Footpath

1.5

 おそらく「Koi… Mil Gaya」(2003年)は今年最大のヒット作となるだろうが、これからも楽しそうなヒンディー語映画が続々とリリースされる。インド映画ファンとして、今の時期インドにいれるのはなんて幸せなことだろう。しかしインド映画は一筋縄ではいかないので、いくら楽しそうに見えても実際に見たらガクッと来る作品も少なくない。どれが名作でどれが駄作か、ちゃんと見極めないといけない。鑑識眼が問われるところだ。

 今日は「Footpath」という映画を観た。2003年8月15日公開で、2002年のヒット作「Raaz」のヴィクラム・バット監督作品である。主演はアーフターブ・シヴダーサーニー、ビパーシャー・バス、ラーフル・デーヴ、イムラーン・ハーシュミー(新人)、アパルナー・ターリク(新人)。

 少年時代に事件に巻き込まれてムンバイーからデリーへ単身逃れてきたアルジュン(アーフターブ・シヴダーサーニー)は、12年間名前を変えて暮らしていたが、ある日突然踏み込んできた警察に捕まる。しかし警察は彼を逮捕しに来たのではなく、おとり捜査を依頼するために来たのだった。アルジュンがムンバイーで暮らしていたときの不良仲間であるシェーカル(ラーフル・デーヴ)とラグ(イムラーン・ハーシュミー)は、今ではムンバイーの麻薬取引を牛耳るマフィアとなっていた。警察はアルジュンに、彼らの組織へ入り込んで情報を流すように命令する。アルジュンはかつての友を欺くことをためらいながらも、彼らの命がそれによって助かるならと引き受けることにする。

 アルジュンはムンバイーに戻り、シェーカル、ラグと再開する。アルジュンは簡単に組織の中に入ることに成功する。また、少年時代のガールフレンド、サンジュナー(ビパーシャー・バス)とも再開し、恋に落ちる。

 シェーカルは組織のボスとして冷酷非情な男となっていたが、アルジュンやラグとの友情は忘れてはいなかった。ラグは考えるより先に銃をぶっ放す短気でおっちょこちょいな男だが、憎めない性格をしていた。ラグは下町で英語教室を開いているマダム(アパルナー・ターリク)に恋をしており、彼女のためにいろいろ問題を引き起こしていた。シェーカルの上には「シェーク」と呼ばれる大ボスがおり、シェーカルはラグがヘマをしでかすたびにシェークに呼び出されては大目玉を喰らっていた。

 シェーカルはアルジュンが警察のおとり捜査官であることを知り、またラグの度重なる失態に愛想を尽かし、シェイクにそそのかされて二人を殺すことを決める。アルジュンは殺されなかったが、ラグはシェーカルに殺される。一方、アルジュンもシェークの上にはさらに警察の署長が絡んでいることを突き止める。アルジュンは国外逃亡しようとするシェーカルを身をもって止めて刺し違える。シェーカルは死に、アルジュンは九死に一生を得た。アルジュンはサンジュナーと結婚し、自分の人生を小説にまとめるのだった。

 限りなく下らない映画。特に前半はもう途中退場しようかと思ったぐらいに退屈だった。全く見る価値なし。唯一、新人のイムラーン・ハーシュミーはスバ抜けていい演技をしていた。決してハンサムな顔はしていないが、脇役俳優として、曲者俳優として、これから活躍が期待されそうな俳優だった。同じく新人のアパルナー・ターリクは、全然駄目。音楽はナディーム・シュラヴァンだが、音楽も手抜きであることが見え見えだった。

 ビパーシャー・バスは2001年に「Ajnabee」で衝撃のデビューをし、2002年の「Raaz」で人気を不動のものとしたが、それ以降全く作品に恵まれていない。これも全て監督の責任だ。ビパーシャーをただのセックスシンボルとして利用しているだけで、彼女のいろいろな魅力を引き出す努力をしていない。本作品でもビパーシャーの露出度は必要以上に高く、ベッドシーンも「お約束です」と言わんばかりに存在する。ビパーシャーが出る映画はほとんど全てエロチックな映画と言っても過言ではないだろう。ビパーシャー自身はそれで満足していないと思う。彼女はもっと演技をしたいはずだ。実際、映画中精一杯演技をしている。しかしその演技は肩に力が入りすぎていて、いかにも劇的で、空回りしてしまっているところがあり、余計に映画の質を落としてしまう。ビパーシャー・バスの出る映画はだんだんワンパターンになりつつあるので、「ビパーシャー映画」というジャンルが確立するかもしれない。

 アーフターブ・シヴダーサーニーは最近次第に出演機会が増えてきたが、あまりスター性があるとは思えない。無精ひげを生やしているのはトレードマークにしたいからなのだろうか?ラーフル・デーヴという俳優は初めて見たような気がするが、冷徹な悪役をやらしたらすごいはまりそうな凄みがあってよかった。

 前々から指摘しようと思っていたのだが、インド映画の子役は演技が下手だ。セリフ棒読みだし、動きも恥じらいがあってぎこちない。ヒンディー語映画がハリウッド映画にどうあがいてもかなわないポイントのひとつは、この子役の質にあると思う。今まで見たインド映画の中で、子役の演技が素晴らしいと感じたのは、サティヤジト・ラーイ(サタジット・レイ)監督の「大地のうた」(1955年)ぐらいではないか・・・。「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)もよかったかな。子供が主人公になる映画は、割と演技力のある子役をどこかから見つけてくると思うのだが、例えば主人子の少年少女時代などを描くために一瞬だけ登場する子役は、どうしようもない演技しかしないことが多い。

 作品自体は退屈なので見るだけ損するが、イムラーン・ハーシュミーの演技だけは必見だと思う。彼にはこれから少し注目してみたい。