Pyaar Mein Twist

3.0

 ここのところしばらく雨が降らず、暑い日々が続いてたのだが、先週末から急に突発的な大雨が降るようになった。今日も1日に何度か雨が降り注いだが、その合間を見計らいつつPVRアヌパム4へ行って、2005年9月2日から公開されているヒンディー語映画「Pyaar Mein Twist」を観た。

 「Pyaar Mein Twist」を敢えてニュアンスの似た日本語にするとしたら、「恋の一波乱」だろうか。監督は「Plan」(2004年)で監督デビューしたフリダエ・シェッティー、音楽はジャティン・ラリト。キャストは、リシ・カプール、ディンプル・カパーリヤー、ソーハー・アリー・カーン、サティーシュ・シャー、ファリーダー・ジャラール、ヴィカール・ダッラー、サミール・ダッターニー、ディープシカーなど。

 ヤシュ(リシ・カプール)は、自ら育て上げた会社を息子のラージーヴ(ヴィカース・ダッラー)に譲って定年退職し、老後のプランを考えながら悠々自適の生活を送っていた。ヤシュはラージーヴを愛していたが、ラージーヴの方は子供の頃から父親に反感を抱いて育って来た。ヤシュの妻は既に死去していた。

 ある日、ヤシュはシータル(ディンプル・カパーリヤー)という女性と出会う。シータルは未亡人だったが、姉のトーシー(ファリーダー・ジャラール)と共に子供たちを育て、亡き夫に代わって会社を経営し、今は家族と共に暮らしていた女性だった。もうすぐシータルの娘のリヤー(ソーハー・アリー・カーン)の結婚式が行われようとしていた。リヤーの許婚サンジュー(サミール・ダッターニー)はリヤーのことを心から愛していたが、彼の母親のマドゥは、息子が自分たちよりも経済的に劣る家族と結婚することを快く思っていなかった。

 ヤシュとシータルは急速に仲良くなり、警察官に夫婦に間違われるまでになる。ヤシュはシータルをディナーに誘い、一緒にダンスを踊る。ところが運の悪いことに、二人が踊る姿をマドゥの友人が目撃していた。すぐにそれはマドゥの知るところとなり、サンジューとリヤーの結婚式が破談になる可能性が出てきた。リヤーたちは、母親がいい年をして恋愛をし、しかもそれが娘の結婚式に悪影響を及ぼしていることを知って、母親を非難し、避けるようになる。また、ラージーヴも父親がシータルと仲良くなっていることを知ったため、ますます父子の仲は険悪となってしまう。

 シータルの姉トーシーは、この状況を打開するためにヤシュとシータルにひとつの提案をする。それは、二人でどこか遠くへ隠れてしまうことだった。ヤシュとシータルは、ある日家族から姿をくらませて、ヤシュの友人(サティーシュ・シャー)の別荘に一緒に住むようになる。それぞれの家族は、2人がどこへ行ったのか全く検討がつかずにうろたえる。両家の仲は最初険悪だったのだが、次第に協力し合って2人を探すようになる。また、リヤーの結婚も予定通り行われることになった。

 遂にヤシュとシータルの居場所がばれてしまった。二人の子供たちはそこに駆けつける。ヤシュは子供たちの前で、自分たちが愛し合っていることを宣言し、子供たちもそれを受け容れる。こうして、サンジューとリヤーの結婚式が行われ、ヤシュもリヤーの父親として結婚式に参加するのだった。

 リシ・カプールとディンプル・カパーリヤーと言えば、ヒンディー語映画界のベストカップルとして中高年層のインド人たちの記憶に残っているようだ。二人が初めて共演したのは、リシの父親ラージ・カプール監督の「Bobby」(1973年)で、この映画は大ヒットを記録し、当時新人俳優だった二人は華やかなる映画人生のスタートを切った。ところが、ディンプルは早々に当時のスーパースター、ラージェーシュ・カンナーと結婚してしまい、映画界から一旦足を洗ってしまう。ディンプルはラージェーシュとの間に二子(その内一人は女優トゥインクル・カンナー)をもうけたが離婚し、再び映画界にカムバックする。「Bobby」の次にリシとディンプルが共演したのは、「Saagar」(1985年)であった。やはりこの映画も大ヒットし、リシとディンプルのコンビは伝説と化す。だがその後、二人がスクリーン上で共演することはなかった。この「Pyaar Mein Twist」まで・・・。

