Kyaa Kool Hai Hum

4.0

 今日はPVRプリヤーで、2005年5月6日公開の新作ヒンディー語映画「Kyaa Kool Hai Hum」を観た。題名は、「何てクールなんだ、オレたち」という意味。その題名から容易に察することができるように、冴えない男たちが一生懸命クールに振舞う姿がおかしいコメディー映画である。監督は「Chura Liyaa Hai Tumne」(2003年)のサンギート・シヴァン、音楽はアヌ・マリク。キャストは、トゥシャール・カプール、リテーシュ・デーシュムク、アヌパム・ケール、イーシャー・コッピカル、ネーハー・ドゥーピヤー、ボビー・ダーリン、ラザーク・カーン、ラージパール・ヤーダヴなど。

 ラーフル(トゥシャール・カプール)とカラン(リテーシュ・デーシュムク)は、それぞれに夢と野望を持ってムンバイーへやって来た若者だった。真面目で誠実なラーフルは、デザイナーになるのが夢だった。また、占い師から「胸にホクロのある女性が福を呼び込む」と伝えられ、そのような女性が現れるのを待ち望んでいた。一方、お調子者のカランは、金持ちで美人の女の子と結婚して逆玉の輿を狙っていた。二人はデザイナーDKの経営するブティックで働いていた。

 そのとき、女性を狙った連続殺人犯がムンバイーで暗躍していた。ひょんなきっかけからラーフルがその容疑者となってしまった。ムンバイー警察は、著名な犯罪心理学者、スクリューワーラー博士(アヌパム・ケール)の指示に従い、美人のおとり捜査官をラーフルのもとへ送り込み、現行犯逮捕する作戦、ミッション・フェイルを始動する。おとり捜査官には、レイプ犯などの「女性の敵」への激しいお仕置きで知られるウルミラー・マルトードカル(イーシャー・コッピカル)が選ばれた。ウルミラーの胸にはホクロがあったため、ラーフルは彼女を歓迎し、一緒に住むように言う。ウルミラーはラーフルと一緒に住み始める。

 一方、カランは、DKの恋人キラン(ボビー・ダーリン)と電話で話し、一気に恋に落ちてしまう。キランは大金持ちの娘だったが、両親によって部屋に閉じ込められ、外に出られなかった。また、DKとはケンカをしており、DKは彼女に告げずに米国へ1ヶ月の旅行へ行ってしまっていた。カランはキランの資産目当てで彼女を電話で誘惑し、彼女と結婚しようとする。しかし、キランの両親はカランを追い出す。実はキランはオカマだった。だが、そうとは知らないカランは、電話の声だけでキランに言い寄っていたのだった。不安になった両親は、キランの妹で心理学者のレーカー(ネーハー・ドゥーピヤー)に相談する。レーカーはカランと会うが、実はカランとレーカーは学生時代の知り合いだった。カランはレーカーに「オレと暇つぶししない?」と軽い口調で告白し、レーカーに平手打ちをくらったという過去があった。レーカーは、普通の男の子だったカランが、同性愛者になってしまったのは自分の責任だと考える。レーカーは実はスクリューワーラー博士の教え子で、彼に相談したところ、スクリューワーラー博士はレーカーに、カランを誘惑して女性に興味を再び持つよう仕向けるように助言する。レーカーはカランと何度も会い、愛の告白までするが、キランの財産に目がくらんでおり、しかもキランを男性だとは知らないカランは、キランへの愛を曲げようとしなかった。レーカーは次第にカランに惹かれるようになる。

 また、スクリューワーラー博士の妻パールワティーは、夫が若い女性たちと密談しているところを何度も見て嫉妬し、ジムへ通ってシェイプアップを始める。

 ウルミラーはラーフルと暮らす内に、ラーフルが女性をレイプして殺害するような人間だとは信じられなくなる。また、いつの間にかラーフルを愛するようになってしまう。だが、警察はラーフルを犯人だと決めつけ、彼の顔を新聞に載せて指名手配する。

 一方、DKが旅行から帰って来たことにより、カラン、キラン、DKの三角関係が発生する。キランの両親は、カランもDKもお断りだった。DKは真夜中部下を家に侵入させてキランを誘拐しようとするが、ラーフルがその中に紛れ込み、キランを連れてカランの下へ急ぐ。カランは寺院で結婚式の準備をしていた。いざ結婚式を挙げようとすると、そこへDKやレーカーが辿り着く。カランとラーフルはキランの顔をよく見てみると男であることに気付き仰天する。DKはキランを連れて去っていく。ショックから立ち直れないカランだったが、傍にいたレーカーを見て、彼女にもう一度告白をする。レーカーはそれを微笑んで受け容れる。

 ラーフルは自宅へ帰るが、大勢の人が詰め掛けていた。警察がラーフルの家を家宅捜索していたのだ。群衆の一人がラーフルが指名手配犯であることに気付く。ラーフルは何が何だか分からずに逃げ出す。一度は警察に捕まりそうになるが、ウルミラーに助けられる。しかし、そのとき警察署に自首してきた男(ラージパール・ヤーダヴ)がいた。その男は、有名になりたいがために連続殺人をしていた異常者だった。警察とスクリューワーラー博士は急に態度を変え、ラーフルを犯人逮捕のための協力者だったということにしてしまう。こうして、ラーフルとウルミラー、カランとレーカーというカップルが生まれたのだった。

