Raaz

4.5

 コンノート・プレイスのオデオン・シネマでやっている、2002年2月2日公開のヒンディー語映画「Raaz」の12:30からの回を観に朝バスで行ったのだが、なんと映画館は満席で、3:30からの回まで満席になっていた。仕方ないので6:30からのチケットを買って時間を潰した。

 さすが満席だっただけあって、映画館は大混雑だった。これほどの混雑ぶりは、「Lagaan」(2001年)、「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)、「Kabhi Khushi Kabhie Gham」(2001年)級である。ムンバイーの映画館の客入りも100%だったらしいから、「Raaz」は実は隠れた名作なのかもしれない。期待に胸を膨らませながら映画館に入った。(この後、「Raaz」はロングラン・ヒットした。)

 「Raaz」とは「秘密」という意味。監督はヴィクラム・バット。主演はディノ・モレアとビパーシャー・バス。ディノ・モレアという男優は初めて見たが、ビパーシャー・バスは「Ajnabee」(2001年)に出ていたセクシーな新人女優で、今僕がもっとも注目している女優なので、その成長ぶりを見るのも楽しみだった。観てみたらビックリ、インド映画には珍しい、正真正銘のホラー映画だった。

 アーディティヤ(ディノ・モレア)とサンジュナー(ビパーシャー・バス)は新婚夫婦だったが、アーディティヤが仕事中心の人間だったので、サンジュナーは不満のある生活をしていた。サンジュナーの交通事故をきっかけに、二人はウーティーにある別荘で休養することにした。そこは二人が愛を育んだ場所だった。ウーティーに着いた二人は生活を始めるが、サンジュナーの耳にはなぜかときどき悲鳴が聞こえ、ポルターガイスト現象も起こる。恐怖におびえるサンジュナーはヴァストゥシャーストラ(風水のようなもの)の教授に相談し、家を見てもらう。そして教授は家に「誰か」がいることを指摘する。アーディティヤとサンジュナーはウーティーを出ようとするが、霧が妨害してどうしてもウーティーを出ることができなかった。そこでサンジュナーは幽霊と正面から対話して何を求めているのか知ることを決意し、アーディティヤをムンバイーに帰して一人で家に留まる。そこでアンジュナーはとうとう幽霊の姿を目撃する。それは血まみれの女性だった。ヴァストゥの教授は霊魂を自分の身体に呼び寄せる術をサンジュナーに教え、サンジュナーはその通りにする。そしてサンジュナーの身体に霊魂が入り込む。そこに夫のアーディティヤが帰ってくる。アーディティヤはサンジュナーの様子がおかしいことに気付き、サンジュナーの顔を見た瞬間「お前はもう殺したはずだ!」と叫ぶ。そして霊魂はサンジュナーの身体から抜け出す。そしてアーディティヤは自分が過去に犯したことを暴露する。実はアーディティヤは昔サンジュナーがいないときにこの家でマーリニーという一人の女と不倫をしていたのだが、アーディティヤに妻がいることを知り、アーディティヤに「全てはなかったことにしてくれ」と言われたことからマーリニーは逆上し、アーディティヤの目の前で「全てをぶち壊してやる!」と叫んで自殺をしたのだった。そしてアーディティヤはマーリニーの遺体を森の中に埋め、全てを隠蔽したのだった。その霊魂が今までサンジュナーを邪魔していたのだった。サンジュナーは夫の不倫を知ってショックを受け、家を飛び出し教授のもとへ行くが、教授は「今度はアーディティヤの身が危ない」と警告する。そこで家にすぐに戻ったのだが、アーディティヤは既にマーリニーの亡霊にさらわれてしまった後で、自動車で崖から転落してしまう。アーディティヤは意識不明の重態となり、病院で緊急手術が行われる。ヴァーストゥの教授は「マーリニーの遺体を焼かない限りアーディティヤは助からない」と言う。サンジュナーと教授はすぐに森に向かってマーリニーの遺体を捜し出し、火をつけようとするが、亡霊は教授を殺した上に身体に乗り移り、サンジュナーを殺そうと追いかけてくる。サンジュナーは逃げ惑いながらも何とかマーリニーの遺体にガソリンをかけて火をつけ、遺体を焼くことに成功する。亡霊は消え去り、アーディティヤの手術も成功する。そしてアーディティヤとサンジュナーは再び愛し合うことになる。

 普通ハリウッドのホラー映画ではキリスト教が背景にあるので霊媒師として牧師さんとかが登場すると思うのだが、インド映画ではその代わりとしてヴァーストゥシャーストラの教授が出て来たところが面白かった。ヴァーストゥシャーストラとは中国の風水の起源になったと考えられるもので、家の間取りや家具の配置などを規定した考え方である。儀式の様子もヒンドゥー的で、マーリニーの遺体を捜すときにはレモンを紐で吊るして手で持ち、反応する方向へ進んで行ったりした。

 それにしてもインド人はホラー映画を観るのに適していないようだ。絶叫シーンでは笑い声と口笛が沸き起こり、意味もなくあちこちから冗談めいた悲鳴が上がったりする。おかげで恐怖も半減して夜眠れなくなるようなことはなかったが・・・。ホラー映画の作りはヒッチコック映画に似ていて、見えない恐怖をインド映画にしてはうまく表現していたと思うのだが、世界的なレベルに持って行くとちょっとチャチな部分も目立った。一応インド映画なのでミュージカルシーンが途中で挿入されていたが、正統ホラー映画にミュージカルシーンは全く似合わない。いっそのことミュージカルは全部カットしてしまった方がよかった。

 ビパーシャー・バスはやはり素晴らしかった。「恐怖におびえる美人」というおいしい役柄をうまく演じきっていた。演技力もあるし、ユニークな美人顔をしているので、これからもどんどん伸びていくと思う。ますますビパーシャー・バスのファンになった。しかし敢えて欠点を言うとすれば、ビパーシャー・バスはインドの伝統衣装が全然似合わないことだ。はっきり言って洋服の方が断然似合う。こういうインド人女優が最近増えてきた。