Road

3.5

 朝から、2002年9月27日公開の新作映画「Road」を観にPVRアヌパム4へ行った。意識していなかったのだが、モーニングショーということで、普段は150ルピーのチケットが朝一番の回に限って90ルピーだった。早起きは三文の徳、という気分。11時からの回だったので、それほど早起きでもないのだが。

 「Road」は、今年の前半に「Company」(2002年)をリリースして話題をさらったラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督の新作で、期待度も高い。主演は「Company」で衝撃のデビューを果たしたヴィヴェーク・オーベローイ、同じく「Company」でゲスト出演したアンタラー・マーリー、そしてマノージ・バージペーイーなど。監督はラジャト・ムカルジー。

 舞台はデリー。アルヴィンド(ヴィヴェーク・オーベローイ)とラクシュミー(アンタラー・マーリー)は恋仲だったが、両親の反対にあって結婚できずにいた。そこで2人はRV車(TATA社のサファリ)に乗ってデリーを飛び出し、新天地を求めてラージャスターンの荒野を突っ走っていた。

  道の途中で2人はヒッチハイクしていた男を乗せる。彼の名前はバーブー(マノージ・バージペーイー)。しかし実はバーブーはマフィアの一員で、銃でアルヴィンドを脅して道端に置き去りにし、ラクシュミーをさらって行ってしまった。バーブーは怯えるラクシュミーに問いかける。「もし大学でオレとアルヴィンドがいたら、どっちを選ぶ?」ラクシュミーは「アルヴィンド」と答える。

  一方、アルヴィンドは後ろから来たトラックに乗せてもらってバーブーを追いかけ、うまいことバーブーを追い払ってラクシュミーと自動車を奪い返した。

  ところが今度はそのトラックをバーブーが奪い、アルヴィンドたちの自動車目掛けて後ろから激突してくる。アルヴィンドは逃げ回るが、砂にタイヤがはまってしまい、抜け出せなくなる。そこへバーブーのトラックが爆走してくるが、間一髪のところで抜け出し、逆にトラックのタイヤがはまり、アルヴィンドたちは何とか逃げ出すことに成功した。

  夜になった。アルヴィンドたちは途中の町の宿に泊まる。翌朝、再び自動車に乗って走り出すが、バーブーが後部座席で銃を持って待ち伏せしていた。バーブーはアルヴィンドを再び自動車から降ろし、ラクシュミーをさらって行ってしまう。アルヴィンドは警察署に駆け込んで道の検問をしてもらうが、バーブーは途中で自動車をTATA社のスモーに変えており、まんまと抜け出すことに成功する。逆に、道の途中でバーブーが殺した死体が発見され、アルヴィンドが警察に疑われることになる。アルヴィンドは警察のジープを奪って逃走する。

  再び夜になった。バーブーは道の途中にあった金持ちの邸宅に車を止め、そこの警備員を殴り倒して留守中だった家の中に入る。そこでバーブーは再びラクシュミーに問う。「もし大学でオレとアルヴィンドがいたら、どっちを選ぶ?」ラクシュミーは「あなた」と答える。バーブーは乱暴だが、心は案外純粋だった。バーブーはいつの間にかラクシュミーに人生初めての恋をしていたのだった。ラクシュミーが自分の恋人となったことにバーブーは狂喜する。

  一方、バーブーは警察の追っ手を振り切り、バイクに乗り換えてバーブーを追跡していた。翌朝になり、通報を受けた警察がバーブーたちの潜む邸宅を急襲する。バーブーとラクシュミーも、裏口に置いてあったバイクに乗り込んで逃げ出す。道の途中でアルヴィンドとバーブーは出会い、そこからバイク・チェイスとなる。2人ともバイクが駄目になると今度は走り出す。バーブーはラクシュミーと共に丘の陰に隠れる。バーブーは銃を構えながらラクシュミーに言う。「これが最後の一発だ。」そこへゆっくりアルヴィンドが歩み寄ってくる。バーブーはアルヴィンドに照準を合わせる。いざ撃とうとした瞬間、ラクシュミーはバーブーに蹴りを食らす。ラクシュミーはやはりバーブーなど好きではなく、アルヴィンドのことを愛していたのだった。

