Apna Sapna Money Money…?

2.0

 旅行などでしばらく映画館に行っていなかったが、今日は久し振りに映画を観た。2006年11月10日公開のヒンディー語映画「Apna Sapna Money Money…?」である。

制作:ラージュー・ファールーキー
監督:サンギート・シヴァン
音楽:プリータム
歌詞:シャッビール・アハマド
振付:レモ
出演:リテーシュ・デーシュムク、セリナ・ジェートリー、シュレーヤス・タルパデー、コーエナー・ミトラー、リヤー・セーン、アヌパム・ケール、ジャッキー・シュロフ、スニール・シェッティー、ラージパール・ヤーダヴ、チャンキー・パーンデーイ
備考:PVRアヌパム4で鑑賞。

 バンコクを拠点とするインド人マフィア、ダニー・カルロス(ジャッキー・シュロフ)は、5億ルピー相当のダイヤモンドを密輸して一獲千金を狙う。運び屋に選ばれたのは、カルロスの愛人サーニヤー(セリナ・ジェートリー)であった。サーニヤーはゴアでダイヤモンドを受け取り、列車でムンバイーへ向かう。

 一方、ムンバイーの街角で機械工をして日銭を稼ぐアルジュン・フェルナンデス(シュレーヤス・タルパデー)は、隣に住む半盲目の僧侶サティヤボール・シャーストリー(アヌパム・ケール)の娘、シヴァーニー・パンディト(リヤー・セーン)に恋していた。シヴァーニーもアルジュンのことが気になっていたが、シャーストリーは勝手に娘の縁談を決めてしまう。もうすぐ花婿の父親が家にやって来ることになっていた。父親の名前はサルジュー・マハーラージ・バナーラスワーレーであった。アルジュンはそれを防ぐため、詐欺師をしている従兄弟のキシャン・デーヴサクセーナー(リテーシュ・デーシュムク)に助けを求める。

 他方、キシャンはネパール人マフィア、ラーナージー(チャンキー・パーンデーイ)から金を奪って逃走中であった。キシャンが列車に乗り込むと、ちょうど同じコンパートメントにはサルジュー・マハーラージ・バナーラスワーレーが乗っていた。キシャンは一計を案じ、彼をラーナージーに引き渡して自分が逃げ去る。おかげでバナーラスワーレーはラーナージーに捕まり、拷問を受ける。一方、キシャンは白髪のかつらをかぶって、バナーラスワーレーに変装する。

 また、同じ列車にはちょうどサーニヤーも乗っていた。そこへカルロスとサーニヤーを逮捕することに一生を賭けた警官ナームデーヴ・マーネー(スニール・シェッティー)が踏み込んで来る。サーニヤーは咄嗟にダイヤモンドをサンダルの底の中に隠し、それをバナーラスワーレー(キシャン変装)のバッグの中に隠す。マーネーはサーニヤーを逮捕し、警察署へ連行するが、何も出てこずに上司から大目玉を食らってしまう。

 ムンバイーに着いたキシャンは、バナーラスワーレーになりすましてシャーストリーの家へ行く。そして何も知らずにそのサンダルをシヴァーニーにプレゼントしてしまう。バナーラスワーレーはシャーストリーの前でおかしな行動をして、結婚を破談させる。キシャンは仕事を終えてムンバイーを去るはずであったが、そのときラーナージーに見つかり、逃亡する。その途中で彼は女性用カツラを手に入れ、女性になりすまして再びアルジュンのところに戻って来る。キシャンが女性に変装した姿を見たシャーストリーは一目惚れしてしまう。キシャンはアルジュンの叔母と自己紹介し、女子テニス選手サーニヤー・ミルザーのポスターを見て、自分をサーニヤーと名乗る。シャーストリーは、サーニヤー(キシャン変装)に、バナーラスワーレー(キシャン変装)から受け取ったサンダル(ダイヤモンド入り)をプレゼントする。また、サーニヤー(キシャン変装)はアルジュンとシヴァーニーの結婚を承諾させる。

 一方、カルロスの愛人サーニヤーは、一旦は警察から解放されたが、マーネーに捕えられてしまう。マーネーは彼女に、自分と手を組んでダイヤモンドを見つけ出し、山分けすることを提案する。サーニヤーはそれを受け入れる。だが、サーニヤーが自分を疑い始めたカルロスは、ムンバイーで牛舎を経営するマフィアの卵、マーター・プラサード(ラージパール・ヤーダヴ)にダイヤモンド奪取またはサーニヤー拉致を命じる。さらに、ラーナージーも本物のバナーラスワーレーからシャーストリーの住所を聞き出す。こうして、マーネー、マーター・プラサード、ラーナージーの三者がシャーストリーの家へ向かうことになった。

 最初に辿り着いたのはマーター・プラサードであった。彼はサーニヤー(キシャン変装)を拉致する。次に辿り着いたのはラーナージーであったが、同時にマーネーもやって来た。ラーナージーはマーネーが警察であることを知ると仕方なく立ち去る。マーネーはバナーラスワーレーが持っていたバッグを探し出し、それを持って意気揚々と署へ向かう。ところが、バッグの中にあったはずのサンダルはなくなっていた。また、このときサーニヤーは、彼女をカルロスが探していることを察知したラーナージーに誘拐されてしまう。カルロスはこのときムンバイーに自ら来ていた。

