Jo Bole So Nihaal

2.0

 酷暑期真っ只中のデリーは、容赦ない暑さにさらされており、日中は外に出る気がしない。今日は夕方からPVRプリヤーで、2005年5月13日公開の新作ヒンディー語映画「Jo Bole So Nihaal」を観た。題名の意味は「この言葉を唱える者は祝福される」という意味で、スィク教徒は「Jo Bole So Nihaal」と言われたら、「Sat Sri Akaal」と言い返さないといけないらしい。「Sat Sri Akaal」とは、「時間を超越せし不滅の神が真実なり」という意味で、「ナマステー」と同じ感覚でスィク教徒間でよく使われる挨拶である。

 監督は、ラーフル・ラワイル、音楽はアーナンド・ラージ・アーナンド。キャストは、サニー・デーオール、カマール・カーン(新人)、シルピー・シャルマー(新人)、ヌープル・メヘター(新人)など。

 パンジャーブ州警察のニハール・スィン(サニー・デーオール)は、正体不明の国際的テロリスト、ロミオ(カマール・カーン)と偶然出会うが、取り逃がしてしまう。それだけでなく、ニハールはロミオの仲間だと勘違いされ、警察をクビになる。ニハールの父親は村人の尊敬を集めていたが、ニハールの一件により彼の名声は地に落ちてしまった。その上、ニハールの妹の結婚も破談になってしまった。

 7ヶ月後、ロミオは相棒のリザ(ヌープル・メヘター)と共に、スィカンダルという名を名乗ってニューヨークに住み始めていた。ロミオによる爆弾テロが発生するが、誰もロミオの姿を見た者はいなかった。ニハール・スィンを除いて・・・。FBIはニハールをニューヨークへ呼び、ロミオ逮捕に協力を求める。しかし、ニハールはロミオをパンジャーブの村へ連れ帰ると言って聞かなかった。ニハールの監視役として、スザンヌ(シルピー・シャルマー)が常に彼に同行した。だが、次第にニハールとスザンヌは恋仲になっていく。あまりにニハールが自分勝手な行動を取るため、彼はテロリスト幇助罪で逮捕されてしまうのだが、スザンヌと共に逃げ出す。

 ロミオもニハールがニューヨークへ来ていることを知り、彼への復讐の機会を伺っていた。ロミオは豪華客船に乗ってバハマへ向かうことになり、ニハールを船におびき寄せる。ロミオはスィク教徒トミー・スィンに変装する一方で、ニハールは、ニハールと瓜二つの兄ビハールと名乗り、ロミオを探す。トミー・スィンが、「Jo Bole So Nihaal」と言っても「Sat Sri Akaal」と言い返さなかったのを見て、彼がロミオであると悟ったニハールは、ロミオを取り押さえる。

 ニハールはロミオをマイアミに監禁したが、そこへFBIも現れる。だが、実はFBIは大統領暗殺をロミオに依頼するために彼を探していたのだった。ニハールとスザンヌはFBIを一網打尽にし、逃げ出したロミオを追った。ニハールはロミオを再度捕まえ、パンジューブへ連れ帰ることに成功する。こうしてニハールは家族の名誉を回復することに成功する。

 宗教的アクション・コメディー映画という、訳の分からない肩書きを贈呈したくなる映画だが、優れた映画とは言えない。英語をしゃべれない生粋のパンジャーブ人がニューヨークで大暴れするという筋が面白いだけの映画である。

 ロミオがあまりに小物のテロリストであることと、FBIがあまりに頼りないことから、この映画のストーリーは最初から最後まで全く説得力がない。挙句の果てに、実はFBIが大統領暗殺を企てていたという、突拍子もない落ちが待ち構えている。

 主演のサニー・デーオールは、インド人の庶民に最も人気のある男優の一人である。「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)の大ヒットでサニーはその地位を確固たるものにしたが、それ以降あまりヒット作に恵まれていない。彼が最も得意とするのは、スィク教徒の役である。彼がスィク教徒の警官を演じる「Jo Bole So Nihaal」は、そういう意味でお家芸とも言える映画だ。しかし、残念ながらこの映画もサニーの復活を告げる映画にはならなそうだ。キュートなサルダールジー(スィク教徒)を演じたつもりのようだが、サニー・デーオールにコメディーは似合わない。

 ヒロインは2人。FBIのスザンヌ役を演じたシルピー・シャルマーと、ロミオの恋人リザを演じたヌープル・メヘターである。どちらも新人のようだ。二人ともあまり特徴のない顔をしており、すぐに消えて行きそうだが、どちらかというとシルピー・シャルマーの方が有望だろう。悪役ロミオを演じたカマール・カーンも新人のようだが、青い目が印象的な男優である。元々はプレイバックシンガーをしており、この映画でデビューしたという変わった経歴を持っている。

 映画中でもっとも印象的かつ面白かったのは、ニハールの母親を演じたお婆ちゃんだ。名前はよく知らないが、時々映画に出てくるので顔は知っている。米国でニハールがスザンヌと親密になるたびに、パンジャーブの田舎で「虫の知らせ」が起きて笑わせてくれた。

 どうやらスィク教徒の団体が、宗教的なフレーズである映画の題名にケチを付けたようで、多少揉め事があったようだ。その影響からか、映画の冒頭には「これは宗教的映画ではありません」と注意書きがあった。かなり宗教的だったのだが・・・。

 サルダールジーが好きな人と、ニューヨークに思い入れがある人には一見の価値がある映画かもしれないが、観てもあまり得しない映画だと思う。


 僕がモルディヴから帰って来た日曜日(2005年5月22日)、デリーの映画館で連続爆弾テロが発生していた。デリーに着いた飛行機の中で、近くの乗客が携帯電話でその話をしていたので、僕はいち早くその情報を得ることができた。爆発が発生したのは、カロールバーグにあるリバティーと、パテールナガルにあるサティヤム・シネプレックスである。家から遠いので頻繁に利用していた映画館ではないが、それでもどちらも数回行ったことがある。これらの映画館は、爆発が起こったとき、サニー・デーオール主演の「Jo Bole So Nihaal」(2005年)を上映していた。この映画はスィク教徒の団体から上映中止を求められており、パンジャーブ州では既に上映が中止されていた。この爆弾テロを受け、デリーやその近隣の地域の映画館も「Jo Bole So Nihaal」の上映を急遽キャンセルした。デリー中の映画館には警察官が配置され、普段から厳しかった手荷物検査・身体検査も、さらに厳しさを増した。「Jo Bole So Nihaal」はあまり面白い映画ではなかったのだが、デリーで連続爆弾テロを引き起こした曰く付きの映画として、インド映画史に永遠に刻まれることになってしまった。おそらくこの映画を映画館で見ることはできないだろうから、早めに観ておいてよかった。