Plan

2.5
Plan
「Plan」

 よくよく思い出してみると、僕が初めてインドを旅行した1999年にデリーの映画館で見た映画が、サンジャイ・ダット主演の「Daag: The Fire」だった。ビルの屋上から機関銃をぶっ放して飛び降りてくるサンジャイ・ダットにぶっ飛んだものだった。なぜか最近サンジャイ・ダットが出演する映画が頻繁に公開されており、新年早々サンジャイ尽くしである。今日は、2004年1月9日公開の「Plan」をPVRアヌパム4で観た。

 「Plan」のキャストは、サンジャイ・ダット、ディノ・モレア、サンジャイ・スーリー、ビクラム・サルージャー、ローヒト・ロイ、マヘーシュ・マーンジュレーカル、プリヤンカー・チョープラー、リヤー・セーン、パーヤル・ローハトギーなどである。監督はフリダエ・シェッティー、プロデューサーはサンジャイ・グプターとサンジャイ・ダット、音楽はアーナンド・ラージ・アーナンド。2002年に公開されたヒット作「Kaante」と同じチームと銘打たれており、サンジャイ・ダット、サンジャイ・グプター、マヘーシュ・マーンジュレーカル、アーナンド・ラージ・アーナンドなどが共通している。

 ムンバイーへ向かう列車のコンパートメントでたまたま同席した四人の若者は、ムンバイーにそれぞれ目的を持って来ていた。ボビー(ディノ・モレア)は映画男優になるのを夢見て田舎を飛び出してきた。オーミー(ローヒト・ロイ)は、父親の金を盗んでムンバイーに逃亡した男を捕まえ、金を奪い返すために来ていた。ジャイ(ビクラム・サルージャー)は、ムンバイーの大学に行ってしまった恋人を追いかけて来ていた。ギャンブル好きのラッキー(サンジャイ・スーリー)は、一獲千金を夢見て家を飛び出てムンバイーを目指していた。

 ところが、四人の田舎者にとってムンバイーは巨大な都市過ぎた。何とか住む家を確保するが、それぞれの夢は急速にしぼんでいった。ボビーは映画プロデューサーのもとを訪れるが相手にしてもらえない。オーミーが追い求めていた、父親の金を盗んだ男というのは実は彼の友人で、オーミーはただムンバイーに来たいがために、彼に金を盗ませて計画的にムンバイーに来たのだった。ジャイの昔の恋人(リヤー・セーン)は彼のプロポーズを拒否した。ラッキーはギャンブルに明け暮れる毎日だった。結局四人は、ムンバイーで無為に過ごすようになった。

 だんだん皆の懐が寒くなってきたある日、四人は一獲千金を計る。ありったけの金をラッキーに渡して、彼の強運を利用してギャンブルで大金を獲得しようという計画だった。ラッキーは順調にカジノで勝ち続けるが、欲を出したために大負けしてしまう。こうして四人は一文無しになったばかりか、70万ルピーの借金を抱えてしまう。カジノのオーナーは7日以内に70万ルピーを払わなければ命はない、と脅す。

 切羽詰った四人は、誰か大金持ちを誘拐して身代金を巻き上げる計画を立てる。しかし彼らが誘拐したのは、よりによってムンバイーの裏社会を支配するマフィアのドン、ムーサーバーイー(サンジャイ・ダット)だった。しかし、実はちょうど彼らがムーサーを誘拐したときに、ライバルのマフィア、スルターン(マヘーシュ・マーンジュレーカル)がムーサーの部下を寝返らせてムーサー暗殺を計画しており、結果的に四人はムーサーの命を救ったことになった。ムーサーは自分を誘拐した四人を殺すところだったが、それに免じて彼らを許すことにした。

 ムーサーには、ラーニー(プリヤンカー・チョープラー)という恋人がいた。ラーニーはキャバレーのダンサーで、ムーサーとの結婚を望んでいたが、その話を持ち出すといつも、結婚なんて考えていないムーサーとケンカになるのだった。ムーサーはスルターンへの復讐を決めるが、部下全てを失ってしまった今、彼を助けるのは、ボビーら四人しかいなかった。ラーニーは四人を無理矢理ムーサーの部下にして、スルターン復讐を手伝わせる。スルターンの部下を次々に始末している内に、いつの間にか、ムーサーと四人は心を通わせるようになる。

