘘を言う。このドイツ人女性が、後にバスの運転手の甥と恋に落ちてどこかへ行ってしまうというオチ付きである。

 音楽はヴィシャール・シェーカル。2時間の短い映画であり、ダンスシーンは極力抑えられていたが、最後の「Sajanji Vaari Vaari」だけは強烈であった。ケー・ケー・メーナンが狂ったように踊りまくる!思わず観客も踊り出してしまいたくなるようなノリノリのナンバーだ。他に、クラシック映画の音楽がふんだんに用いられていた。

 「Honeymoon Travels Pvt. Ltd.」は、暇つぶしには最適のコメディー映画である。それ以上のものが映画には多少含まれているが、基本的にはお気楽な映画なので、肩の力を抜いて楽しめばいいだろう。