Kuch Naa Kaho

1.5
Kuch Naa Kaho
「Kuch Naa Kaho」

 最近デリーの高級映画館は週末どこも大混雑である。当日そのまま行ってチケットを取るのが困難というか不可能になってきたように感じる。以前はヒット作以外だったら上映時間10分前に行っても手に入っていたのだが、今ではヒット作はまず真っ先に満席になるのはもちろんのこと、それによって他の作品にも観客が流れ込むので、週末はどの映画も必ず満席になる。映画館側からしたら大儲けだろう。

 今日は、2003年9月5日公開の最新作「Kuch Naa Kaho」を、パテール・ナガルの高級シネマコンプレックス、サティヤム・シネプレックスで見た。ここの混雑ぶりも相当なもので、PVR系列の映画館よりも駐車場の整備が整っていないため、出入口は動けないくらい渋滞となっている。

 「Kuch Naa Kaho」とは「何も言わないで」という意味。監督はローハン・スィッピー。主演はアイシュワリヤー・ラーイとアビシェーク・バッチャン。特に期待をしていたわけではないが、アイシュワリヤー・ラーイが出演していたために見てみたいと思った。やはりインドの至宝は巨大なスクリーンで楽しまなければ。

 ニューヨークで母親と共に住んでいたラージ(アビシェーク・バッチャン)は、従姉妹の結婚式に出席するためにムンバイーへやって来た。父親のいないラージにとって、叔父のラーケーシュ(サティーシュ・シャー)は父代わりの存在だった。今回はラーケーシュの長女の結婚式のためにラージを呼び寄せたわけだが、その他にラージのお見合いをさせる目的もあった。

 ラージは結婚する気などなかったが、ラーケーシュは会社の部下のナムラター(アイシュワリヤー・ラーイ)を付添い人にしてラージのお見合いを無理矢理決行させる。ラージはお見合い相手を適当にかわしてやり過ごすが、その内ナムラターに恋をしてしまう。

 ところがナムラターは既婚で、アーディティヤという息子もいた。だが、夫のサンジーヴはアーディティヤが生まれる前に失踪しており、7年間ナムラターは女手一人でアーディティヤを育ててきたのだった。アーディティヤはラージを気に入り、自分のお父さんになってくれるように頼むが、ラージの気持ちをしったナムラターは彼を避けるようになる。

 ラージはナムラターが既婚であると知りながらも、彼女と結婚することを決意する。ナムラターも遂に彼の熱意に負け、ラージと再婚することを決める。だがそのときに突然夫のサンジーヴが現れる。サンジーヴは金を儲けるためにアメリカへ行っていたのだった。だがナムラターもアーディティヤも、サンジーヴを受け入れることはできない。サンジーヴは自分がいない間に父親としての地位を確立したラージに対して次第に強硬な姿勢をとるようになる。

 従姉妹の結婚式の日。遂にサンジーヴ、ラージ、ナムラターの複雑な関係が一触即発の状態となる。そこでナムラターはラージと共に住むことをサンジーヴをはじめ皆の前で宣言する。サンジーヴはナムラターとアーディティヤをラージに託し、その場を去っていく。

 映画の題名通り、何もコメントしたくないほど退屈な映画だった。アビシェーク・バッチャンが出る映画はどうしてこうもつまらなくなってしまうのだろうか?別に彼だけの責任ではないと思うのだが、なぜか彼のせいでつまらなくなったかのように思えてしまうのは役得というか役損か。

 一応僕はどんな映画でもいいところを見つけて書くようにしているので、今回もそうしよう。まず、最初のスタッフロールはなかなか面白かった。テロップで俳優やクルーの名前を紹介するのではなく、映像の中のオブジェクトにそのまま名前が映し出されていた。しかしてっきりアイシュワリヤー・ラーイの入浴シーンかと思わせておいて、実はアビシェーク・バッチャンのだったというのは客をおちょくり過ぎだと思う。

 アビシェーク・バッチャンの演技は、無表情で黙っているシーンくらいしか褒めるべきところがない。アイシュワリヤー・ラーイも今回はあまり魅力的に描かれていなかった。それにしても7歳の子供の母親役になってしまっていいのだろうか、アイシュは?まだお母さん女優に転向するのは早すぎると思うのだが・・・。

 映画の中で、音楽の良さだけは際立って光っていた。音楽監督はシャンカル・エヘサーン・ロイのトリオ。「Dil Chahta Hai」(2001年)の音楽監督で、ユニークな音楽を作るので僕はけっこう好きだ。「Kuch Naa Kaho」の音楽ではテーマ・ソングの「Kuch Naa Kaho」、新感覚ディスコソング「Tumhe Aaj Maine Jo Dekha」などがよかった。ちなみに「ABBG」という曲があるが、これは映画を観て初めてどういう意味か分かった。歌詞は英語のアルファベットが一見無造作に並んでいる。「ABBG TPOG IPKI UPOG」のように。これはよく見たら英語の混じったヒンディー語になっており、「ちょっと奥さん、お茶を飲んでくださいな、私は飲んで来ました、あなたが飲んでください」という意味になっている(エー、ビービー・ジー、ティー(茶) ピーオー・ジー、アイ(私) ピーケ アーイー、ユー(あなた) ピーオー・ジー)。この曲の言葉遊びには脱帽。