  銃を失い、ラクシュミーに裏切られたバーブーは、ただアルヴィンドの攻撃を受け続けることしかできなかった。アルヴィンドはバーブーを徹底的に痛めつけ、荒野の真ん中に置き去りにして、ラクシュミーと共に去って行った。バーブーは最後につぶやく。「ラクシュミー、お前はオレよりも汚ない人間だぜ・・・。」

 「Company」と似たテイストの映画で、非常に楽しかった。まず最初のクレジットシーンから凝っていてよかった。エンジンをふかす音やら、クラクションを鳴らす音やらが大音響で映画館中響き渡り、音響設備のいいPVRで見たのは正解だった、と思わせた。映像もなかなか凝っていて、この映画の第4の主人公――ヒーロー、ヒロイン、悪役の次に来る主人公――である「道」が中心的に映し出されていた。まるで全ての物語の語り部のごとく・・・。

 舞台はラージャスターン州の砂漠地帯だが、どうやらオーストラリアでもロケが行われたようだ。オーストラリアの荒野をインド国産TATA社のサファリやスモーが疾走するとは、なかなか痛快だ。トラックが後ろから追いかけてくるシーンは、スティーブン・スピルバーグ監督の「激突!」(1971年)を思い起こさせ、最後のバイク対バイクのシーンはジョン・ウー監督の「ミッション・インポッシブル2」(2000年)を想起させた。道の他に影の主人公を挙げるとしたら、アルヴィンドやバーブーが次々と乗り換える乗り物たちだろう。

 音楽はサンデーシュ・シャーンディリヤ。「Road」の音楽はアップ・テンポ調の曲が多く、普通のインド映画音楽の感覚からすると変な曲が多かった。踊りも思わず首を傾げたくなるような、斬新過ぎというか、狙い過ぎというか、変な踊りが多かった。「Road」のCDは持ってないし、買う気になれないが、なかなかの売れ行きのようだ。

 どちらかというと、マノージ・バージペーイの演技が一番光っていた。図々しく、殺人鬼ながら、実は純粋な心を持っている哀れな男を気味悪いくらいうまく演じていた。こんなインド人がそばにいたら嫌だな~、でも現実にいそうだな~と思いながら見ていた。ヴィヴェーク・オーベローイは主人公ながら途中から登場機会がめっきり減り、演技の見せ所にも欠けていた。彼の顔はスニール・シェッティーに少し似ている。特に目の辺りが。今回初めて主役をはったアンタラー・マーリーは、顔はそれほど美人でもないが、セクシー女優路線を爆走しそうなパワーに溢れていた。

 この映画のひとつの大きなポイントは、ラクシュミーが本当にバーブーを愛してしまったかどうかだろう。途中から、演技で愛している振りをしているのか、本当に愛しているのか分からなくなってくる。最後のシーンでアルヴィンドとバーブーが戦うところがあるのだが、そこで彼女がどちらの味方をするのか、ドキドキしてしまった。

 スリルに満ちた映画だったのだが、笑えるシーンもところどころに用意されていた。特にいろんな映画のパロディーがたくさん盛り込まれていた。分かりやすいところでは「Company」のパロディー。アルヴィンドが自動車の中で「Company」のCDを聴いていると、ヒッチハイクで乗り込んできたバーブーが「オレはこの歌好きじゃないから消してくれ」と言う。他に、「Devdas」(2002年)のパロディーがあった。また、いろんな映画の有名なセリフをバーブーが時々口にしていたような気がしたのだが、これは確信が持てない。

 荒野の中で果てしなく続く道、その半密室状態の中で繰り広げられる、少数の登場人物による追跡劇、RV車、ジープ、トラック、バイクなどの乗り物の数々、そしてちょっとしたお色気シーン。男による男のための映画という感じがした。ヒットしてもおかしくない。