 下ネタ連発のお下劣コメディー映画。だが、セリフがよく考えられていた上に、笑いの中にホロリと涙があり、よく出来た映画だった。俳優の特徴や演技も最大限に引き出されていた。しかし、これだけお下劣なネタが連発されるインド映画は初めて観たかもしれない。

 主人公のラーフルとカランは、正反対の性格のコンビだったが、ひとつ共通点があった。それは、女性とまともに付き合ったことがないことだ。ラーフルは真面目で恥かしがり屋な性格で、女性の前でいつも上がってしまっていた。一方、カランは、一見プレイボーイ風で、ラーフルに対し事あるごとに自分の派手な女性体験を自慢するが、実はいつもナンパした女性から散々な目に遭っていた。そんな2人が恋人をゲットするまでの騒動を描いた映画だった。

 どんなお下劣シーンがあるのかは見てもらえば分かるが、例えばこんなシーンがあった。ラーフルがバリスタ(喫茶店)でコーヒーを飲んでいると、左胸にホクロがある色っぽい女の子を見つけた。ラーフルはその女の子を追いかけようとするが、そのとき女の子は階段でつまづいてバッグを落としてしまう。バッグと中身を拾おうと女の子がかがむと、ミニスカートからパンツが丸見えだった。と、そのときラーフルのパンツの中に偶然火の付いたタバコが入ってしまった。ラーフルは異変に気付いて慌て、股間を揉みしだく。最後にズボンの中に水を注ぎ込んで安堵の表情を浮かべる。その様子を警察の密偵がビデオカメラで撮影していた。ビデオで見ると、まるでラーフルが女の子の色っぽい姿を見て白昼堂々と自慰を始めたかのようだった。そして、ラーフルが連続殺人犯である証拠とされてしまうのだった。

 トゥシャール・カプールとリテーシュ・デーシュムクは二人とも二世男優だ。トゥシャールは往年の名優ジーテーンドラの息子で、映画界やTVドラマ界でプロデューサーとして活躍するエークター・カプールの弟。リテーシュはマハーラーシュトラ州のヴィラースラーオ・デーシュムク州首相の息子。彼らはそれらのコネのおかげで映画界デビューを果たしたと言ってよく、はっきり言って三枚目の男優だ。だが、三枚目俳優が三枚目であることを自覚し、それを売りにし始めたら、これほど強いことはない。「Kyaa Kool Hai Hum」はまさに二人にとってそんな映画だった。トゥシャールは「Gayab」(2004年)で冴えない男を演じ、僕は彼に「ヒンディー語映画界ののび太君」という称号を与えたが、その称号に恥じない駄目男振りを今回も発揮した。そしてそれが大成功を収めていた。リテーシュも、かっこつけているが実は中身のない男という役を、等身大で演じていた。

 二人の男優も素晴らしかったが、それ以上にこの映画で株を上げたのがイーシャー・コッピカルであろう。イーシャーは、「Company」(2002年)でアイテムガールとして出演して以来、「Khallas Girl」として有名になったが、彼女の方向性を決定的にしたのはレズをテーマにした「Girlfriend」(2004年)であろう。スポーティーで男気のある女を演じさせたらイーシャーほどはまっている女優はいない。「Kyaa Kool Hai Hum」では、コテコテのマラーティー語を話す暴力女警官を演じていた。イーシャーに比べたら、ネーハー・ドゥーピヤーは印象が薄かった。だが、サーニヤ・ミルザーのような黒ブチ眼鏡(インドでは「司書風眼鏡」と呼ばれる)をかけていてかわいかった。

 脇役陣では、アヌパム・ケールの演技が「さすが」のレベルである。「3つのボール」理論なる奇妙奇天烈な理論を唱え、それを基に連続殺人犯の逮捕に協力するのだが、「この事象の裏にはロジックがある」とか何とか言って、ますます事件をこんがらがらせていて面白かった。

 音楽はアヌ・マリクだが、「Dil Mera」の一曲だけリシ・リッチとジャイ・ショーンのコンビが手がけている。リシ・リッチーは英国在住のインド人で、今や世界的に有名になったバングラー・ミュージシャンである。ジャイ・ショーンも同じくインド系UKエイジアンで、リシ・リッチに見出されたシンガー。リシ・リッチとジャイ・ショーンは、「Boom」(2003年)の「Nachna Tere Naal」、「Hum Tum」(2004年)の「Mere Dil Vich Hum Tum」など、コンスタントにヒンディー語映画に曲を提供している。だが、「Kyaa Kool Hai Hum」ではリシ・リッチとジャイ・ショーン、それにJuggy DとヴェロニカというUKエイジアンのミュージシャンもミュージカルに登場し、リテーシュ、トゥシャールらと踊る。

 ひとつだけ、セリフの中で気になるものがあった。リテーシュ演じるカランが、ある色っぽい女の子をナンパするシーンがあるのだが、その女の子が「私には悩みがあるの。私には、ムスリムの長さか、グジャラート人の太さが必要なんだけど、なかなかそういう人が見つからないの」と言う。もちろんこれはあのことを指しているのだと思うが、ムスリムは長く、グジャラート人は太い、という認識はインド人一般のものなのだろうか。「ところであなたのお名前は?」と聞かれたカランは、「え、えっと、オレの名前はナスィールディーン・シャー(ムスリムの名前)」と答えるところが大爆笑である。

 「Kyaa Kool Hai Hum」は、下ネタ連発のお下劣映画だが、笑いと涙のバランスがうまく取られており、ストーリーにも大きな破綻はない。優れたコメディー映画と言うことができる。