Devdas (2002)

5.0
Devdas
「Devdas」

 今日は2002年7月12日公開のヒンディー語映画「Devdas」を見ようと、昼頃チャーナキャー・シネマへ出掛けていった。ところがチケットは売り切れ状態。かろうじて、夜9時45分からの回のチケットが入手可能だった。その回を見ると終了するのは夜1時頃になってしまう。一瞬どうしようか迷ったが、善は急げということで購入しておいた。

 夜、再びチャーナキャー・シネマへ出掛けた。実はこの時間に映画を観るのは初めてである。映画が終わると深夜になってしまうので今まで避けていたのだが、人気作を早めに見るためだ、仕方ない。

 「Devdas」はシャールク・カーン、アイシュワリヤー・ラーイ、マードゥリー・ディークシト主演というまるでヒットを約束されたかのようなキャスティングである。ゲスト出演としてジャッキー・シュロフも出ている。監督はサンジャイ・リーラー・バンサーリー。同名の有名な小説が原作となっており、過去に何度も映画化されている。映画館は当然満員に近かったが、やはり深夜の回だったので完全に満席ではなかった。

 デーヴダース(シャールク・カーン)は大金持ちの地主の息子で、パーロー(アイシュワリヤー・ラーイ)はその隣人で貧しい生まれだった。しかし子供の頃からデーヴダースとパーローは仲がよく、いつしか相思相愛の仲になっていた。しかしデーヴダースはロンドンに留学してしまい、二人は離れ離れになってしまう。10年の歳月が流れたが、二人の愛する気持ちは変わらなかった。物語はデーヴダースが10年間のロンドン留学から帰ってくるところから始まる。

  デーヴダースはすっかり英国紳士となっており、パーローは美しい女性になっていた。二人は久しぶりの再会を照れつつも喜び、そして二人の間の愛情に変わりがないことを確かめあう。そして当然二人は結婚を考え始める。しかし、デーヴダースの親はデーヴダースが貧しいパーローと結婚することを面白く思っていなかった。パーローの母親もデーヴダースの親の本心を知って激怒し、パーローをデーヴダース一家よりもさらに金持ちの男に嫁がせることを決める。こうしてデーヴダースとパーローの仲は引き裂かれてしまう。

  デーヴダースは両親の勝手な決断に怒り家を飛び出てしまう。パーローもデーヴダースが自分を残して出て行ってしまったことに傷つき、母親の決めた結婚を承諾してしまう。デーヴダースはロンドン留学時代の友人(ジャッキー・シュロフ)の家に転がり込み、酒に溺れ、やがて高級娼館へ通い始める。そこで高級娼婦チャンドラムキー(マードゥリー・ディークシト)がデーヴダースを見初め、世話をするが、デーヴダースはパーローを忘れることができない。こうして、パーローを愛するが故に苦悩するデーヴダース、デーヴダースを気遣いながらも結婚生活を余儀なくされるパーロー、別の女性を忘れることができないデーヴダースを愛してしまったチャンドラムキーの三角関係ができる。

  やがてパーローはデーヴダースが娼館に通っていることを聞きつけ、チャンドラムキーを訪ねる。パーローとチャンドラムキーは同じ男を愛する者同士として最初は対立するが、やがて打ち解ける。しかしこのときデーヴダースは行方不明となっていた。

  デーヴダースは急に多量の飲酒を始めたことにより、病に倒れていた。そして医者に止められていたにも関わらず、友人に無理に勧められてさらに酒を飲んでしまう。そして病は重症となり、デーヴダースは今にも死にそうになってしまう。最後にデーヴダースの脳裏に浮かんだのは、パーローの腕の中で死にたいという願望だった。デーヴダースは馬車を走らせ、一路パーローの嫁ぎ先の家へ急いだ。パーローもデーヴダースの異変を勘で察知するものの、夫から外出禁止を言い渡されていたために確かめにいけなかった。翌朝、デーヴダースはパーローの家の門の前で倒れていた。パーローはデーヴダースが門の前で倒れていることを知り、夫を振り切ってデーヴダースの元へ走った。しかし門は無常にも閉ざされ、あと一歩のところでデーヴダースのところまで届かなかった。デーヴダースも自分の元へ走ってくるパーローを朦朧とした意識の中で眺めていたものの、門が閉ざされ、パーローの姿が視界から消えると、遂に息絶えてしまった。

 19世紀ぐらいの英領インドを舞台にしており、セットや衣装は豪華絢爛、ダンスと音楽も超美麗、幻想のようなロマンスを描いた美しい映画だった。終わり方はインド映画には珍しくアンハッピーエンド、少し最後の展開が急ぎ気味だったのが駄目だったのか、僕は涙を流すことはなかったが、とても楽しめた作品だった。雰囲気は「Hum Dil De Chuke Sanam」(1999年/邦題「ミモラ」)にちょっと似ていた。アイシュワリヤー・ラーイが出ていたのと、音楽が同作品と同じイスマーイール・ダルバールだったのが影響していると思う。何かひとつこの映画の特色を挙げるとしたら、ズバリ衣装だろう。もうこれでもか、これでもか、というくらいきらびやかな衣装が出てきて、ミス・ユニバースのアイシュワリヤーと、ダンスの名手マードゥリーの美を一層輝かせていた。

 ゴシップ記事に書いてあったことだが、この映画には2人のスターの命運が懸かっていた。それはずばりシャールク・カーンとアイシュワリヤー・ラーイのことである。シャールク・カーンは自分の映画会社を立ち上げて奮闘していたものの、「Phir Bhi Dil Hai Hindustani」(2000年)、「Asoka」(2001年)と不発を連発して後がなかった。この前公開されていた「Hum Tumhare Hain Sanam」(2002年)もあまりヒットしなかったみたいだ。アイシュワリヤー・ラーイも立場は同じで、ここのところずっと不発続きで、そろそろ「フロップ美人」のあだ名を冠せられるところだったが、「Devdas」のヒットのおかげで再びトップ・アクトレスの座に返り咲くことができるだろう。マードゥリーはもう医者と結婚してアメリカに住んでいて生活は安泰だし、そろそろ年なので、あまり興行成績を気にしなくてもいい年代に入っていると言っていいだろう。

 ひとつだけ気になったのは、マードゥリー・ディークシトとアイシュワリヤー・ラーイのスクリーン上の相性があまりよくなかったことだ。やはり二人並ぶとマードゥリーの老けぶりがなんとなく分かってしまうし、並んでみて分かったことだが、アイシュワリヤーの方が背が高い上に顔が小さい。二人とも美人なのは確かなのだが、美人の種類がなんとなく違って、スクリーン上で二人並ぶとなんだか不安定な気分になる。それでいて、笑った顔は実はマードゥリーの方が気品があって美しい。アイシュワリヤーの笑い方はどうも好きになれない。アイシュワリヤーは悲しい顔か冷たい顔をしているときが一番様になっていると思う。あと、アイシュワリヤーの踊りはかなりうまくなったと思う。マードゥリーの踊りが素晴らしかったのは言うまでもない。