Dhoom

4.5

 ハリウッドのアクション映画では、ジョン・ウー監督の「ミッション・インポッシブル2」(2000年)辺りから、カーチェイスの代わりにバイクチェイスが一時的に流行した。一昔の映画では「イージー・ライダー」(1969年)がバイク映画の金字塔と言えるだろう。インドでは二輪は「中産階級の乗り物」というイメージが強く、四輪車に比べて決してかっこいいイメージはない。しかしながら、ハリウッド映画の影響からか、最近バイクのかっこよさを前面に押し出した映画がチラホラ出ている。例えば「Janasheen」(2003年)はバイクレーサーが主人公の映画だった。そんな中、いよいよ真打登場。スズキの大型バイクが何台も爆走しまくる、バイク野郎のバイク野郎によるバイク野郎のための映画、「Dhoom」が今日(2004年8月27日)から公開された。PVRアヌパム4で鑑賞した。

 「Dhoom」とは「騒音」みたいな意味。監督はサンジャイ・ガードヴィー、音楽はプリータム。キャストはアビシェーク・バッチャン、ウダイ・チョープラー、ジョン・アブラハム、イーシャー・デーオール、リーミー・セーンなど。パリーザード・ゾーラービヤーンがゲスト出演。しかしこの映画の真の主人公はスズキのバイクたち。Suzuki Hayabusa(1300cc)、Suzuki Bandit(1200cc)、Suzuki GSX-R600(600cc)などが登場する。

 ムンバイーで輸入大型バイクに乗った四人組の強盗事件が相次いでいた。いくら警察が必死で追いかけても、時速300km以上出るように改造されたバイクに乗った4人組を捕らえることはできず、途中で雲隠れしてしまっていた。担当となったジャイ警視監(アビシェーク・バッチャン)は、市内で盗難バイクを輸入車風に改造して売るアリー(ウダイ・チョープラー)を逮捕する。アリーはムンバイー随一のバイクレーサーでもあった。ジャイはアリーを疑っていたが、アリーを拘留している間にも強盗事件が発生した。

 強盗団を率いていたのはカビール(ジョン・アブラハム)だった。カビールとその仲間は普段はピザ屋で働いていた。エクスプレスハイウェイ近辺で強盗が多発していることに目を付けたジャイは、次の目標と思われる場所に張り込む。ジャイの予想は的中し、大型バイクに乗った四人組の強盗団が現れた。ジャイはアリーのバイクに二人乗りして追跡するが、一人を負傷させるものの全員取り逃がしてしまう。この事件をきっかけに、カビールはジャイに挑戦状を叩き付け、次の目標を州首相主催のチャリティーコンサートだと宣言する。ジャイとアリーは会場に張り込む。

 ところで、チャリティーコンサートのメインダンサーを務めていたのはシーナー(イーシャー・デーオール)だった。アリーは以前にもシーナーと偶然会っており、一目惚れしていた。シーナーを見たアリーは持ち場を離れて一緒に踊り出すが、その瞬間、カビールら強盗団がチャリティーで集めた金を奪ってバイクで逃走した。ジャイは何とか最後尾にいた男を射殺するが、他の3人はまんまと逃走してしまう。ジャイは衆目の前で持ち場を離れたアリーと殴り合いのケンカをし、その様子が全国に放送されてしまう。

 一方、1人メンバーを失ったカビールは、至急メンバーを補充しなければならなかった。彼が目を付けたのはアリー。TVでアリーがジャイと絶交したことを知っており、彼に声を掛けた。アリーはカビールの仲間となり、共にゴアへ向かう。カビールはゴアで最後の大仕事を計画していた。ゴアの高級ホテルの地下に保存されている1億8千万ルピーの現金を盗む計画である。また、実はシーナーもカビールの仲間であることが発覚した。カビール、アリー、シーナーら六人の強盗団は、それぞれバーテンダー、宿泊客、ボーイ、コックなどに変装してホテルに忍び込む。ところが、そのホテルには、州首相チャリティーコンサートの失敗で警察官の職を失ったジャイが、妻のスウィーティー(リーミー・セーン)と共に来ていた。それでもカビールは作戦を決行することを決意する。

