Saathiya

4.0

 今日は2002年12月20日公開の新作映画「Saathiya」を観に、PVRアヌパム4へ行った。この映画の音楽はARレヘマーンが担当しており、最近のヒットチャートで1位に登りつめている。僕もレヘマーンが音楽監督ということで、発売と同時にCDを買って聴いてみたのだが、どこかで聞いたことがある。というより、最初の曲「Saathiya」の冒頭、「サーティヤー、サーティヤー」と流れた瞬間、すぐに分かった。昔DVDで観た、マニ・ラトナム監督のタミル語映画「Alai Payuthey」(2000年)の曲のリメイクである。確かにあの映画の音楽はファーストクラスだった記憶がある。歌詞がヒンディー語になっても、あのレヘマーン特有の脳みそが洗われるような旋律は失われておらず、しばし陶酔。やはりレヘマーンはいい。映画を観てみて分かったのだが、ストーリーも同映画のリメイクだった。

 昼の12時からの回を観たのだが、満員御礼状態。かなりヒットしているようだ。同じく先週の金曜日から封切られた「Kaante」(2002年)も大ヒットしており、これは昨年の「Lagaan」(2001年)と「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)のツインヒットのごとく、この2作も同日公開ダブルロングランしそうな勢いである。今年はヒンディー語映画界に活気がなく、日本人ながらインド映画ファンとして心配していたのだが、年末になって期待できるヒット作が登場して僕も嬉しい。おそらく冬休みと客入り状態も少なからず関係があるとは思うが、映画自体が良作であることも大きいと思う。

 「Saathiya」とは「愛しい人よ」みたいな意味。原作はマニ・ラトナム監督のタミル語映画「Alai Payuthey」で、ヒンディー語版では監督・俳優ともにヒンディー語映画界の人材になっている。監督は新人監督シャード・アリー、主演はヴィヴェーク・オーベローイとラーニー・ムカルジー。最後の方で特別出演でシャールク・カーンとタブーが出て来たのには驚いた。

 裕福な家庭の育ちのアーディティヤ(ヴィヴェーク・オーベローイ)と、貧しいが天真爛漫で知的なスハーニー(ラーニー・ムカルジー)は、最初友達の結婚式で出会い、その後ムンバイーの市内電車にて出会いを重ねていた。二人は相思相愛の仲になるが、2人の両親同士はそれを認めなかった。アーディティヤとスハーニーは友人や姉の助けを借りて、密かに寺院で結婚式を挙げ、そのまま秘密の結婚生活を続けていた。

 そんな中、スハーニーの姉ディナの見合いが行われる。見合い相手のラッグーとディナの縁談はまとまりかけるが、ラッグーの弟とディナの妹、つまりスハーニーの縁談まで始まってしまう。既に結婚していたスハーニーは、初めて両親にそれを打ち明ける。スハーニーの両親は怒り、スハーニーを家から追い出す。アーディティヤの父親も怒ってアーディティヤを追い出した。こうして二人は自分で家を借りて駆け落ち結婚生活を始めたのだった。

 結婚前のアーディティヤはスハーニーのために何でもできる男だった。しかし結婚後のアーディティヤは変わってしまい、二人の間では毎日口論が繰り広げられるようになった。スハーニーの父親の死もあり、アーディティヤとスハーニーの仲は最悪の状態となる。その一方で、アーディティヤはスハーニーに内緒で、自分たちのために破談になってしまったラッグーとディナの仲を取り持とうと努力し、とうとう二人は結婚することになる。その知らせを聞いたスハーニーは、アーディティヤのことを考え直し、彼に会いに家に急ぐ。そのときスハーニーは自動車にはねられて重態となってしまう。

 いつまで経っても帰って来ないスハーニーに、アーディティヤは心配になる。街中を探し回り、どうもスハーニーが交通事故に巻き込まれたことに勘付く。アーディティヤは病院へ駆けつける。

