Kabhi Khushi Kabhie Gham

5.0
Kabhi Khushi Kabhie Gham
「Kabhi Khushi Kabhie Gham」

 今日は2001年12月14日公開の超話題作「Kabhi Khushi Kabhie Gham」のチケットを予約していた。コンノート・プレイスのプラザ・シネマで朝10:45からだったので、遅刻しないように早めに家を出た。そのおかげでコンノート・プレイスのマクドナルドで朝食をとる時間ぐらいはとれた。

 今年最後の大作にして、ビッグ・スターがこぞって出演しているだけあって、やはり客の入りは上々だった。こんなに混雑した映画館で映画を観るのは「Lagaan」(2001年)以来だった。僕は一番高級なバルコニー席で鑑賞したのだが、下の席で見たらすごい熱気だっただろうと思う。

 「Kabhi Khushi Kabhie Gham」とは「喜びもあれば悲しみもある」という意味である。監督は「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)のカラン・ジョーハル。出演は、インド最大のビッグスター、アミターブ・バッチャン、その奥さんのジャヤー・バッチャン、これまたスーパースターのシャールク・カーンとカージョル、新世代のスーパースター、リティク・ローシャンとカリーナー・カプール、そして特別出演としてラーニー・ムカルジーと、ここまで豪華な顔ぶれの映画は今までなかったと断言できるぐらい豪華絢爛である。マルチスター・システムの極致だろう。観客の盛り上がりぶりも半端じゃない。彼らスターが登場するたびに歓声が沸き起こり、ミュージカル・シーンではみんなで合唱し、なにか感動的なことがあると拍手が上がる。これほど盛り上がった映画は初めてだった。やはりこれが映画の楽しみだろうし、映画館で映画を観る楽しみだろうし、映画が映画として本来の姿を残しているインドの素晴らしさだと実感した。メディアに芸術とか理屈とかを持ち込むと途端にかび臭い退屈なものになる。とにかく映画は楽しめればいいのだ。難しいことは考えずに、映画館にいる間、遊園地にいる気分で楽しみ、感動できればそれが一番なのだ。インド人は世界で最も映画を愛している国民だろうし、そのインド人に愛された映画ほど幸せなものはないと思った。

 大富豪ヤシュ(アミターブ・バッチャン)とその妻ナンディニー(ジャヤー・バッチャン)には、ラーフル(シャールク・カーン)とローハン(リティク・ローシャン、ただし前半では子役が出演)の二人の息子がいた。ラーフルはチャーンドニー・チョークに住むアンジャリ(カージョール)に恋をして結婚しようとするが、ヤシュは別の女の子(ラーニー・ムカルジー)を既にラーフルの結婚相手に決めていた。それでもラーフルは強引にアンジャリと結婚し、それに怒った父ヤシュに勘当されてしまう。ラーフルの弟ローハンはそのときちょうど全寮制の学校に通っており、なぜ兄が勘当されたのか、どこに行ってしまったのかが分からなかった。ここまでが前半で、後半はローハンをリティク・ローシャンが演じる。ローハンは親戚から兄の身に起こった一部始終を知り、兄を連れ戻すことを決心する。兄ラーフルは現在ロンドンに住んでいるという情報を得たので、ローハンはロンドンの大学に留学し、兄を探すことにする。その大学で出会ったのがプージャー(カリーナー・カプール)。アンジャリの妹で、ローハンとプージャーは面識があった。プージャーはラーフル、アンジャリと一緒に住んでおり、ローハンを彼らに紹介する。しかしこのときはローハンは自分の正体は隠していた。ラーフルはローハンのことを弟だとは気付かずに家にしばらくの間滞在させることにした。ローハンは両親をロンドンに呼び、ラーフル、アンジャリと引き合わせるが、ヤシュはラーフルのことを依然として怒っており受け入れようとしなかった。しかし心の中ではヤシュはラーフルを非常に愛しており、ナンディニーらに説得されて最後はラーフルを受け入れ、家族の絆が戻る、というストーリーである。

 監督のカラン・ジョーハルは、本当にインド人をどうやったら感動させるのか、どう見せたら喜ぶのかを知り尽くしているとしか言いようがない程うまい。インド映画にありがちなアクションシーンが全くないのに、インド人を楽しませることができる監督である。しかも「Kuch Kuch Hota Hai」を初め、「Hum Aapke Hain Koun..!」(1994年)や「Kaho Naa… Pyaar Hai」(2000年)など往年のヒット作のパロディーと見られるセリフやシーンが隠し味程度にまぶしてあったのが心憎かった。その他にも僕の知らない映画のパロディーがあったと予想される。ただ、後半のロンドン・ロケはまだ許せるのだが、途中いきなりエジプトのプラミッドをバックにシャールク・カーンとカージョルが踊るシーンはちょっと唐突過ぎたと思う。

 音楽はジャティン・ラリト。「Kuch Kuch Hota Hai」や「Phir Bhi Dil Hai Hindustani」(2000年)などでも音楽を担当し、長く歌い継がれるような名曲を書いている。この「Kabhi Khushi Kabhie Gham」の音楽も相当素晴らしい。今、街中で最も流れている音楽である。

 総合して評価すれば、間違いなくこの映画は今年最高の出来である。そして今年最高の興行成績を収めると思われる。ライバルは「Lagaan」。今年の映画賞は「Lagaan」と「Kabhi Khushi Kabhie Gham」の一騎打ちとなるだろう。音楽では「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)もいい線にいくだろう。今年の結婚式は「Gadar」の歌ばかり、というぐらい大ヒットしているからだ。

 「Kabhi Khushi Kabhie Gham」を観ている間、何度も何度も泣いてしまったので、映画館を出るときはちょっと恥ずかしかった。他のインド人もやっぱり泣いてる人が多かった。こんなに泣いた映画は、洋画邦画全てを含めて今までなかったと思う。本当は映画が終わった後、スタッフロールを見ながら涙を乾かして気持ちを落ち着けて映画館の外に出たかったのだが、スタッフロールになった途端映画が打ち切られてしまったので、有無を言わせず外に出るしかなくなってしまった。もうちょっと余裕が欲しかったのだが・・・。