Kaante

3.5

 現在巷の話題を最も集めている映画「Kaante」を観に行った。全編ロサンゼルス・ロケ、ハリウッド・スタッフによる撮影、豪華な俳優陣、ということで今年最大の期待を背負っていたのだが、度重なる公開延期により、人々の気持ちは萎え萎えになっていた。しかし、いざ2002年12月20日に公開されると爆発的ヒットを記録している。

 「Kaante」とは「棘」という意味。監督はサンジャイ・グプター。キャストはアミターブ・バッチャン、サンジャイ・ダット、ラッキー・アリー、スニール・シェッティー、クマール・ガウラヴ、マヘーシュ・マーンジュレーカル。

 ロサンゼルスに住む6人の男たち、メジャー(アミターブ・バッチャン)、アッジュー(サンジャイ・ダット)、マック(ラッキー・アリー)、バウンサー(スニール・シェッティー)、アンディー(クマール・ガウラヴ)、バーリー(マヘーシュ・マーンジュレーカル)は、共謀して銀行強盗をする。計画は完璧だった。しかし大金を手に入れて銀行を出ると、6人はパトカーに囲まれていた。防犯装置は作動しないようにしたはずなのに、どうして警察に分かったのか?とにかく6人は散り散りになって逃げる。

 秘密基地に集合した6人だが、金の分配や密告者の存在によって仲違いをする。6人の中に囮捜査中の覆面警官がいるという情報を聞き、ますます6人の仲は険悪になる。いったい誰が警察なのか?金は誰が手に入れるのか?

 期待していたほど楽しい映画ではなかった。そもそもこの映画はクエンティン・タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」(1992年)のリメイクである。あらすじにしてしまうと非常に短くなってしまうのだが、一応3時間映画だった。だが2時間にしようと思えばできる映画だと思った。

 ロスが舞台になっているので、言語はヒンディー語中心ながらもアメリカ英語が混じっていた。また、かなりスラング・チックなヒンディー語をしゃべるので、聴き取るのは難しい。というより、この映画ははっきり言って会話を楽しむ映画だったように思える。洒落た会話のやりとりや、おかしい言い回しが連発したようで、インド人観客はかなり笑い転げていた。僕の理解率はくやしいながら50%以下である。ヒンディー語映画は「言葉が分からなくても楽しめる」とよく賞賛(軽蔑?)されるが、この映画は言葉が分からないと面白さが半減してしまうように思えた。

 主役6人の中で特に光っていたのは、サンジャイ・ダットとマヘーシュ・マーンジュレーカルである。インドのカースト制度は有名だが、映画界にもカーストの上下があり、俳優の中にも厳密な分業制度が成り立っている。大体インドの俳優は、主役俳優、脇役俳優、コメディー俳優、悪役俳優と分類することができ、お互いその領域をはみ出ることは滅多にない。その中でサンジャイ・ダットは主役俳優にカテゴライズされるのだが、彼ほど悪役が似合っている俳優も他にいない。というか、アムリーシュ・プリーみたいに悪役俳優として生きて行ったらいいのに・・・。マヘーシュ・マーンジュレーカルは、6人の中でもっともマッドな男として、狂喜に満ちた演技を嬉々と演じていて印象に残った。

 ほとんど男しか出てこない映画なので、バランスをとるためか、ミュージカルシーンは際どい格好をした美女たちの、ストリップショー的なダンスが中心だった。音楽はアーナンド・ラージ・アーナンド。「Ishq Samundar」がお気に入りの曲である。しかし曲の挿入のされ方があまり洗練されておらず、邪魔に思えたところもあった。「Kaante」のCDは随分前に発売されていたので、観客はもう既に曲を暗記してしまっており、一緒に歌を口ずさんでいる人が多かった。

 総論として、「Kaante」はインド人の若者が好きそうな映画だが、評論家受けするような映画ではない。現在ヒットしてはいるものの、そう長続きしないと僕は予想する。むしろ同時期に公開された「Saathiya」(2002年)の方が、家族、恋人同士、友達同士などなど、万人受けするような映画なので、末永くロングランしそうな雰囲気である。