 しかし病院では複雑な状況が生じていた。スハーニーをはねてしまった女性(タブー)の夫(シャールク・カーン)が、アーディティヤより一足先に駆けつけていた。スハーニーは一刻も早く手術が必要なほどの重態だったが、危険を要する手術だったので、医者は患者の関係者の承諾がなくては手術を始められない状態だった。その男はスハーニーの夫であると名乗り、患者の名前をサーヴィトリーだと伝え、手術の承諾書にサインをした。こうして、アーディティヤが病院に到着したときには、その患者の名前はサーヴィトリーになっており、アーディティヤはスハーニーに会うことができなかった。

 しかし結局アーディティヤは警察にスハーニーの捜索届けを出していたおかげで、スハーニーに会うことができる。スハーニーの手術は成功し、アーディティヤの必死の祈りによって、意識不明状態だったスハーニーの目は開く。そしてアーディティヤにつぶやく。「I Love You」と。

 ヒットしているのがおかしくないほど、とてもいい映画だった。オリジナルのタミル語映画「Alai Payuthey」とストーリーはほぼ一緒だったので、これはマニ・ラトナム監督を賞賛すべきだと思う。現在と過去が行き来する構成ながら分かりやすいストーリーラインで、しかもカメラワークにインド映画離れしたセンスを感じた。

 そして音楽もこの映画の質を高めている。ARレヘマーンの音楽は本当に他の人には真似できない力がある。やはりテーマ曲の「Saathiya」が素晴らしい。踊りも印象的。しかし途中で挿入された「Chori Pe Chori」は、ストーリーとはあまり関係なく、無理矢理な感じがしたので、入れない方が絶対によかったと思う。

 「Company」(2002年)、「Road」(2002年)に引き続き、今作はヴィヴェーク・オーベローイの3作目の出演作品である。「Company」でファンになりかけ、「Road」では「う~ん、どうしよっかな~」ぐらいだったのだが、「Saathiya」で遂に僕はヴィヴェークのファンとなった。あのシャイな笑顔がかっこいい。インド人に受ける必須条件の筋肉もある。踊りもうまくて個性がある。演技力も十分である。若手の男優の中では、アルジュン・ラームパールと共にヴィヴェークを応援していくことにした。主演女優のラーニー・ムカルジーは、まあ無難な縁起をしていた。今回はあまりラーニーに関しては何も感じなかった。

 途中で突然出演したシャールク・カーンとタブーには驚いた。会場からも「あれ、シャールクが出て来たぞ」と驚きの反応があった。なぜシャールクとタブーほどの大俳優が、こんな端役で出て来たのか最初不思議だったのだが、ある1シーンを見た瞬間、これはベテラン俳優でないとできない演技だ、と感じたところがあった。それはスハーニーの手術中の1シーン。スハーニーを轢いた上に轢き逃げしてしまった妻(タブー)、妻の代わりに自分が交通事故を起こしたと言う夫(シャールク)、そして夫に「スハーニーに何かあったらただじゃおかないからな」と感情的になって脅すアーディティヤ。妻は「夫は何も悪くない、私が全部いけないの」と言って泣き崩れるが、夫はその妻を優しく抱き、「大丈夫、オレたちができることは全てしたんだ」と慰める。それを背中で聞いていたアーディティヤも泣き崩れる。それを見ていた夫は、妻を抱きながらアーディティヤの肩に手を置く。このシーンはシャールクの演技力なくしては全く意味をなさないシーンだった。カメラワークも凝っていた。多分マニ・ラトナム監督のオリジナル作でも、この印象的なシーンはあったと記憶している。

 全体的に素晴らしい映画だったが、惜しむらくはラストシーンが陳腐だったことだ。手術を終え、意識不明のままベッドに横たわるスハーニー。その横でアーディティヤは必死にスハーニーに話しかける。「おいスハーニー、起きてるのは分かってるぞ、さあ目を開けてまたオレと口喧嘩しようぜ。」そんなアーディティヤの必死の気持ちがスハーニーに届き、彼女の目は開く。陳腐だ、陳腐すぎる・・・。オリジナル作のエンディングもこんなだっただろうか?それ以外が素晴らしかったため、ラストの陳腐さはかなり残念だった。