Lucky

2.0

 これから酷暑期にかけていくつか期待作が公開されるが、その初陣を切るのが2005年4月8日公開のヒンディー語映画「Lucky」。ロシアが舞台のスケールの大きい映画で、予告編はなかなかの出来。公開を待ちわびていた。

 監督は新人で、ラーディカー・ラーオとヴィナイ・サプルーのコンビ。音楽はアドナーン・サーミー。キャストは、サルマーン・カーン、ミトゥン・チャクラボルティー、スネーハー・ウッラール(新人)。スネーハーはアイシュワリヤーを子供にしたような外見である。

 2004年ロシア、サンクトペテルブルグ。外交官の娘、ラッキー(スネーハー・ウッラール)は、学校に通う途中、暴漢に襲われ、何とか逃げ出し、傍に停めてあった自動車の中に逃げ込む。その車は、インド大使の息子、アーディティヤ(サルマーン・カーン)のものだった。アーディティヤは暴漢を打ちのめし、後ろにラッキーが乗っているとは知らずに自動車を発車させる。

 ところが、そのときちょうどロシアではテロリストの蜂起が起こり、アーディティヤたちも巻き込まれる。アーディティヤは、見知らぬインド人の女の子が同乗していることに驚きながらも、一緒に森林の中に逃げ込む。二人は、森の中にあった墓場で一晩過ごした。一方、インド大使館では、アーディティヤとラッキーの行方を確かめるため、凄腕諜報部員ピンディーダース・カプール(ミトゥン・チャクラボルティー)が召還される。ピンディーダースはすぐにアーディティヤの行方を突き止め、2人のもとへ向かう。

 ところが、そのときラッキーは誤って毒に汚染された水を飲んでしまい、意識を失ってしまう。アーディティヤはラッキーを連れて病院を探しに街へ行く。そこでインド人医師に会い、薬をもらうが、インド人医師はテロリストの捜索を強制的に行う軍隊を恐れ、アーディティヤたちを追い出す。アーディティヤとラッキーは雪の舞うサンクトペテルブルグを彷徨い、ピンディーダースと合流する。

 インド大使館は、ロシアに住む全てのインド人をインドに帰還させることを決定した。アーディティヤ、ラッキー、ピンディーダースは、ロシア軍の軍服を着て空港へ向かうが、途中でテロリストの襲撃に遭い、アーディティヤとラッキーは拘束される。だが、ピンディーダースの活躍により脱出に成功する。途中、またもピンディーダースとはぐれた二人は、雪原の中を彷徨う。やっとのことで鉄道駅に辿り着いたが、暴動から逃げる人々で埋まった列車に乗ることができたのはラッキーだけだった。アーディティヤは途中で倒れてしまう。だが、ラッキーは一度列車に乗ったものの、列車から飛び降り、ラッキーの倒れた場所まで戻る。アーディティヤもラッキーも、恋に落ちていたのだった。

 そこへ都合よくピンディーダースがやってくる。三人は空港へ直行し、今にも飛び立とうとしていたインド行きの飛行機に乗り込むことに成功する。

 蒸気機関車や戦車が豪快にスクリーンを揺るがすスケールの大きな映画だったにも関わらず、ストーリーは非常に矮小、単純、退屈だった。つまり、期待外れであった。見所はいくつかあるが、映画としての完成度は低い。

 まずは長所から挙げていこう。全編ロシア・ロケ(少しだけフィンランド・ロケ)というのは、最近のインド映画の中では非常に珍しく、映像に斬新さがあった。サンクトペテルブルグの壮大な建築物群、果てしなく広がる雪景色、1920年代から走り続ける蒸気機関車など、非常に迫力があった。特にサンクトペテルブルグを舞台に、ラッキーらインド人の女子学生4人が踊る「Lucky Lips」は秀逸。バックダンサーのロシア人お姉さんたちも本気で踊ってくれてるのが微笑ましい。軍隊とテロリストの交戦シーンは、ハリウッド映画に近い出来である。戦車や重装甲車が惜しげもなく走り回るのもインド映画のスタンダードを越えている。アドナーン・サーミーの音楽もよい。ミュージカルシーンは唐突な入り方のものが多いのがちょっと残念ではあるが。

 欠点の第一に挙げられるのは、ヒロインのスネーハー・ウッラールの大根女優振りである。一応内気な女の子という役らしいので、そういう雰囲気は出ていたが、演技というよりもただうじうじしているだけ、という印象を受けた。アイシュワリヤー・ラーイに似ているのはいいが、本家のようなオーラは彼女からあまり感じない。ミトゥン・チャクラボルティー演じるピンディーダースは、はっきり言って映画の出来を地の底まで貶めていた。お助けマン&コメディアンみたいな役柄なのだが、映画全体の雰囲気と全くそぐわなかった。だが、ミトゥンは下層のインド人に根強い人気のある男優であり、久し振りのスクリーン登場となっているので、インド人受けはいいかもしれない。一番退屈なシーンは、アーディティヤとラッキーが森林で一晩過ごすシーンである。二人が恋に落ちるきっかけとなるシーンではあるが、冗漫に描かれ過ぎており、アクビが出た。ロシアが舞台になっているだけあり、セリフの多くがロシア語だった。字幕などはないため、通常の観客は何となく予想するしかない。こういう言語的に不親切な映画はインド人にはあまり受けないだろう。それでいて、偶然ヒンディー語をしゃべれるロシア人が登場したりするから、おかしかった。

 サルマーン・カーンは、「普段はお調子者だが、いざとなったら頼れる男」という、いつもの役回りだった。けっこう流暢にロシア語をしゃべっていたが、果たして正しいロシア語であろうか?

 ロシアが舞台の映画であったが、暴漢やらテロリストやら、ロシアとロシア人が悪く描かれていたのは心配だった。ロシアに映画撮影の協力をしてもらったのに、こんな悪い描き方をしてしまっていいのだろうか・・・。

 スネーハーが乗っていると気付かずにアーディティヤが自動車を走らせるシーンでは、ビートルズの「Back In the USSR」が流れていた。ビートルズ・ファンとしては、ちょっと嬉しかった。

 「Lucky」は、見た目は合格、中身は失格、という映画である。映像の迫力はあるため、映画館で観るのだったらある程度はお勧めできる。