Musafir

4.0

 2004年12月10日から公開の新作ヒンディー語映画「Musafir」をPVRアヌパム4で観た。明日から旅行へ行くので、それに備えて目ぼしい映画は見ておこうと3日連続で映画館に通っている。来週からは今年最後の期待作と言ってもいい「Swades」(2004年)が始まるから楽しみだ。

 「Musafir」は「ムサーフィル」と読み、「旅人」という意味。サンジャイ・ダットのホワイト・フェザー・プロダクションが制作、監督は「Kaante」(2002年)のサンジャイ・グプター、音楽はヴィシャール・シェーカル。キャストはサンジャイ・ダット、アニル・カプール、マヘーシュ・マーンジュレーカル、サミーラー・レッディー、アーディティヤ・パンチョーリー、コーエナー・ミトラー(新人)など。

 ムンバイーで冴えないチンピラ生活を送っていたラッキー(アニル・カプール)は一発逆転を狙って仲間と共にマフィアから金を騙し取るが、その金は泣く子も黙る大マフィア、ビッラー(サンジャイ・ダット)のものだった。しかも金は恋人(コーエナー・ミトラー)に奪われてしまう。ラッキーはビッラーに追われ捕まるが、一度だけチャンスをもらう。それは、ゴアへ麻薬の入ったバッグを持って行って金と交換して持ち帰る仕事だった。

 ラッキーは自動車で一路ゴアを目指すが、その途中で悪徳警官タイガー(アーディティヤ・パンチョーリー)がビッラーの手下を殺したところを目撃する。ゴアを取り仕切っているタイガーはラッキーに目を付けるようになる。

 ゴアに着いたラッキーは、道端で偶然サム(サミーラー・レッディー)という美女と出会い、彼女を家まで送り届ける。そのまま家に入っておもむろに二人はキスを始めるが、そのとき家に夫のルカ(マヘーシュ・マーンジュレーカル)が入ってくる。ラッキーはそのまま立ち去る。

 ラッキーはビッラーから受け取った麻薬を現金と交換するが、手違いからその現金を失ってしまう。そのときルカがラッキーに、サムの殺人を持ち掛ける。ルカの話によると、サムは事あるごとに男を家に連れ込む淫乱な女で、いっそのこと殺してしまいたいとのことだった。サムは多額の報酬を約束する。その一方でサムもラッキーに、ルカの殺人を持ち掛ける。サムの話によると、彼女はルカに無理矢理妻にされており、その復讐をしたいとのことだった。ラッキーは二人からそれぞれ家の鍵を預かる。

 夜10時、ラッキーがルカとサムの家に侵入すると、既にサムがルカを殺した後だった。ラッキーはルカの家にあった金を持ち、サムを連れて逃げ出す。ところがルカは悪徳警官タイガーの兄弟で、しかもその金はタイガーのものだった。ラッキーはタイガーに追われるようになる。一方、ビッラーもゴアまで来ており、ラッキーを追う。

 結局タイガーとラッキーはビッラーに捕まり、金とサムはラッキーの手中に収まる。ビッラーは2人に命を懸けたギャンブルをするように強要する。サムの助けもあり、ラッキーはその賭けで生き残った。ビッラーはその場に2人と金を残して立ち去って行った・・・。

 サンジャイ・ダットの漢っぷり爆発の映画。サンジャイ・ダットの登場シーンは案外少ないものの、そのインパクトは他のどの登場人物をも凌駕する。まさに彼のためにあるような映画だった。インド人の若者の間でサンジャイ・ダットの人気は絶大なものがあり、この映画も彼らに熱狂的に支持されるのではないかと思う。

 マフィア役をやらせたら、サンジャイ・ダットの右に出る者はいない。マフィアを演じるというよりも、マフィアそのものなのではないかと思えて来てしまうほどだ(一応父親はのスニール・ダットは政治家)。この映画でもカリスマ的マフィアをまがまがしく演じており、そのかっこよさにしびれた。太葉巻をくわえ、バタフライナイフをカシャカシャと回しながら銃をぶっ放すという、まるでアメコミのキャラクターのようなマフィアをいとも簡単にこなしてしまっていた。しかもセリフがかっこいい。「全く皮肉なもんだぜ。ガーンディージーは一生涯を非暴力のために捧げた。だが、事もあろうに政府はガーンディージーの顔を暴力の元凶に印刷しやがった・・・金さ!」インドの全ての紙幣には確かにマハートマー・ガーンディーの肖像が印刷されている。・・・このセリフはギャグか、それともかっこつけか?こんなにまがまがしいセリフは今まで聞いたことがない。ラストで、苦労して奪った金をラッキーとサムに残して、アメリカン・バイクで颯爽と去っていく姿もかっこよすぎる。・・・なぜ金を彼らに残したのかはいまいち理解できないが・・・。

 久し振りにアニル・カプールをスクリーンで見た。いい演技をしていたが、サンジャイ・ダットの前ではただのおっさんに見えてしまう。「ラッキー」という名前ながら、ひたすらアンラッキーなのが笑えた。サムを演じたサミーラー・レッディーは、「Darna Mana Hai」(2003年)や「Plan」(2004年)に出ていた若手女優だ。何か物言いたげな目と口が魅力的だと感じた。マヘーシュ・マーンジュレーカルもマフィア映画には欠かせない人物である。憎々しい笑みがいい味を出している。彼は俳優の他、監督業もやっており、「Rakht」(2004年)などを監督している。

 いくつかのミュージカルシーンも印象的だった。一番よかったのは「Tez Dhaar」。ただサンジャイ・ダットがリムジンの中で白人の美女に囲まれて体を揺らしているだけの踊りだが、なぜか無性にかっこよかった。「Ishq Kabhi Kario Na」や「Saaki」などもよかった。ほぼ全てのミュージカルは、露出度の高いアイテムガールが色っぽい踊りを踊るものだった。

 日本人にとって、おそらくサンジャイ・ダットはインド映画ハマリ度のリトマス試験紙ではないかと思う。インド映画を全く知らない人がサンジャイ・ダットの出ている映画を観たら、「なにこの濃いおっさん?」という感じだろう。何を隠そう、僕が初めてインドで見たインド映画もサンジャイ・ダットの映画だった。そのときは全然好きになれなかったのだが、インド映画の魅力が分かってくる内に、次第にサンジャイ・ダットの魅力も分かってきたように思える。しかし、いたいけな女性がインドで「私はサンジャイ・ダットが好き」などと公言してしまうと、周囲のインド人を引かせてしまうから気を付けなければならない。サンジャイ・ダットは女人禁制的魅力があると思う。

 サンジャイ・ダットのファンならば絶対に見るべき映画。サンジャイ・ダット抜きにしても割と凝ったストーリーだったが、インド映画初心者にはインパクトが強すぎる映画ではないかと思う。