Kuchh To Hai

1.5

 ヒンディー語映画史上最悪の年と呼ばれた2002年、最大の興行収入を得た映画が、ビパーシャー・バス主演の「Raaz」であった。「Raaz」はインド映画には珍しいホラー映画であり、二匹目のドジョウを狙っているのか、これから続けていくつかホラー映画がリリースされる予定である。その先陣を切ったのが「Kucch To Hai(何かがいる)」。2003年1月24日から封切られており、今日PVRアヌパム4へ観に行った。

 「Kucch To Hai」のキャストは「Jeena Sirf Merre Liye」(2002年)でセリフ棒読みの演技をしたトゥシャール・カプール、ボビー&サニーのデーオール兄弟の妹にして、名優ダルメーンドラの娘イーシャー・デーオール、そして新人女優のアニター・ハサンナンダニーである。また、トゥシャール・カプールの父ジーテーンドラ、リシ・カプールなどのベテラン俳優や、ジョニー・リーヴァル、ラザーク・カーン、マノージ・パーワーなどのコメディアン俳優も登場する。監督はアヌラーグ・バス。

 シムラーに住むカラン(トゥシャール・カプール)は、どこにでもいる純粋な大学生だった。カランの幼馴染みでお隣さんのナターシャ(アニター・ハサンナンダニー)はカランに恋心を抱いていたが、カランは学校のアイドル、タニヤー(イーシャー・デーオール)に恋していた。しかしタニヤーはこれまた学校のヒーローであるヤシュと付き合っているともっぱらの噂。ヤシュはカランのことを面白く思っていなかった。ヤシュは一計を案じてカランに近付く。ヤシュはタニヤーとはただの友達であり、実はナターシャに恋していることをカランに伝えた。そしてカランがナターシャとヤシュの仲を取り持つ代わりに、ヤシュがカランとタニヤーの仲を取り持つことになった。この悪巧みはカランに恥をかかせるためのものであったが、これが裏目に出てカランとタニヤーは急接近し、ナターシャは失恋する結果となってしまう。また、カランとヤシュはいざかいの末仲直りし、親友となる。

  大学にはバクシー教授という、少し頭のおかしな教授がいた。バクシー教授は平気で生徒を殴り倒すので、学校中で恐れられていた。大学の期末試験の日にカランたちの監督官となったのがこのバクシー教授だった。この試験中、カランがヤシュに答案を見せようとしたところをバクシー教授に見つかり、カランをかばったタニヤーの答案が無効となってしまう。つまりタニヤーは留年確実となってしまう。

  しかし試験は別の場所で採点がされるはずである。まだバクシー教授の家に保管されているはずだ。その答案用紙の束の中に、タニヤーの答案をこっそり入れておけば、タニヤーの留年は免れる。そう考えたカランたち七人組はバクシー教授の家に忍び込む。ところがそこで発見したのは、棚の中に置いてあった拳銃と、ミイラ化した彼の妻の死体だった。やはりバクシー教授はやばい人物だった。バクシー教授に見つかった七人は、命からがら自動車に乗って逃げる。そして逃走途中でバクシー教授を轢き殺してしまう。

  七人はバクシー教授の死を隠すことに決めた。バクシー教授の遺体は崖の下に落ちて発見されず、誰にも交通事故のことはばれなかった。大学を卒業した七人は皆シムラーを離れてそれぞれの道に進んだ。

  そして3年後、七人の内の二人が結婚することになった。結婚式はシムラーで行われるため、他の五人も雪深いシムラーへ戻って来た。その3年の間、カランとナターシャは婚約していた。3年振りにカランと再会したタニヤーは、彼らの婚約を聞いてショックを受ける。しかしカランの心の中にはまだタニヤーへの恋心が残っていた。それがナターシャを傷つける。

  しかしシムラーに帰った七人は、バクシー教授の影に怯えることになる。バクシー教授はまだ生きているというのだ。何度も何度も黒いコートを羽織った男の影が7人の命を狙い始める。結婚式が終わった夜、とうとう恐怖は現実のものとなる。一人、また一人と殺されていく。いったいその殺人鬼は本当にバクシー教授なのだろうか・・・?

 予告編を見たときから、一発で分かっていた。この映画がハリウッド映画「ラストサマー」(1997年)のリメイクであることを・・・。それでもインド人が作るホラー映画というのはまだ物珍しいので、観てみた次第だが・・・残念ながら雑な作りの映画だった。

 「Raaz」のときも思ったが、ホラー映画にインド映画特有のミュージカルシーンは全く似合わない・・・!怖い気分になっているときに、どうして心地よい歌が流れ出すのだ・・・!?ホラー映画を作ろうという気概は悪くないので、あとはホラー映画はホラー映画として、インド映画の公式から離れて作るというスタンスに目覚めてもらいたい。

 ストーリーもところどころでクエスチョンマークが付く場面が多かった。特に一人目の男(パトという名前だったと思う)が殺されるシーン。なぜにちょうどパトが倒れこんだところの地面に積もった雪の中から殺人鬼が現れるのだ?あのシーンはギャグシーンなのか?あれは超常現象の域に達していた。ただ、ジョニー・リーヴァルとラーザク・カーンは面白かった。ホラー映画にコメディーは基本的に似合わないのだが、彼らのお笑いシーンはホラー映画の中にあってホラーを超越したお笑いで楽しかった。もしこの映画で秀逸な点を探すとしたら、ホラー映画とコメディー映画を見事に融合させた彼らの見事な演技力だろう。

 結局謎の殺人鬼の正体は二人おり、バクシー教授本人と、愛にとち狂ったナターシャだったのだが、これもかなり強引である。バクシー教授が生きていて復讐し出すのはまだいいにしても、どうして大人しそうな女の子のナターシャが急に殺人鬼に早変わりできるだろうか?しかもバクシー教授が黒いコートを着て虎視眈々とうろついている中を、ナターシャも同じ格好をしてうろついていたと思うと全く馬鹿馬鹿しい限りである。

 役者の演技も絶望的だった。トゥシャール・カプールは相変わらず心のこもっていないしゃべり方。顔も決してハンサムではないだろう。いったい彼はインド人的に見てどうなのか、疑問である。彼に似合うのは、あまりパッとしない平均以下な駄目男の役だ。のび太君みたいな。

 イーシャー・デーオールはどうも好きになれない。額の傷痕は、肉体派の兄サニー&ボビーとの壮絶なる戦いの跡だろうか?顔はまるで売春婦のように、気品がなくてケバケバしい。バスタオル一枚を身体に巻いてサウナに入るお色気シーンがあったが、あれも彼女の品格を落としてしまっていた。早く消えてほしい女優の一人である。

 音楽はアヌ・マリク。「Kuchh To Hai」のCDはヒットチャートでまずまずの健闘をしているのだが、あまり買う気が起こらない。「Ding Dong」だけはいい曲だと思ったが、それ以外は退屈な曲ばかりだった。

 それにしてもなぜこの映画のプロデューサーはホラー映画を冬にリリースする気になったのだろうか?シムラーの雪景色が出てきたりして、余計寒くなってしまった。