 ニューイヤーパーティーの日、カビールらはホテルの地下から金を盗み出す。ところが、これは全てジャイとアリーによって仕組まれた罠だった。アリーはやはりジャイの味方だったのだ。盗難の様子は全てビデオカメラで撮影されており、カビールらはジャイに逮捕される。一方、アリーとシーナーは金を持って去っており、アリーはシーナーを縄で縛って「オレと結婚しよう、そうすれば逮捕されないですむぜ」とプロポーズをする。だが、カビールらは隙を見て逃走し、アリーのところへやって来る。今度はアリーが殺されそうになるが、そこへジャイが駆けつける。カビールはトラックで逃走し、ジャイとアリーはボートで追いかける。最後に逃げられないと悟ったカビールは、バイクで崖から海へ転落する。

 個人的にバイクが好きなので、バイクが主人公のこの映画はかなり楽しめた。だが、ストーリーははっきり言ってありきたりなので、冷静な目で見ればあまり楽しくないだろう。日本の大型バイクがインドを走るという点にロマンを見出せない人には退屈な映画に映る可能性が高い。

 この映画の最大かつ唯一の見所は、インドでは普通手に入らない輸入バイクがレースやチェイスをするいくつかのシーンである。突然ウイリーしたりジャックナイフしたりもするので、けっこうすごい。特にジョン・アブラハムが乗っていた1300ccのHayabusaは、世界で最も速いバイクと言われており、最高時速は300kmを越える。大型バイクの群れの後ろの方で、225ccのカリズマが数合わせとして密かに走行していたのも僕は見逃さなかった。ちなみに、ウダイ・チョープラーが乗っていた黄色いバイクがBanditで、強盗団が乗っていた黒いバイクがGSX-R600である。1000cc超のバイクに比べたら、カリズマはオモチャみたいなものだ・・・。また、序盤で強盗団の仲間がかっこいいスポーツカーを買ってみんなにみせびらかすシーンがある。しかしカビールは、すぐにそのスポーツカーを崖からわざと落としてしまう。四輪車では強盗をした後に逃げ切るのが難しいからだ。このシーンから、「男はやっぱり四輪より二輪だぜ!」というメッセージを感じた。

 これだけバイクがメインになっていたのに、クライマックスにバイクチェイスがなかったことが意外だった。代わりにトラックvsボートの変則的チェイスが繰り広げられた。このシーンはこのシーンでなかなか緊迫感があったのだが、残念な気がした。また、途中2台のGSX-R600が転倒し、最後にはHayabusaが海の藻屑と消える。そんなもったいないことするなら、僕にくれ~と泣きそうになった。カビールら強盗団が、普段はピザ屋の宅配スクーターに乗っているところは憎い演出だった。アビシェークがバイクを走らせるシーンが全くなかったのは、やはり彼の運動音痴のせいだろうか・・・。

 主人公の三人――アビシェーク・バッチャン、ウダイ・チョープラー、ジョン・アブラハム――は皆まあまあの演技をしていた。アビシェークはますます渋い男優になってきたが、アジャイ・デーヴガンと似通ったキャラクターになっているのが懸念である。ウダイ・チョープラーは今回最もはまり役だったかもしれない。トップレーサーでありながら、なぜか女の子にもてないというお調子者キャラだった。ジョン・アブラハムはいつも通りの寡黙な役。今回はぶち切れることもなく、なかなかかっこよかった。一方、女優陣はほとんど装飾品に近かったので特筆すべき点はない。

 「Dhoom」のサントラでは、実はけっこう国際的な顔ぶれが揃っている。「Shikdum」は、トルコの人気歌手タルカンの曲「Sikidim」のカバー曲。タイトル曲の「Dhoom」は、タイの人気歌手タタ・ヤンが「Dhoom Dhoom」でカバーしており、CDに収録されている。

 完全に男をターゲットとした映画なので、女性には全く受けない映画かもしれない。しかし、僕はかなり壺にはまった。今年のアルカカット賞に輝きそうな映画である。