Teesri Aankh

1.5

 今日はPVRアヌパム4で、2006年3月8日公開の新作ヒンディー語映画「Teesri Aankh」を観た。題名の意味は「第3の目」。プロデューサーはパンミー・バウェージャー、監督はハリー・バウェージャー、音楽はハリー・アーナンド、スクシンダル・シンダー、ニッツ・ン・ソニー。キャストは、サニー・デーオール、アミーシャー・パテール、ネーハー・ドゥーピヤー、アーシーシュ・チャウダリー、アールティー・チャブリヤー、ムケーシュ・リシ、ムケーシュ・ティワーリー、ムルリー・シャルマー、Jazzy B(特別出演)など。

 サプナー(ネーハー・ドゥーピヤー)は、豪腕警察官アルジュン・スィン(サニー・デーオール)の婚約者であったが、結婚する前に一花咲かせたいと、ロンドンにモデルの仕事をしに行った。ところが、サプナーからの連絡が途絶えてしまった。ちょうどその頃、インドでは隠しカメラによる盗撮事件が横行していた。女性たちの着替えシーンなどが盗撮され、それがCDに焼かれて闇市場に出回っていたのだ。アルジュン・スィンは、盗撮CDの首謀者がロンドン在住のマフィア、スダーマー・パーンデーイ(ムケーシュ・リシ)であることを突き止め、ロンドンへ渡る。


 一方、駆け出しの映画監督のローヒト(アーシーシュ・チャウドリー)とアールティー(アールティー・チャブリヤー)は、ロンドンで映画のロケを行っていた。アールティーの妹のアムー(アミーシャー・パテール)は生まれつきの障害で言葉がしゃべれなかったが、映画撮影の手伝いをしていた。アムーは偶然、夜の映画撮影スタジオで、サプナーがスダーマーの部下、ディネーシュ&ディネーシュ(ムケーシュ・ティワーリーとムルリー・シャルマー)に殺される場面を目撃する。サプナーが応募したモデルの仕事は実は偽装で、その目的は女性の着替えシーンを盗撮することだった。サプナーはスダーマーの罠にはまって盗撮されてしまい、彼の言いなりになっていた。スダーマーに代わって盗撮ビジネスを支配しようと画策していたディネーシュ&ディネーシュはサプナーに対し、もしスダーマーが所有している盗撮映像が全て入ったCDを盗んで来たら彼女の盗撮CDを返すと約束する。サプナーは仕方なくそれに従い、スダーマーからCDを盗んで来るが、ディネーシュ&ディネーシュはサプナーを強姦しようとした。サプナーはそれに抵抗したために殺されてしまったのだった。

 サプナーの殺害場面を見たアムーはディネーシュ&ディネーシュに追われるが、間一髪のところでローヒトとアールティーが駆けつけ、何とか危機を脱する。アムーは誰かが殺されたと必死に伝えるが、既にディネーシュ&ディネーシュは証拠を隠滅しており、警察にも真面目に取り合ってもらえなかった。

 ところが、ディネーシュ&ディネーシュは、スダーマーから奪ったはずのCDを紛失したことに気付く。アムーが盗んだと思った2人は、彼女の家を襲撃する。ちょうどローヒトとアールティーは留守にしており、アムーは殺されそうになるが、そのときアルジュン・スィンが駆けつけて、またも危機を脱する。

 アムーは、アルジュンの婚約者が、自分の目の前で殺された女性であることに気付き、それを伝える。失望したアルジュンだったが、そのとき上層部から、スダーマーやディネーシュ&ディネーシュが探しているCDを奪取すれば、スダーマーを立件する有力な証拠になることを伝えられる。だが、アムーはCDのことなど知らなかった。しかし、アムーはスタジオでそのCDを一瞬見たことを思い出す。アルジュンとアムーはスタジオへ向かう。だが、アルジュンに同行していた警官はスダーマーやディネーシュ&ディネーシュと密通しており、彼らもスタジオへ向かった。

 スタジオでアムーとアルジュンはCDを見つけるが、そのときスダーマーやディネーシュ&ディネーシュも駆けつけ、戦いが始まる。アルジュンは、スダーマーやディネーシュ&ディネーシュを殺し、サプナーの仇を討った。

