Tum?

2.0

 2004年2月20日公開のヒンディー語映画「Tum?」をチャーナキャー・シネマで観た。マニーシャー・コーイラーラーが主演している映画である。僕の周りにはなぜかマニーシャー・ファンが多く、まだ観てないうちから映画の感想を求められるので、なるべく早く観ておこうと思った。

 「Tum?」とは「お前が?」という意味。監督はアルナー・ラージェー(女性監督)。キャストはマニーシャー・コーイラーラー、ラジャト・カプール、カラン・ナート、ナタンニャー・スィン、アマン・ヴァルマー。

 大企業の社長ヴィノード・グプター(ラジャト・カプール)は、妻カーミニー(マニーシャー・コーイラーラー)と18回目の結婚記念日を祝うためにモーリシャスでのバカンスを用意した。ヴィノードは仕事で忙しく、カーミニーは先にモーリシャスへ行って彼を待っていた。しかしヴィノードは結婚記念日の前日まで仕事をしていた。カーミニーは寂しい気持ちでいっぱいだった。

 モーリシャスでカーミニーは、ジャティン(カラン・ナート)という若者と出会う。ジャティンはカメラマンで、カーミニーに「写真を撮らせてくれ」と言い寄り、次第にカーミニーも彼に心を開くようになる。しかしジャティンと夕食を共にしたカーミニーは泥酔し、翌日目を覚ましたときにはジャティンが横に寝ていた。典型的なインド人女性だったカーミニーは、自身が犯した罪を自分で責める。その日の夕方、ヴィノードはモーリシャスに到着する。カーミニーは昨夜起った出来事を夫に話すことができず、一人罪の意識に苛まれることになる。カーミニーはもう二度とジャティンと関わりたくなかったが、ジャティンは何食わぬ顔で彼女たちの前に現れ、ヴィノードと名刺交換をした。

 ムンバイーに帰ったヴィノードとカーミニーは、再び日常生活を送っていた。二人の間には息子と娘もおり、幸せな家庭を築いていた。しかしその幸せを打ち破る電話がかかった。ジャティンからの電話だった。ジャティンはあの夜以来、カーミニーのことが忘れられなくなっていた。ジャティンは、あともう一度だけ会って欲しいと頼み込む。カーミニーはもちろん受け容れなかったが、ジャティンはヴィノードにも電話をして、また何食わぬ顔で彼らの家を訪問する。カーミニーの娘のプリーティはすっかりジャティンのことが気に入ってしまい、自分をモデルにして欲しいと頼む。

 一方、ジャティンにはトップモデルのイーシャー(ナタンニャー・スィン)という婚約者がいた。イーシャーはモーリシャスから帰って以来ジャティンの様子がおかしいことに気付き、何があったのか問いただす。イーシャーは、ジャティンがカーミニーと寝たことを知って激怒し、カーミニーに怒りの電話をかける。ジャティンからの誘惑の電話と、イーシャーからの怒りの電話に悩まされ、次第にカーミニーはヒステリーに陥っていく。そんな母の変化を敏感に感じ取っていたのは、息子だった。

 遂にジャティンは最終手段に出る。ジャティンはカーミニーに、「俺ともう一晩一緒に寝ろ、そうでなければプリーティを犯す」と伝える。プリーティはジャティンに写真を撮ってもらうために彼の待つ家へ行く。動転したカーミニーを見て、息子はプリーティを尾行し、カーミニーもその後を追い、ヴィノードもまたその後を追う。また、イーシャーもジャティンの友人ラリトを連れてその家を訪れる。

 イーシャーがその家に入ったとき、そこにあったのはジャティンの死体だった。自殺か?他殺か?他殺だとしたら、いったい誰が殺したのか?ユースフ刑事(アマン・ヴァルマー)がやって来て事件の調査を行う。ユースフはすぐにジャティンとグプター家とのつながりをつきとめ、彼らの家を訪れる。グプター家には、「弁護士が来るまで何もしゃべらない」と主張するヴィノード、ただ震えるカーミニー、傷だらけの息子、泣きじゃくるプリーティがいた。カーミニーは、自分がジャティンを殺したと自供するが、ユースフはそんな単純な事件ではないと推測した。ユースフはグプター一家とイーシャー、ラリトを事件現場に呼び寄せ、一人一人の説明を聞く。結局真犯人は思わぬ人物であった。

