Dus

2.0

 今日はグルガーオンにあるDTメガモールで、2005年7月8日公開のヒンディー語映画「Dus」を観た。DTメガモールは、ちょっと前に出来たばかりのシネコン&ショッピングモールである。今回初めて行った。オープンしてから数ヶ月が経っていると思うが、まだ開いている店舗は数えるほどしかなく、殺伐とした雰囲気だった。4階にあるフードコートが一応の目玉なのだが、あまり利用価値がなさそうであった。こんな状態なので、来客数も少ない。2階にあるThe Next Shopが一番利用価値があるだろう。オシャレな小物などを売っている店で、デリーのGK-IのNブロック・マーケットにも店舗がある。

 さて、「Dus」とは「10」という数詞である。監督は「Tum Bin」(2001年)や「Aapko Pehle Bhi Kahin Dekha Hai」(2003年)のアヌヴァウ・スィナー、音楽はヴィシャール・シェーカル。キャストは、サンジャイ・ダット、スニール・シェッティー、パンカジ・カプール、アビシェーク・バッチャン、ザイド・カーン、シルパー・シェッティー、イーシャー・デーオール、ディヤー・ミルザー、ラーイマー・セーン、グルシャン・グローヴァーなど。

 テロ対策部(ATC)のスィッダーント(サンジャイ・ダット)局長は、5月10日に何者かが大規模なテロを画策しているとの情報を入手し、捜査に乗り出した。スィッダーントは、部下のシャシャーンク(アビシェーク・バッチャン)、アディティー(シルパー・シェッティー)、アーディティヤ(ザイド・カーン)らと親子のような兄弟のような関係を築いていた。スィッダーントらは、大規模テロの首謀者の名前がジャームワールだということを突き止める。だが、それを内相に報告した途端、ATCの解散が上から一方的に通告される。猶予期間は1週間だった。

 そのとき、スィッダーントのもとにカナダの諜報部員ネーハー(イーシャー・デーオール)から連絡が入り、ジャームワールの部下のヒンマト・メヘンディーなる人物の居所が分かったことが知らされる。スィッダーントは、シャシャーンクとアディティヤを秘密裡にカナダへ送り込む。

 カナダに到着したシャシャーンクとアーディティヤはネーハーと合流し、ヒンマト・メヘンディー(パンカジ・カプール)を拉致する。このとき、成り行きで、カナダ警察のダン(スニール・シェッティー)もジャームワールの逮捕に協力することになる。ヒンマト・メヘンディーはなかなか口を割らなかったが、シャシャーンクらは巧みにヒンマトを懐柔し、とうとうジャームワールの居場所を突き止める。シャシャーンク、アーディティヤ、ダンの三人は協力してジャームワール(グルシャン・グローヴァー)を殺害する。そして3人はヒンマト・メヘンディーを解放する。

 一方、デリーに残っていたスィッダーントは、誘拐されたシャシャーンクの妹アヌ(ディヤー・ミルザー)を救い出したり、部下がジャームワールと密通していたことを突き止めたりしていた。やがて彼は、ジャームワールの大規模テロの標的がインドの首相であることを突き止める。5月10日、首相はカナダのスタジアムで行われる式典に出席することになっていた。スタジアムには2万5千人の観客が入る。スィッダーントはATCの司令をアディティーに任せ、カナダへ向かう。

 カナダでスィッダーントはシャシャーンク、アディティヤ、ダンと合流した。しかし、シャシャーンクらが会ったネーハーは偽物だったことが発覚する。本物のネーハーは自宅で殺害されていた。また、シャシャーンクらが殺害したジャームワールも別人で、本物のジャームワールは、彼らがヒンマト・メヘンディーだと思っていた人物だったことが分かる。

 5月10日になった。スィッダーントらはスタジアムを捜索し、超強力な爆弾が大量に積み込まれている自動車を発見する。もはやそれらを解除する時間はなかった。アディティヤはその自動車を運転して郊外へ向かう。また、シャシャーンクも爆弾が仕掛けられたもう1台の自動車を発見する。ネーハーを追って飛行場に着いたシャシャーンクは、それらの爆弾を飛行機に詰め込んでネーハーと共に飛び立つ。爆発まで時間がなかったため、シャシャーンクは自らを犠牲にして河の中に突っ込んで被害を最小限に抑える。他方、スィッダーントはスタジアムに来ていたジャームワールを殺害する。