 やがてスルターンの居場所が分かった。四人をマフィアの道に引き込みたくなかったムーサーは、彼らを田舎に帰し、単身そこへ乗り込むことを主張するが、四人はムーサーについて行くことを嘆願する。こうしてムーサーは四人を引き連れてスルターンのアジトに殴りこみをかけ、激闘の末にスルターンに復讐を果たす。

 ムンバイー駅で四人を見送るムーサーとラーニー。四人が去った後、ムーサーはラーニーに言う。「結婚しようか。」

 多額の借金を抱えた田舎者四人組がマフィアのボスを誘拐するという、荒唐無稽なストーリーだったが、まあまあ楽しめる映画だった。変な髪形をしてアルマーニのスーツに身を固めたサンジャイ・ダットがかっこよすぎる!マフィアの役をやらせたら、例えプロフェッショナルな悪役俳優であっても、彼にかなう者は現在のヒンディー語映画界にはいないだろう。「Munna Bhai M.B.B.S.」(2003年)でコメディー色満点のマフィア役、この映画で正統派マフィア役、どちらもピッタリはまっていたからすごい。

 ムンバイーに着いたばかりで右も左も分からない四人がまず向かった先が、ムンバイーの売春街グラントロードだった。本物のグラントロードがどんな雰囲気なのか知らないが、デリーの売春街GBロードを見る限り、この映画で描かれている売春街のイメージは現実にはあり得ないと思う。住み心地が悪かった四人はすぐにグラントロードを出て、オンボロマンションに部屋を借りることにしたのだった。

 普通に考えたら、マフィアのドンを簡単に誘拐できるはずがないが、ちょうどそのときはライバルのマフィア、スルターンによって部下たちが買収され、彼の警護から外れていたので、スムーズに誘拐できたのだった。ちなみに四人は、クロロフォルムで気絶させて誘拐していた。しかし、彼がムンバイーでその名を知らぬ者がいないほどのマフィアであることを知って四人は大慌てする。

 ムーサーは次第に四人をかわいがるようになり、映画プロデューサーに電話してボビーを映画スターにさせてあげたり、四人の70万ルピーの借金問題を解決してあげたりした。しかし、「ムーサーバーイーのようになるんだ!」と調子に乗る四人たちを怒鳴りつける。「俺みたいになマフィアになりたいのか?こんな生活をお前たちにさせたくない。四人とも今から田舎へ帰れ!」四人はしぶしぶ身支度をするが、最後にスルターン復讐を手伝うことになる。

 サンジャイ・ダットは、実生活もマフィアみたいなものだと思うので、映画中の演技は演技というよりも全て地だろう。アルマーニのスーツにグッチの靴、ロレックスの時計、彼が2丁の拳銃を構える姿は、何の違和感もない。サンジャイ・ダットは、映画スターの中で一番会ってみたくない俳優である。

 プリヤンカー・チョープラーは依然として体のバランスが変。腰から尻にかけてのラインが細すぎる。病気の一種ではないかと心配するくらい不思議な体の形をしている。割と好きな女優で、大スターになれるオーラがあると思うのだが、あまりこれと言った成長が見られず、期待していたほどブレイクしないかもしれない。今回は姉御っぽい役を演じていた。ディノ・モレアも好きな男優だが、この映画では登場人物が多かったために影が薄くなっていた。彼も今ひとつ成長が見られない。ダンスもあまりうまくない。かえって悪役のマヘーシュ・マーンジュレーカルの方が、ぐっと観客を引きつける演技をしていた。

 ダンスシーンは手抜きに思えた。四人組の踊りの息が合っていない上に、サンジャイ・ダットの踊りは「これでいいのか?」と思うくらい動きが固い。アーナンド・ラージ・アーナンドの音楽にもあまり魅力を感じなかった。

 別につまらないことはないのだが、すごい楽しいというわけでもなく、別に見なくてもよかった映画だと僕は思った。サンジャイ・ダットのファンなら楽しめるのだろうが・・・。