Bachke Rehna Re Baba

2.5
Bachke Rehna Re Baba
「Bachke Rehna Re Baba」

 旅行から帰って来たばかりであると同時に、デリーの殺人的暑さにまいっているところであったが、僕の映画に対する情熱は疲労と暑さを吹き飛ばすほどで、すぐに映画をPVRアヌパム4まで観に出かけた。今日観た映画は、2005年6月17日公開の「Bachke Rehna Re Baba」。題名の意味は、「気を付けなさい」みたいな意味。映画のストーリーから判断して、「恋に要注意」みたいな意味が暗示されている。監督はゴーヴィンド・メーナン、音楽はアヌ・マリク。キャストは、レーカー、マッリカー・シェーラーワト、サティーシュ・シャー、パレーシュ・ラーワル、カラン・カンナー(新人)である。

 ルクミニー(レーカー)とその姪のパドミニー(マッリカー・シェーラーワト)は、美貌とチームワークを武器に結婚詐欺を行って、金持ちの独身男性から大金をせしめることを生業としていた。二人は、パンジャービーの富豪モンティー(パレーシュ・ラーワル)を騙したばかりだった。手順は以下の通りだった。まずルクミニーがモンティーを誘惑し、結婚まで行き着く。結婚式の初夜にパドミニーがモンティーを誘惑し、二人が自動車の中でもつれ合っているところにルクミニーがタイミングよく現れる。怒ったルクミニーは離婚を宣言すると同時に、彼から慰謝料をガッポリ頂く。こうして2人はモンティーから250万ルピーを手に入れていた。しかし、パドミニーはもうこんな詐欺はしたくないと考えており、最後の大仕事をして、結婚詐欺業から足を洗おうと決めた。二人は大物を捕まえるため、モーリシャスに飛ぶ。

 モーリシャスでルクミニーはスィンド人大富豪マンスカーニー(サティーシュ・シャー)に目を付ける。一方、パドミニーは、ホテルのレストランでウェイターで、その実はそのレストランのオーナーの息子であるラグ(カラン・カンナー)と出会う。ルクミニーはパドミニーに、「仕事に恋は厳禁」と戒めるが、パドミニーはラグへの恋に落ちていってしまう。

 ルクミニーは首尾よくマンスカーニーの気を引き、プロポーズまで受けるが、そのときマンスカーニーは突然ポックリと死んでしまう。ルクミニーとパドミニーは、マンスカーニーの遺体を彼の家に運ぶが、ルクミニーのことが忘れられないモンティーがモーリシャスまで追いかけて来ており、ルクミニーは見つかってしまう。ルクミニーとパドミニーが詐欺師であることを見抜いたモンティーは、自分から騙し取った250万ルピーを12時間以内に返すよう求める。モンティーは、さもなくば警察に訴えると脅した。

 2人のもとにそんな大金はなかった。ルクミニーは刑務所に入ることを決めるが、パドミニーは、モンティーに「ラグを騙して金を手に入れるまで待ってほしい」と頼む。パドミニーはラグのことを本心から愛していたが、そうしなければ2人とも刑務所行きになってしまうので仕方がなかった。モンティーも彼女たちと一緒になってラグを騙し、パドミニーとラグは婚約する。

  パドミニーとラグの結婚式の日。ルクミニーはラグを誘惑し、自分の部屋に誘う。だが、ラグは真面目な男で、ルクミニーの誘惑には乗らなかった。そこで彼女は酒の中に睡眠薬をこっそり混ぜ、裸にして一緒にベッドに寝た。心中ではラグが自分を裏切るはずはないと思っていたパドミニーは、その様子を見てショックを受ける。離婚は成立し、パドミニーはラグから大金を手に入れる。しかし、パドミニーの将来を案じたルクミニーは、彼女に、本当はラグは誘惑に乗らなかったことを打ち明ける。それを聞いたパドミニーはラグのもとに走り、もう一度結婚して欲しいと頼む。ラグは笑って応じる。また、ルクミニーもモンティーにもう一度結婚を申し込む。こうしてルクミニーとパドミニーは一緒に結婚式を挙げた。と、そこへマンスカーニーそっくりの男がやって来て二人は驚くが、実はそれはマンスカーニーの双子の弟だった。マンスカーニーは死ぬ前に、全ての財産をルクミニーの名義にしていたのだった。こうしてルクミニーとパドミニーは、大金も手に入れ、夫も手に入れることができた。

