Agni Varsha

3.0

 夕方から、2002年8月30日公開のヒンディー語映画「Agni Varsha」を観た。題名は「火の雨」という意味だと思っていたが、どうやら「火と雨」みたいだ。ちょうど最近のデリーの天候――太陽は炎のように照り付けるが、雨が降ると涼しい――にピッタリだ。「マハーバーラタ」のエピソードをベースに映画化した意欲作で、予告編で見た限りでは、かなり期待を持っていい作品に思えた。PVRアヌパム4で観たが、満席状態だった。監督はアルジュン・サジュナーニー。主演はジャッキー・シュロフ、ラヴィーナー・タンダン、ナーガールジュナ、ミリンド・ソーマン、ソーナーリー・クルカルニー(新人?)、プラブ・デーヴァなど。ゲスト出演でアミターブ・バッチャンが出ていた。

 10年間雨が一滴も降らないという大旱魃に襲われていた。パラヴァス(ジャッキー・シュロフ)は王国の大司祭となって雨の神インドラを喜ばせるためにマハーヨッギャと呼ばれる儀式を行っていた。儀式は7年間に渡り、彼は妻のヴィシャーカー(ラヴィーナー・タンダン)、弟のアルヴァス(ミリンド・ソーマン)、父親のライッヴャを見捨てて一心不乱に儀式を続けた。

  一方、パラヴァスの従兄弟ヤヴァクリ(ナーガールジュナ)は、愛するヴィシャーカーをパラヴァスに奪われたことに傷つき、10年間森の中で苦行を行っていた。インドラ神から恩恵を受けた彼は森から戻ってきて、夫に見捨てられたヴィシャーカーに言い寄る。しかしその密通が父親にばれ、怒ったライッヴャはブラフマラークシャス(プラブ・デーヴァ)という悪魔を呼び出し、ヤヴァクリを殺害させた。

  また、パラヴァスの弟アルヴァスはブラーフマンでありながらダンサーになることを夢見ている純粋な青年だった。彼にはニッティライ(ソーナーリー・クルカルニー)という恋人がいたが、彼女は部族民であり、ブラーフマンであるアルヴァスとは結ばれない運命にあった。ニッティライは別の男と結婚させられてしまう。

  そんなある日の真夜中、パラヴァスがひょっこり家に帰ってくる。パラヴァスは傲慢な父親を殺害し、また儀式を行うために王宮へ戻っていった。ヴィシャーカーはどこかへ姿をくらましてしまい、恋人も父も義理の姉も失ったアルヴァスはどうしたらいいか分からなくなる。ニッティライの勧めに従って彼は兄が儀式を行っている王宮を訪ねるが、パラヴァスに悪魔呼ばわりして追い出され、門番たちによってリンチに遭う。

  アルヴァスはニッティライと旅芸人に命を救われる。ニッティライはアルヴァスが瀕死の状態にあることを聞いて、夫のもとを飛び出してやって来たのだった。アルヴァスは一命を取りとめ、旅芸人たちと一緒に、王と兄の前で踊りを踊ることを決意する。儀式ではなく、踊りでインドラ神を満足させ、王国に雨を降らせることを約束し・・・。

  王国中からアルヴァスの踊りを見物しに人々が集まった。その中にはヴィシャーカー、ニッティライ、そしてニッティライの夫もいた。国王の隣には兄のパラヴァスもいた。アルヴァスたちはインドラ神とその2人の息子に関する演目を踊りだす。だが途中でアルヴァスは火を持って祭壇へ上がり、火を放つ。見物人たちは逃げ出すが、その中でニッティライは夫に見つかってしまい、殺されてしまう。ニッティライの死を悲しむアルヴァスの元にインドラ神(アミターブ・バッチャン)が現れる。インドラ神はアルヴァスの純粋な気持ちに心を打たれ、遂に雨を降らせたのだった。

 日本の時代劇にあたるため、言い回しがサンスクリット語起源の言葉を多用しており、非常に聴き取りが難しかった。だから筋の細かいところは理解できなかった。ストーリーもちょっと固くて、人間の感情に重きが置かれていなかった印象を受けた。また、インド人にしか分からないようなルールに則って人々が動いているのも、理解を困難にさせた。まるで漢文を読んでいるような感じだ。だから上の筋はあまり自信がない。

 一瞬で見分けがついたのだが、この映画のロケはカルナータカ州にある遺跡の街ハンピで行われていた。遺跡をそのまま住居に使っていたりして、さすがにもっとちゃんとした家住んでたんじゃないか・・・と突っ込みたくもなったが、マハーバーラタ時代の古文献的な雰囲気がよく出ていたかもしれない。

 ブラーフマンが執り行う儀式、ブラーフマンの圧倒的な力、人間業ではない苦行など、インド神話によく出てくるモチーフを映像で見ることができたので、インド神話ファンの僕はもう始終ゾクゾクしっ放しだった。特に悪魔ブラフマラークシャス(プラブ・デーヴァ)が登場して踊りを踊るシーンは素晴らしかったと思う。登場するシーンに使われていたCGは稚拙だったが、それには目をつむる。

 実は「Agni Varsha」の音楽CDを1週間前ぐらいに購入しており、けっこうお気に入りだったので、ここのところ好んで聴いていた。だからミュージカルシーンは特別思い入れが入った。特に一番最初の、アルヴァス(ミリンド・ソーマン)とニッティライ(ソーナーリー・クルカルニー)が踊る「Dole Re」がよかった。プラブ・デーヴァは有名なダンスマスターだが、ソーナーリーの踊りもあなどれないくらいうまかったと思う。

 インド映画にしては上映時間は短くて、2時間ほどだ。アメリカやカナダでも同時公開されるようなので、海外市場を狙った作品であることが分かる。確かに日本で一般公開しても十分通用するほど素晴らしい作品だと思って感心しながら見ていた。いかにもインドっぽい雰囲気なので、外国人好みだろう。女性の露出度も高いし。日本人向けに分かりやすい字幕を入れていけば、ヒンディー語オンリーで見たときに感じる難解な雰囲気にもならないだろう。これは期待通りの作品だ、と嬉しくなって見ていたのだが・・・最後の最後でやっちまった、やっちまったよ、アミターブ・バッチャン・・・。最後になんでお前がイエス・キリストみたいな格好して出てくるんだよ・・・。「私はインドラだ」とか微笑むなって・・・。確かにアミターブ・バッチャンはインド映画界では神様みたいな存在だし、コルカタには彼を祀った寺院まで存在するらしい。でも、こんな登場の仕方はないだろ・・・頼む、最後だけはもう一度撮り直してくれ・・・。あういうのが一番日本人を引かせるんだ・・・。というわけで、日本公開は無理。最後の最後に出てくるアミターブ一人のせいで・・・。