 また、デリーではアディティーが、首相暗殺に複数の大臣が関わっていたことを突き止め、それを公衆の面前で暴露する。

 こうして、シャシャーンクという犠牲を払ったものの、ATCの活躍により、インド首相暗殺と2万5千人のカナダ人への大規模テロが未然に防がれたのだった。

 「Dus」は音楽がよかったので、前々から公開を楽しみにしていた映画のひとつだった。僕が日本に一時帰国している間に封切られたが、インドに戻って来るまで上映され続けていたため、幸運にも映画館で見ることができた。しかし、映画の評価を一言で言ってしまうならば、「期待外れ」であった。

 この映画で最も監督が見せたかったのは、ジャームワールが実はヒンマト・メヘンディーだと思われていた人物だったと分かるどんでん返しであろう。偽ヒンマト・メヘンディー&本物のジャームワールを演じたパンカジ・カプールの素晴らしい演技もあり、それは大成功を収めていたと思う。だが、他に用意された伏線はどれもパッとしなかった。例えば「ジート(勝利)」という暗号。スィッダーントは、ジャームワールと密通していた部下からこの暗号を聞き出す。スィッダーントはこの暗号を以下のように解読する――「ジート」をアルファベットで書くと「JEET」。「J」はアルファベットの10番目の文字、「E」は5番目の文字、「T」は20番目の文字。よって、「JEET」を数字に換算すると、「10/5/5/20」。つまり、5月10日の午後5時に何かが起こる――最後の「20」の意味をスィッダーントは推測することができなかったが、それは爆弾が仕掛けられた自動車のナンバー(2020)であったことが後から分かる。しかし、こんな子供だましの暗号は、ありきたりでお粗末過ぎる・・・!

 もし映画全体の雰囲気を徹底的にハードボイルドにすればまだまとまったかもしれないが、不適切なコメディーシーン、ロマンス、ダンスシーンがあり、映画を盛り下げた。ザイド・カーンが演じたアーディティヤはお調子者の役であったが、全然笑えなかった。また、シャシャーンクとネーハー(イーシャー・デーオール)との恋愛が微かに描写されるが、これは全く不必要だった。ダンと妻(ラーイマー・セーン)との間で起こった不幸もうまく活用されていたとは言いがたい。アヌの婚約式で挿入されるミュージカル「Chham Se」は映画中最も盛り下がるシーンのひとつである。5月10日までのカウントダウンも緊迫感が全くなかった。

 だが、パンカジ・カプールだけは突出して素晴らしかった。特にヒンマト・メヘンディーを装っているジャームワールの挙動不審な演技は、並みの俳優にできるものではない。それにしてもサンジャイ・ダットは一体何をしているのか?テロリスト役を演じるべきなのに、あろうことかテロリストに対抗する男を演じてしまうとは!しかもニコチン中毒のシャシャーンクを禁煙させようとまでしていた。あんたほどタバコの似合う人はいないと言うのに・・・!サンジャイ・ダットのしゃべり方は呂律が廻っていないので、今回のように真面目な紳士役なんかを演じると全然似合わない。「Musafir」(2004年)のサンジャイ・ダットよ、もう一度!という感じである。他の俳優は特筆すべきことがなかった。

 「Dus」の挿入歌の中で気に入ったのは2曲。冒頭のクレジットシーンで流れる「Dus Bahaane」と、途中のディスコバーのシーンで流れる「Deedar De」だ。前者は「君は10個の言い訳を並べて心を奪った」という歌詞で、アビシェーク・バッチャンとザイド・カーンの脱力系の踊りが心地よい。後者は、ベリーダンス風の音楽と踊りでエロチックである。「私を愛しているなら、私を抱いて。私を見て、私の視線を受け容れて」という歌詞が延々と繰り返される。

 実は「Dus」には、パーキスターンの男優、ジャーヴェード・シェークが出演する予定だった。そればかりでなく、ジャーヴェードは撮影にも参加したのだが、公開された映画にはジャーヴェードの影も形もない。監督は、「ジャーヴェードの登場シーンの大部分が手違いにより損傷してしまってカットせざるをえなかった」と言い訳しているが、どうも何かあったのではないかと思われる。

 「Dus」のサントラCDはオススメだが、映画はそれほど楽しくない。「Dus Bahaane」や「Deedar De」のミュージカルシーンを見たり、パンカジ・カプールの演技を楽しんだりする目的なら、観て損はないのではなかろうか。それ以上は望んではならない。