 現在のヒンディー語映画界のセックスシンボル、マッリカー・シェーラーワトのお色気全開のコメディー映画。しかも共演するは、「永遠の美貌と色気」を持つ伝説的女優レーカー。この二人のコンビが金持ちの男たちを次々と騙していく様子は、痛快と言えば痛快だが、男としては恐ろしい限りであった。映画のストーリーははっきり言ってしょうもない。

 映画の最も成功している部分はキャラクター設定であろう。レーカー演じるルクミニーは、人生の酸いも甘いも知り尽くした大人の女性で、どうしたら男の心を操作することができるかを心得ていた。映画中のレーカーのファッションはオシャレと奇天烈の中間ぐらいで面白かった。また、レーカーがこんなコミカルな演技のできる女優だとは思ってもみなかったので驚いた。一方、マッリカー演じるパドミニーは、ルクミニーから男の操作法を学びながらも、まだ自分の心をコントロールする方法を完全にマスターしていなかった。彼女はルクミニーに対する競争心を燃やし、遂にはラグーと恋に落ちてしまう。マッリカーはやたらと胸元を強調したセクシーな服を着ており、セックス・シンボルの名をほしいままにしている。

 この2人に騙される哀れな男役は、ヒンディー語映画界を代表するコメディー男優が演じた。サティーシュ・シャーは、常にグトカー(噛みタバコ)を噛み続けている気味の悪い大富豪を演じ、パレーシュ・ラーワルはルクミニーに騙されながらも盲目的恋から抜け出せない可哀想な男をキュートに演じていた。その他、パドミニーと恋に落ちるハンサムな青年役を演じていたのが、この映画がデビュー作となるカラン・カンナー。それほど出番が多くなかったが、無難な演技をしていたと思う。だが、やはりこの映画の主人公は、レーカーとマッリカー以外に考えられない。

 映画中、いくつも爆笑スポットがある。例えば、マンスカーニーがオークションで落札しようとしていた「裸の労働者」という石像。チンコ丸出しの変な像である。ルクミニーは、自分のことを印象付けてもらうためにわざとオークションで値段を上げるが、誤って彼女が落札してしまう。落札額ほどの大金を持っていない彼女は、わざと「裸の労働者」のチンコを折り、「こんな不良品はいらないわ!」と投げ出す。また、マンスカーニーと会食することに成功したルクミニーが、「私はおフランス生まれですの」と言うと、マンスカーニーは「それは素晴らしい。ちょうど今日はフランス料理デーなんだ」ということで、フランス語でフランス料理を彼女に注文させる(モーリシャスではフランス語が話されている)。「ウイ(イエス)」と「ボンジュール(こんにちは)」ぐらいしかフランス語を知らないルクミニーは焦りながらもウェイターに適当に「ウイウイウイウイ」言って注文する。すると出てきたのは生タコ料理。ルクミニーは「ウッ」と一瞬顔をしかめながらも、「これ私の大好物ですの、オホホホホ」と言ってタコの足を口に放り込む(インド人は基本的にグロテスクな魚介料理を好まない)。しかもルクミニーはステージの上でフランス語で歌を歌わされ、ヒンディー語とフランス語を適当に混ぜた変な歌を歌う。何となく日本のギャグ漫画に似たノリのコメディー映画であった。

 映画の4分の3以上はモーリシャスでのロケ。美しい海はもちろんのこと、その美しいビーチで観客を挑発するマッリカーの野性的なボディーも見所であろう。

 音楽はアヌ・マリク。数あるミュージカル・シーンで最も印象的なのは、マッリカーの登場シーンに挿入される「Sharafat Chod De」であろう。SMの女王様みたいな格好をしたマッリカーが、腰をくねらせながら自分のお尻をペンペンするという、斬新なダンス。マッリカーのエロさ爆発である。しかも、最近いろいろな映画のダンスシーンによく出てくる東洋人顔のダンサーがけっこう活躍していて気になった。

 ゴーヴィンド・メーナン監督は、際どい性描写で話題となった映画「Khwahish」(2003年)で有名となった監督で、以後マッリカー・シェーラーワトとタッグを組み続けている。

 「Bachke Rehna Re Baba」は、視覚的には男性向け、ストーリー的には女性向けの映画のように思えた。レーカーとマッリカーのファンの人に特にオススメしたい映画であるが、あくまで理屈抜きで観なければいけない映画のひとつであろう。