 「第3の目」という題名が示す通り、盗撮がテーマになっていた映画であった。盗撮は既に「Kalyug」(2005年)で主題になっており、しかもストーリーの流れも似通っていたので、その点で非常に運の悪い映画であった。だが、運云々よりも、映画自体がサニー・デーオールの一人舞台が売りの一本筋の古めかしい作りであったため、どうあがいても注目を浴びることは無理だっただろう。テーマがテーマなだけに、エロチックなシーンがいくつか出てくるが、特に映画のポスターなどにそのエロが活かされているわけでもなく、結局焦点が定まらない映画になってしまっていた。

 この映画で描写されていた盗撮は2種類あった。ひとつは、更衣室、トイレ、部屋などに仕掛けられた隠しカメラによる若い女性の盗撮。盗撮された女性は、その映像を使って脅され、言いなりになってしまう、そして挙句の果てにはポルノ映画への出演を強制されるまでになる、またそういう罠にはまった女性たちの盗撮CDやポルノCDが闇市場で出回るという問題が取り上げられていた。果たしてそういう事件がインドで実際に頻繁に起こっているのかはよく分からない。だが、ふと気付くとインドでも監視カメラが設置された建物が増えて来たと思う。新しいテクノロジーが普及すれば、それを悪用しようとする者が現れるのは必然である。この映画で指摘されていたように、インド人も「第3の目」を意識しながら生活しなければならなくなるかもしれない。

 もうひとつの盗撮は、ここ数年ほど時々報道機関によって行われ、政治や社会に大きな影響を及ぼすこともあるスティング・オペレーションである。例えば政治家の不正を暴くために、ジャーナリストが身分を偽って政治家に近づき、収賄の場面などをこっそりビデオに撮影してTVで放映するというものだ。スティング・オペレーションにまんまとはまって政治生命を絶たれた政治家の例も何人かある。不正は許されるものではないが、それを暴く手段も問題があるので、国民の間でもスティング・オペレーションには賛否両論がある。だが、「Teesri Aankh」ではどちらかというと肯定的に描写されていたような印象を受けた。

 盗撮をテーマにするのはいいのだが、「Kalyug」と同じく映画の流れは古典的な復讐劇で、どうしても古めかしい映画に思えてしまう。サニー・デーオールは今回も一人でマフィアの集団を一網打尽にしてしまう。そのスーパーマン振りは思わず笑いがこぼれるほど。そして「我々が自らの中に住んでいる悪党を除去しない限り、社会から悪党はなくならない!」と大見得を切っていた。典型的なインド映画であった!

 とは言え、サニー・デーオールの活躍場面は後半に集中しており、それほど目立ってはいなかった。一番の活躍を見せたのは、言葉をしゃべれない女の子アムーを演じたアミーシャー・パテールであろう。先日のフィルムフェア賞で11部門を制した「Black」(2005年)のラーニー・ムカルジーの二番煎じのような演技であったが、この映画の中で最も輝いていたことは確かだ。ネーハー・ドゥーピヤーも悪くなかった。アーシーシュ・チャウダリーとアールティー・チャブリヤーは訳が分からない役柄。馬鹿悪役コンビを演じたムケーシュ・ティワーリーとムルリー・シャルマーは素晴らしかった。

 「Teesri Aankh」のサントラCDはまあまあ買いである。UKエイジアンJazzy Bが歌うパンジャービーナンバー「Chug De Punjabi」が最高。この曲のミュージカルシーンではJazzy B自身が特別出演する。「Kyaa Kool Hai Hum」(2005年)でUKエイジアンのバングラー・アーティストたちが特別出演していたのを思い出した。だが、ストーリー展開とあまり整合性がなく、ディネーシュ&ディネーシュから逃げるアムーが突然Jazzy Bと踊り出したりして、訳が分からないミュージカルになってしまっていた。他に、「Titliyan Titliyan」、「Sharaabiyon」などもいい曲である。

 サニー・デーオールには熱狂的なファンが多く、「Teesri Aankh」はもしかしたら田舎のインド人に受けるかもしれないが、デリーではほとんど受けないだろう。僕が観たときも観客はほとんどいなかった。無理してみる映画ではない。