 カルロスのところには、マーター・プラサードとラーナージーが「サーニヤーを捕まえた」と言ってやって来た。ラーナージーの部下がサーニヤーを連れて来ると、マーター・プラサードはリンチに遭う。また、このときサーニヤー(キシャン変装)は逃げ出していた。この騒動の中で、サンダルの中にダイヤモンドが隠されていることがアルジュンたちにも知れ渡る。だが、そこへマーネーがやって来て、カルロスを捕まえるためにそれを口止めする。

 アルジュンとシヴァーニーの結婚式の日、カルロスは結婚式場に乗り込んでくる。サーニヤー(キシャン変装)のサンダルを巡って大騒動となるが、結局カルロスは警察に捕まり、サンダルも押収される。しかし、このときアルジュンの近所に住む女の子ティトリーの容態が悪化し、入院してしまっていた。彼女の心臓には穴が開いており、手術が必要だったが、そんなお金は誰にも用意できなかった。だが、キシャンは実はひとつだけダイヤモンドを隠し持っていた。それを売ったお金でティトリーの手術が実現し、彼女は一命を取り留める。

 プリヤダルシャン映画タイプの大人数型ドタバタコメディー映画。しかし、プリヤダルシャン映画ほど笑いが磨かれておらず、コメディー作品としては中程度の出来。「Kisna」(2005年)、「Sarkar」(2005年)などのヒンディー語映画のパロディーがいくつか出て来たが、それもあまり楽しくなかったし、ダンスシーンへの入り方も強引であった。

 サンギート・シヴァン監督は、「Asoka」(2001年)などで有名な映画監督・撮影監督サントーシュ・シヴァンの兄で、「Kyaa Kool Hai Hum」(2005年)などのヒット作も手掛けた人物である。「Kyaa Kool Hai Hum」は下品ながらも抱腹絶倒の傑作コメディー映画だったのだが、この「Apna Sapna Money Money…?」はそれだけのレベルには残念ながら達していなかった。敗因は、コメディーに集中しなかったことであろう。アルジュンとシヴァーニーの恋愛や、シャーストリーとサーニヤー(キシャン変装)の恋愛はまだしも、キシャンとジュリーの恋愛は明らかに蛇足であったし、ティトリーの手術にしても取って付けたようなお涙頂戴プロットにしか見えなかった。映画の一番最後には、「みんな欲しいのはお金、でもみんな必要なのは愛」と締めくくってあったが、その金言に至るまでの過程には全く説得力がなかった。

 あらすじは非常に複雑であるが、基本的にお馬鹿なコメディーなので内容は薄い。特筆すべき事柄はない。

 「Kyaa Kool Hai Hum」でリテーシュ・デーシュムクは、格好つけているんだけどもてない男というキャラを演じ、それが非常にはまっていたものだった。本作でも彼が演じたのは似たような路線であったが、「Kyaa Kool Hai Hum」よりもヒーロー度が増していた。彼も進化しつつあるようだ。一方、まだデビューしたてにも関わらず、なぜか独自の地位を築くことに成功しているシュレーヤス・タルパデーは、前作「Iqbal」(2005年)や「Dor」(2006年)に比べて「ノーマルな役」を演じていた。

 これら2人の勢いある若手男優が主演を演じた一方、脇役に回っていたのは「かつてヒーロー男優だったが最近ではさっぱり」という黄昏のジャッキー・シュロフとスニール・シェッティーであった。ジャッキー・シュロフは「Naksha」(2006年)でも変な悪役を演じており、その落ちぶれ振りを見ると胸が痛む。スニール・シェッティーも、「Phir Hera Pheri」(2006年)では存在感を示せたものの、中途半端にコメディーに足を突っ込んでしまったためか、方向性を失って迷走している印象を受ける。

 女優陣は、デビューから数年経ったがどうも一流になり切れていないし一流になれそうにもない人々をズラリと取り揃えた感じだ。一番存在感がなかった上に醜い印象を受けたのがコーエナー・ミトラー。彼女はアイテムガールから始めて女優に進出した女性だが、アイテムガールの頃の方が断然輝いていた。リヤー・セーンは身長が低くてかわいらしすぎる。インド人の間にロリコン趣味が生まれないと、彼女の人気は上昇しないだろう。最もオーラがあったのは、マフィアの愛人を演じたセリナ・ジェートリーであったが、それも他の女優がこんな感じだったためであろう。

 アヌパム・ケール、ラージパール・ヤーダヴなどのお馴染み脇役陣はいい仕事をしていた。チャンキー・パーンデーイが演じたネパール人マフィアの役は、ネパール人をここまで笑いのネタにしたという意味で、少し珍しかったかもしれない。彼が演じたラーナージーはネパーリー語訛りの言葉を話すため、非常に聞き取りにくいのだが、耳が慣れてくるとだんだん分かってくる。彼がカルロスの電話に出たとき、カルロスが「おい、チャウキーダール(ガードマン)」と呼んでいたが、これはネパール人がインドでチャウキーダールをしていることが多いことをネタにしたギャグである。これを見たネパール人の心を傷つけていないか心配である。

 コメディー映画はとかく低く見られがちだが、コメディー映画にこそインド映画の真髄があるというのが持論であるため、コメディー映画に対する批評は自然と厳しくなる。「Apna Sapna Money Money…?」は、観ていて爆笑できたシーンがほとんどなく、僕の鑑識眼とセンスにはあまり適合しなかったコメディー映画であった。