 最近、老年の愛をテーマにした映画がヒンディー語映画界で静かなブームとなっている。「Kabhi Khushi Kabhie Gham」(2001年)では、実生活の夫婦であるアミターブ・バッチャンとジャヤー・バッチャンが仲睦まじい様子を見せたが、それはまだ、「シルバーロマンス映画」と呼べるほどストーリーの核とはなっていなかった。やはりその走りとなったのは、アミターブ・バッチャンとヘーマー・マーリニーが共演した「Baghban」(2003年)に尽きる。その後、2005年には「Viruddh」でアミターブ・バッチャンとシャルミラー・タゴールが共演し、老年夫婦の愛情が繊細に描写された。このリシ・カプールとディンプル・カパーリヤーが共演したこの「Pyaar Mein Twist」は、その流れをさらに推し進める作品となるだろう。コメディー3割、ホームドラマ4割、お涙頂戴3割くらいの映画であり、シルバーロマンス映画の例に漏れず面白い映画で、興行的にも健闘しているようだ。やはり、昔からの映画ファンである中高年層がこれらの映画の主な観客となっていると思われる。

 「Baghban」と「Viruddh」では夫婦間の愛が描かれていたが、「Pyaar Mein Twist」では一歩進んで、妻を亡くした50過ぎの男性と夫を亡くした40過ぎの女性の恋愛が主題となっていた。子供たちは最初、二人の恋愛を「いい年してみっともない」と批判するが、自分たちのために人生を捧げて来た親の気持ちを理解し、最後には二人の再婚を祝福する、という筋書きであった。特にその転機となったのは、ヤシュの息子のラージーヴが、自分の出生の秘密を知ったことだった。実は、ラージーヴはヤシュの兄の息子だった。しかし、ラージーヴが生まれて間もなく兄は死んでしまう。ヤシュには好きな女性がいたのだが、ラージーヴに父親のいない寂しさを感じさせないように、兄嫁と結婚することにしたのだった。ラージーヴは今まで父親のことを自分勝手な男だと思っていたが、実は自分のために大切な人との結婚を諦めてまで尽くしてくれたことを知り、今まで冷たく当たっていたことを激しく後悔する。だがそのときには既にヤシュはシータルと共に姿をくらましていた。ラージーヴが主導する形で、両家合同による二人の捜索が始まり、それがやがては全ての問題の解決の糸口となるのだった。ヤシュがシータルの長男に「花嫁の手を要求する(結婚の許可をもらう)」場面はユニークなシーンである。当然、普通は花嫁の父親に結婚の許可をもらうものだ。

 インドではまだまだ女性の再婚には厳しい視線が注がれることが多い。「Pyaar Mein Twist」では、どちらかというと世間の目よりも子供たちの反発がその障害としてクローズアップされていたが、実際には世間の方がもっと厳しい反発をするだろう。と言うより、子供たちの反発振りがかなり極端で不自然だった。また、一度破綻しかけていたリヤーとサンジューの結婚が急に再決定されたり、ヤシュとシータルが隠れている場所が見つかる過程が説明不足だったりと、細かい部分で整合性を欠くところがあったのも否めない。しかし、見終わった後の爽快感は十分ある映画である。

 さすがにリシ・カプールもディンプル・カパーリヤーもベテラン俳優なだけあり、貫禄と余裕の演技だった。ディンプルは今年で48歳だが、レーカーとは違った落ち着いた美しさを持った女優である。「Dil Chahta Hai」(2001年)や「Leela」(2002年)での演技も鮮明に記憶に残っている。リシ・カプールも顔の表現が非常にうまい男優だと思った。主演の二人に加え、サティーシュ・シャー、ファリーダー・ジャラールなどのベテラン脇役俳優もそれに負けず劣らず迫真の演技をしていた。だがその分、若い世代の俳優たちの見所が減ってしまっていた。サイフ・アリー・カーンの妹のソーハー・アリー・カーンが一応ヒロインという扱いだったが、ディンプルの前では脇役同然であった。若い男優の中では、「Uuf Kya Jaadoo Mohabbat Hai」(2004年)でデビューしたサミール・ダッターニー(サンジュー役)が最も有望か。

 音楽はジャティン・ラリト。リシ・カプール主演「Karz」(1980年)のヒット曲「Khullam Khulla Pyar Karenge」のリミックスに合わせて、リシとサティーシュ・シャーが踊るミュージカルが最も盛り上がるシーンだろう。それ以外の歌で印象に残ったものはなかった。

 現在のヒンディー語映画界で最も元気なのは相変わらずアミターブ・バッチャンだが、他のベテラン俳優勢もそれに負けずに存在感を示し始めている。ちゃんとした演技力のある俳優たちがスクリーンに戻って来ることは嬉しいことだが、このままではヒンディー語映画界の高齢化が進んでしまうという危機感も覚える。これらシルバーロマンス映画の隆盛は、ベテラン俳優たちの院政開始を告げる兆しなのか、それとも温故知新を目的とした世代間交流会なのか?「Pyaar Mein Twist」は単品でも面白い映画だが、これからのヒンディー語映画界の流れにおいても重要な意義を持っているように思える。