 最初はインド映画特有のストーカー恋愛モノかと退屈な思いで観ていたが、最後の30分で突然サスペンス映画に急変し、なかなか面白い結末になっていた。何よりマニーシャー・コーイラーラーが好演しており、マニーシャー・ファンは必見の映画だと感じた。ただし、最初の2時間は、インド映画の平均レベルを越えたベッドシーン以外には退屈極まりないで、途中で席を立たないように辛抱強く鑑賞してやらなければならない。

 ストーリーの結末は、あらすじに敢えて入れなかった。ある意味意外な結末だし、ある意味予想できた結末だ。だが、いきなりジャティンが殺されてしまうのには驚いた。ジャティンが死んで終わり、という終わり方は十分あり得たが、ジャティンが死んだところからこの映画の本編が始まっているような感じで、不意打ちをくらった。ストーカー恋愛映画から一転して刑事サスペンス映画へ。このままストーカー映画の定石を踏襲して終わるのかとアクビを繰り返していた最中の、全く予想していなかった展開だった。もちろん、急すぎて映画のバランスを崩しているのだが、それを非難したらこの映画に取り得がなくなってしまうので、一応褒めておく。ちなみに真犯人のヒントはこの映画の題名にある。本当に「おいおいお前かよ?」という感じだ。

 マニーシャー・コーイラーラーの演技は光っていた。老けた印象は否めず、この映画でも結婚18年目、二児の母親役になってしまっていた。最近のインドの女優の中では、最速のスピードで老けた人だろう。しかもだいぶ太ってしまったと思っていたのだが、この映画ではそこまで太っているようには思えなかった。シェイプアップに成功したのだろうか。だが、確かな演技力があるので、これからこのまま母親女優に転身していく予感がする。

 カラン・ナートは、「Sssshhh…」(2003年)や「LOC Kargil」(2003年)などに出演していた新人男優である。いまいちスター性がないが、悪い演技をしているわけではないので、これから出演機会が増えてくる男優だろう。演技という点では、後半からの出演で、刑事役を演じたアマン・ヴァルマーの方が上だった。アマン・ヴァルマーは「Andaaz」(2003年)や「Baghban」(2003年)で脇役として出演していた。ただ、ユースフ刑事とその部下のやりとりがコメディーっぽかったのだが、これは蛇足だったように思えた。

 最近のインド映画では、映画中に企業製品の宣伝が、ときにさりげなく、ときに大胆に行われ、識者の反感を買っている。特にペプシやコカ・コーラの宣伝合戦は壮絶である。だが、この映画では現在デリーで密かな人気を誇っている「レー・ベリー」のCMが入っていた。レー・ベリーの「レー」とはラダック地方のレーで、「ベリー」はブルーベリーとかのベリーである。レーでしか取れない木の実のことで、その実のジュースが「レー・ベリー」としてパックに入って売り出されており、現在デリーで人気だ。なかなかおいしくて、僕も一時期はまっていた。これから暑くなるので、またはまるかもしれない。どうやら若返りの効果があるようで、健康食品としてその内日本に輸出されることもあるかもしれない。

 この映画の最大の突っ込みどころは、なぜジャティンは、トップモデルで恋人のイーシャーよりも、年上で人妻のカーミニーに恋してしまう必要があったのか、ということだ。確かにイーシャー役を演じたナタンニャー・スィンはけばい女優だったが、一応トップ・モデルという設定なのだから、ジャティンは素直にイーシャーと結婚しておけばよかったのだ。

 音楽は全く印象に残らず、ミュージカルシーンはほとんどないに等しい。マニーシャー・コーイラーラーと、最後の30分を楽しむためなら、観る価値はある映画である。